ハヴィガーストが示した老年期の発達課題は、次の6つです。

  1. 体力や健康の衰えに適応する
  2. 退職と収入の減少に適応する
  3. 配偶者の死に適応する
  4. 同年代の人々と親密な関係を築く
  5. 社会的・市民的な役割を果たす
  6. 身体的に満足できる生活環境を整える

キャリアコンサルタント試験では、特に健康の衰え、退職と収入減、配偶者との死別がハヴィガーストの老年期の課題として問われたときに見分けられるようにしておきましょう。

ハヴィガーストの老年期とは

ロバート・J・ハヴィガーストは、人生を6つの発達段階に分け、それぞれの時期に発達課題があると考えました。その最後に位置づけられるのが、老年期(later maturity)です。

日本語の解説では、老年期を「60歳以降」とすることが一般的です。ただし、年齢区分は理論が作られた時代の目安であり、60歳になった瞬間に全員が同じ課題へ移るという意味ではありません。

発達課題理論の全体像や他の発達理論との違いは、ハヴィガーストの発達課題とは?6つの発達段階と理論で解説しています。

老年期の6つの発達課題

ここからは、原典に示された6つの課題を、現在の生活に置き換えながら説明します。具体例は理解のための補足であり、原典の逐語訳ではありません。

1.体力や健康の衰えに適応する

加齢に伴う体力や健康状態の変化を受け止め、その状態に合った生活へ調整していく課題です。

たとえば、以前と同じ活動量を無理に維持するのではなく、治療や健康管理を続けながら、できる活動を選び直すことが考えられます。「衰えを我慢する」という意味ではなく、変化した身体と折り合いをつけて暮らすことが中心です。

2.退職と収入の減少に適応する

退職による生活時間、社会的役割、人間関係、収入の変化に適応する課題です。

退職は、仕事を辞めるという一つの出来事だけではありません。働くことで得ていた役割や生活のリズムが変わることもあります。再就職、地域活動、趣味、家族との時間などを含め、退職後の生活を組み立て直すことが課題になります。

現代では、60歳以降も働き続ける人や、段階的に仕事を減らす人もいます。そのため、支援では一律に「引退」と捉えず、本人の働き方と希望を確認する必要があります。

3.配偶者の死に適応する

配偶者との死別という大きな喪失に向き合い、死別後の生活を再構成していく課題です。

悲しみの感じ方や期間は人によって異なります。早く立ち直ることを求めたり、「乗り越えるべき課題」として機械的に扱ったりするものではありません。家族や友人、地域、必要に応じた専門的支援とのつながりも大切です。

4.同年代の人々と親密な関係を築く

同年代の人々とのつながりや、安心して関われる人間関係を築く課題です。

友人、地域の集まり、趣味の仲間などとの関係は、退職などによって職場の人間関係が変化した後の社会参加にもつながります。ただし、交流の量に正解があるわけではありません。本人が望む距離感や関わり方を尊重することが前提です。

5.社会的・市民的な役割を果たす

地域や社会の一員として、自分に合った役割を持つ課題です。

地域活動やボランティアだけでなく、家族を支えること、経験や知識を伝えることなども例として考えられます。一方で、社会貢献を義務として押しつけない配慮が必要です。健康状態や生活状況に応じて、本人が納得できる関わり方を選びます。

6.身体的に満足できる生活環境を整える

身体や暮らしの変化に合わせて、安全で生活しやすい環境を整える課題です。

住居の段差や移動手段を見直すこと、医療・福祉サービスを利用しやすい場所を選ぶこと、家族との距離を考えることなどが具体例です。住み慣れた家で暮らすか、住み替えるかを含め、本人の希望と必要な支援を調整します。

6つの課題を一覧で整理

原典に沿った課題現代の生活で考えられる例
体力や健康の衰えへの適応健康管理、活動量や生活方法の調整
退職と収入減への適応家計や生活時間の見直し、働き方・役割の再設計
配偶者の死への適応悲嘆への配慮、死別後の生活と支援関係の再構成
同年代との親密な関係友人、地域、趣味を通じた本人らしいつながり
社会的・市民的役割の遂行地域参加、家族への関わり、知識や経験の共有
満足できる生活環境の確立住環境、移動、医療・福祉サービスの調整

「死への準備」は6つの課題に含まれるのか

ハヴィガーストの老年期の6課題として挙げられるのは、前述の6つです。「自分自身の死への準備」は、この6項目には含まれていません。

配偶者の死への適応と、自分自身の死への準備は別の内容です。また、人生の統合を重視するエリクソンの老年期の課題とも混同しないようにしましょう。

キャリアコンサルタント試験での覚え方

試験対策では、6項目を次の3群に分けると整理しやすくなります。

  • 変化への適応:健康、退職と収入減、配偶者との死別
  • 人や社会との関係:同年代との関係、社会的・市民的役割
  • 暮らしの環境:身体に合った生活環境

特に、次の組み合わせを押さえます。

  • ハヴィガースト:発達課題、6つの発達段階、老年期の具体的課題
  • エリクソン:心理社会的発達、8段階、老年期の「自我の統合 対 絶望」
  • スーパー:生涯にわたる職業的発達、自己概念、ライフ・キャリア・レインボー

公開済みの過去問解説でも、「配偶者の死への適応」がハヴィガーストの老年期の発達課題として扱われています。問題を解くときは、理論家名だけでなく、選択肢に含まれる具体的な課題から判断しましょう。

支援で使うときの注意点

ハヴィガーストの理論は、相談者が経験している変化を整理する手がかりになります。ただし、6つの課題を本人にそのまま当てはめるためのチェックリストではありません。

結婚の有無、働き方、家族構成、健康状態、経済状況、文化的背景は人によって異なります。「この年齢ならこうあるべき」と決めつけず、本人が何を大切にし、どの変化に困っているのかを確認する視点が必要です。

まとめ

ハヴィガーストの老年期の発達課題は、健康、退職と収入、死別、人間関係、社会的役割、生活環境という6つの側面から、加齢に伴う変化への適応を捉えています。

試験対策では、まず「健康・退職・死別」の3つを確実に覚え、残る「同年代・社会的役割・生活環境」を加えて6項目として整理しましょう。

参考資料

Robert J. Havighurst, Developmental Tasks and Education(Open Library)

Robert J. Havighurst, “Research on the Developmental-Task Concept”(The School Review, DOI)