この記事について

令和8年7月実施の第32回学科試験の問46〜50を、初学者向けに解説します。

相談の終結、企業内支援、活動領域、倫理を扱う範囲です。問題文は公式の過去問題で確認してください。解説には誤りが含まれる可能性があります。

問46

正解:2

テーマ:相談の終了

根拠:厚生労働省「キャリア教育実践講座テキスト」

まず押さえること

相談の終了は、単に面談を打ち切ることではありません。設定した目標の達成度や相談者の変化を相互に確認し、今後は相談者が自分で取り組めるよう、相談関係に一区切りをつける過程です。

厚生労働省のテキストでは、終了時に成果と変化を確認し、必要が生じたときは再び相談できることを伝え、終了後はケース記録を整理・保存すると説明されています。終了は相談者の自立を支えるものですが、将来の再相談まで拒むものではありません。

選択肢1:適切

相談開始時に共有した目標は、終了を判断する基準の1つです。「転職する」といった結果だけでなく、選択肢を整理できた、自分で意思決定できるようになった、具体的な行動を始められたなど、相談者の認識や行動の変化も確認します。

なお、目標を完全に達成しなければ終了できないという意味ではありません。相談者と話し合い、現時点で一区切りをつけられるか、別の支援が必要かを判断します。

選択肢2:不適切

相談終了後も、環境の変化や新たな課題によって、同じテーマの相談が必要になることがあります。そのため、「今後は同じテーマで相談できない」と可能性を閉ざすのは不適切です。

終了時には、必要が生じた場合は再相談できることや、相談内容によっては他の専門機関も利用できることを伝えます。「終了すること」と「今後一切支援しないこと」を混同しないようにしましょう。

選択肢3:適切

相談関係を必要以上に長く続けると、相談者が判断や行動をキャリアコンサルタントに委ね、依存するおそれがあります。適切な時期に終了し、相談者が身につけた考え方や行動を自分で活用できるようにすることは、自立を支えるうえで重要です。

ただし、支援者が一方的に終了を決めるのではなく、目標の達成度、残っている課題、終了に対する相談者の不安などを話し合います。

選択肢4:適切

終了後は、相談者の属性、相談目標、面談の経過、成果、キャリアコンサルタントの所見などをケース記録として整理します。記録は継続的な支援や振り返りに役立つ一方、個人情報を含むため、組織の規程等に従い、漏えい・紛失が起こらない方法で一定期間保存します。

問47

正解:3

テーマ:企業内の課題に対応した支援策

根拠:厚生労働省「企業・学校等においてキャリア形成支援に取り組みたい方へ」厚生労働省委託事業「セルフ・キャリアドックとは」

まず押さえること

企業内のキャリア形成支援では、企業の課題と従業員のキャリア上の課題を結びつけて考えます。セルフ・キャリアドックは、キャリアコンサルティング面談とキャリア研修などを組み合わせ、体系的・定期的に従業員の主体的なキャリア形成を支援する仕組みです。

対象者によって課題は異なります。新入社員には職場定着、育児・介護休業者には仕事と生活の両立、中堅社員にはキャリアの再構成、シニア社員には経験の棚卸しと今後の役割などが考えられます。全員に「昇進・昇給」という同じ方向を示すのではなく、本人の価値観や置かれた状況に応じて支援します。

選択肢1:適切

新卒採用者は、仕事の意味や将来像を十分に描けず、入社前の期待と現実の違いに戸惑うことがあります。研修で仕事への向き合い方や主体的に学ぶ姿勢を育て、社内で考えられるキャリアパスを示すことは、将来の見通しを持つ助けになります。

ただし、会社が一方的にキャリアを決めるのではありません。複数の可能性を示し、本人がキャリアプランを考えられるように支援することが重要です。

選択肢2:適切

育児・介護休業者への支援を、復帰日、勤務時間、引継ぎなど直近の手続だけで終えると、復帰後の働き方や将来への不安が残ることがあります。家庭での役割も含むライフキャリアの視点から、復帰後にどのように働き、どのような能力や経験を積みたいかを中長期的に検討することが適切です。

選択肢3:不適切

40代半ばを「職業生活の前半戦を終えた時期」と捉えるなら、これまでの経験や能力を棚卸しし、職業生活の後半をどう構成するかを考える支援が必要です。管理職になることだけでなく、専門性を深める、後輩を育成する、新たな職務へ挑戦する、仕事と生活のバランスを見直すなど、方向性は複数あります。

昇進・昇格・昇給は選択肢の一部ですが、それだけをキャリアアップと捉え、支援者が方策を示すのは一面的です。本人の価値観、強み、役割、生活上の事情、組織から期待されることを対話によって整理する必要があります。

選択肢4:適切

シニア社員には、これまでの経験・能力を棚卸しし、今後の役割や働き方を考える研修が役立ちます。さらに個別面談を組み合わせれば、研修で得た気づきを本人固有の目標や行動計画へ落とし込めます。

研修だけ、面談だけで完結させず、両者を連動させて生涯キャリアの設計と実践を支えるため、適切な施策です。

問48

正解:3

出典:厚生労働省「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会報告書」

根拠:厚生労働省「今後のキャリアコンサルティングに必要な能力」

まず押さえること

報告書では、すべての領域に共通する能力に加え、活動領域を「企業」「需給調整」「教育」「地域・福祉」に分け、それぞれで追加・強化が必要な能力を整理しています。

この問題では、能力の内容だけでなく、どの領域に位置づけられているかがポイントです。企業や従業員への組織的な働きかけは企業領域、求職者と求人のマッチングや就職後の定着は需給調整領域、学生・生徒のキャリア教育や就職支援は教育領域、家族・福祉機関等との連携は地域・福祉領域として整理します。

選択肢1:適切

セルフ・キャリアドックは、従業員の主体的なキャリア形成を企業内で体系的・定期的に支える仕組みです。報告書の別添には、導入のメリットについて企業の理解を促し、導入・活用へ働きかける能力が、企業領域で必要な能力として明記されています。

選択肢2:適切

需給調整領域は、ハローワークや職業紹介事業者などで、求職者と求人を結びつける領域です。支援は就職が決まった時点で必ず終わるわけではありません。報告書には、就職した相談者に対し、必要に応じて職場定着へ向けた支援を行う能力が示されています。

たとえば、就職後に仕事内容とのミスマッチや職場適応の悩みが生じた場合に、状況を整理し、必要な情報提供や関係機関との連携を行うことが考えられます。

選択肢3:不適切

「事業主の講ずる措置」について理解を促す対象は、報告書では学生ではなく企業とされ、企業領域に位置づけられています。したがって、この能力を教育領域のものとしている点が誤りです。

教育領域では、学生・生徒の主体的な選択と能力開発を支えること、キャリア教育講座を行うこと、就職活動やインターンシップの相談に応じること、企業や学内関係者と連携してプログラムを作ることなどが示されています。内容と領域の組合せを入れ替えた選択肢です。

選択肢4:適切

地域・福祉領域では、就労だけでなく、生活、家族、障害、経済状況など複数の課題が関係することがあります。そのため、本人から話を聴くだけでなく、本人の了解や個人情報への配慮を前提として、家族や福祉・医療・就労支援機関等と連携し、支援に必要な情報を集める能力が示されています。

問49

正解:3

出典:厚生労働省「働く環境の変化に対応できるキャリアコンサルタントに関する報告書」

根拠:厚生労働省「働く環境の変化に対応できるキャリアコンサルタントに関する報告書」

まず押さえること

令和3年の報告書は、職業人生の長期化、働き方の多様化、デジタル化などの変化を踏まえ、キャリアコンサルティングをさらに普及させるための方向性を示したものです。

企業では単発の研修や面談を長期的なキャリア形成へつなぐこと、組織内の関係者が連携することが重視されています。また、個人への普及では、利用経験が比較的少ない中高年齢層への働きかけが課題です。ジョブ・カードは、特定の年齢や就業経験の少ない人だけに限定されるものではなく、生涯を通じたキャリア・プランニングや職業能力証明に活用します。

選択肢1:適切

企業内では、新入社員研修、階層別研修、能力開発、キャリア面談などが別々に行われ、細切れの取組になることがあります。キャリアコンサルタントには、それぞれの取組を、従業員の連続的・長期的なキャリア形成という視点でつなぐ役割が期待されています。

たとえば、研修で行った経験の棚卸しを個別面談の目標設定につなげ、その後の能力開発や配置後の振り返りまで継続して支援することが考えられます。

選択肢2:適切

労働者のキャリア形成を組織全体で支えるには、キャリアコンサルタントだけで完結させず、人事部門、管理職、本人などがそれぞれの役割を理解する必要があります。守秘義務を守りながら、制度の目的や支援方針について組織内のコミュニケーションを高めることは有効です。

なお、連携が重要だからといって、個別面談の内容を本人の同意なく上司や人事へ伝えてよいわけではありません。

選択肢3:不適切

報告書では、ジョブ・カードについて、当初は就業経験が少ない人が労働市場へ参加するための支援に力点があった一方、その後は企業の実務場面での活用促進に力点を移してきたと説明しています。この選択肢は、その順序を逆にしています。

現在のジョブ・カードは、キャリア・プランニング、職業能力の整理・証明、教育訓練、企業内の人材育成などに活用されます。「就業経験の少ない人だけのもの」と覚えないようにしましょう。

選択肢4:適切

報告書では、若年層のほうが高年齢層よりキャリアコンサルティングの経験が多いというデータを踏まえ、中高年齢層を意識した支援の必要性を示しています。職業人生が長期化する中では、中高年期にも経験の棚卸し、役割の見直し、学び直し、セカンドキャリアの検討などが必要になるためです。

問50

正解:1

出典:キャリアコンサルタント倫理綱領

根拠:キャリアコンサルティング協議会「キャリアコンサルタント倫理綱領」

まず押さえること

守秘義務とは、業務や関連する活動で知り得た秘密を、正当な理由なく第三者へ漏らさない義務です。相談者が安心して話すための土台ですが、どのような場合にも例外がないわけではありません。倫理綱領第5条は、相談者の身体・生命の危険が察知される場合や、法律に定めがある場合等を例外としています。

また、守秘義務は「外部に話さなければよい」だけではありません。スーパービジョンで事例を扱うとき、組織の人材育成へ情報を活用するとき、組織から依頼された面談を行うときにも、承諾、プライバシーへの配慮、報告範囲の合意などが必要です。

選択肢1:適切

倫理綱領第5条の内容に沿っています。原則として秘密を守りますが、自傷・他害のおそれなど相談者や周囲の生命・身体に重大な危険がある場合や、法律上の定めがある場合等には、守秘義務の例外となり得ます。

ただし、例外だから自由に共有してよいという意味ではありません。危険の程度を慎重に判断し、必要に応じて上司、医療・福祉の専門職、緊急機関等と連携し、共有する情報と相手を必要な範囲に限定します。

選択肢2:不適切

スーパービジョンは支援の質を高めるための自己研鑽ですが、その目的が正当であっても相談者の秘密を自由に扱えるわけではありません。倫理綱領第5条第3項は、スーパービジョンで相談内容を扱う際に、相談者の承諾を得ること、個人情報とプライバシーを保護すること、相談者や関係者が特定されて不利益を受けないよう適切な措置をとることを求めています。

選択肢3:不適切

倫理綱領第5条第2項は、面談で得た情報を組織の能力開発、人材育成、キャリア開発等の支援に活用する場合にも、プライバシーへ配慮し、関係部門と連携するなど責任ある対応を求めています。

人材育成に役立つという理由だけで、個人の相談内容をそのまま人事部門や上司へ提供することはできません。個人が特定されない形で傾向を集約する、本人の同意を得るなどの配慮が必要です。

選択肢4:不適切

倫理綱領第9条第2項は、組織から依頼を受ける場合、業務の目的、組織への報告範囲、相談内容に関する守秘義務の取扱いなどを、契約書に明記する等の方法で組織側と合意するよう求めています。

さらに、面談開始時には相談者に対しても、何が秘密として守られ、どの情報がどの範囲で組織へ報告されるのかを説明し、同意を得る必要があります。相談者との関係だけでなく、依頼主である組織との事前調整も欠かせません。

参考資料

国家試験 第32回 解説リンク集

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