キャリアコンサルタント試験で頻出の「第14次労働災害防止計画」(厚生労働省、令和5年3月策定)。

3回シリーズで詳しく解説します。

https://shasha-blog.com/2026-10-26

1回目の今回は、計画の基本情報と、施策の前提となっている「現状分析」を整理します。

労働災害防止計画とは何か

労働災害防止計画は、1958年に第1次が策定されて以来、これまで13次にわたり策定されてきた、国の労働災害防止のための中期計画です。

国・事業者・労働者等の関係者が協働して安全衛生活動を推進するための、実施事項や目標を示すものです。

第14次労働災害防止計画は、2023年度〜2027年度の5か年を計画期間としています。

計画が目指す社会:「コスト」から「資産」への発想転換

計画の冒頭で示される重要なキーワードが、「費用としての人件費から、資産としての人的投資への変革」です。

労働者の安全衛生対策は、従来「コスト」として捉えられがちでしたが、この計画では、安全衛生対策への投資が、事業者の経営戦略や人材確保の観点からもプラスになるという発想への転換を打ち出しています。

安全衛生対策に積極的に取り組む事業者が社会的に評価される環境の醸成を図ることも、計画の重要な目標の一つです。

現状分析①:死亡災害は減少傾向

死亡者数は、平成27年に1,000人を切った後も、減少傾向にあります。令和3年の死亡者数は867人で、業種別では建設業(288人)が最も多く、次いで製造業(137人)となっています。

事故の型別では、建設業は「墜落・転落」(110人)、製造業は「はさまれ・巻き込まれ」(54人)が、それぞれ最も多くなっています。

業種ごとの業務内容に起因する特有の災害が多くの割合を占めているという分析です。

現状分析②:死傷災害(休業4日以上)は増加傾向 ― これが計画策定の最大の問題意識

一方、死傷災害(休業4日以上)は、第13次計画期間中、増加傾向にあります。

これは、死亡災害が減少傾向にあるのとは対照的な動きであり、第14次計画が策定された最大の問題意識の一つです。

事故の型別:「転倒」+「動作の反動、無理な動作」で約4割

死傷災害を事故の型別に見ると、

  • 「転倒」(23%)
  • 「動作の反動、無理な動作」(14%)


を合わせて、全体の約4割(37%) を占めています。

業種別では第三次産業が5割以上を占め、その内訳でも「転倒」(28%)や「動作の反動・無理な動作」(16%)が4割以上という、労働者の作業行動そのものに起因する災害が主流になっています。

高年齢の女性で特に高い転倒災害の発生率

転倒災害の発生率は、男女ともに中高年齢層で高くなっており、

特に女性は60歳代以上で20歳代の約15倍

という顕著な差があります。

これが、重点事項の一つ「労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策」の背景です。

死傷災害増加の4つの要因

計画では、死傷災害の増加要因として、次の4点を挙げています。

  1. 労働災害発生率(死傷年千人率)が高い60歳以上の高年齢労働者が増加していること(全年齢に占める60歳以上の割合は約2割まで増加。60歳以上の死傷者数の割合は25%超)
  2. 第三次産業への就労者増加に伴い、対策のノウハウが蓄積されていない作業行動に起因する災害が増加していること
  3. 第三次産業や中小事業場で安全衛生の取組が遅れていること(経営環境の悪化等が背景)
  4. コロナ禍による生活様式の変化(デリバリー・宅配需要の増加等)

特に②に関連して、経験年数1年未満の労働者の死傷年千人率は、1年以上の労働者より高く(50〜59歳では約3倍の差)、労働者の入れ替わりが頻繁な業種での対策強化が重要とされています。

現状分析③:外国人労働者の死傷者数も増加

外国人労働者数の増加に伴い、外国人労働者の死傷者数も増加傾向にあります。

特に陸上貨物運送事業では、荷役作業中の「墜落・転落」が約3割を占め、最多となっており、コロナ禍の宅配需要増加も影響していると分析されています。

現状分析④:労働者の健康確保を巡る課題

健康確保の分野では、以下のような課題が挙げられています。

  • メンタルヘルス対策
    取組事業場の割合は、労働者数50人以上で94.4%
    である一方、
    50人未満の小規模事業場では取組が低調(30〜49人:70.7%、10〜29人:49.6%)。
    取り組まない理由は「該当労働者がいない」(44.0%)、「取り組み方が分からない」(33.8%)、「専門スタッフがいない」(26.3%)
  • 過重労働防止
    週60時間以上就労の雇用者割合は緩やかに減少(令和3年:8.8%)しているが、脳・心臓疾患の労災認定は依然発生
  • 産業保健活動
    産業医の選任義務がない50人未満の事業場で活動が低調な傾向
  • 化学物質等
    化学物質の性状に関連する労働災害は年間約500件で減少がみられない。個別規制の対象外の物質による災害が全体の8割を占める

この分析から見えてくる、計画全体を貫く構造

第1回のまとめとして、現状分析全体を俯瞰すると、次のような構造が見えてきます。

  • 死亡災害は減少しているが、死傷災害(特に軽度〜中程度)は増加という「ねじれ」
  • その背景には、高年齢労働者の増加、第三次産業化、中小事業場での対策の遅れという、日本の労働市場の構造変化がある
  • 「作業行動に起因する災害」(転倒、動作の反動等)への対策ノウハウが、これまでの製造業中心の安全対策では蓄積されていないという新しい課題

この現状分析が、次回取り上げる具体的なアウトプット指標・アウトカム指標の設定根拠になっています。次回は、試験で特に頻出の「数値目標」を体系的に整理します。

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