令和7年版労働経済の分析

前回は雇用情勢を取り上げました。

今回は「令和7年版労働経済の分析」第I部第3章から、労働時間・賃金・春季労使交渉の重要ポイントを整理します。

2024年は「賃上げ」がキーワードとなった年であり、試験でも狙われやすい分野です。

全体像:労働時間は減少、賃金は伸びるが実質は微妙

2024年の特徴を一言でまとめると、「働く時間は減り、名目の賃金は伸びたが、物価上昇に食われて実質賃金は伸び悩んだ」という構図です。

  • 月間総実労働時間→減少(働き方改革の進展や、パートタイム労働者の増加が背景)
  • 年次有給休暇取得率→過去最高を更新
  • 現金給与総額(名目賃金)→4年連続で増加
  • 実質賃金→就業形態計では3年連続で減少したが、一般労働者・パートタイムはそれぞれ3年ぶりにマイナスを脱却

般労働者及びパートタイム労働者の実質賃金がマイナスから脱したにもかかわらず、就業形態計の実質賃金が減少した理由としては、パートタイム労働者比率が上昇したことによるものである。

① 月間総実労働時間:137.0時間、前年より減少

2024年の月間総実労働時間(事業所規模5人以上)は、前年差1.4時間減の137.0時間でした。

働き方改革の取組の進展や、労働時間の短いパートタイム労働者の増加が背景にあります。

週60時間以上就労している雇用者の割合は4.6%で、前年より0.4%ポイント低下しました。

2024年4月から、これまで時間外労働の上限規制の適用除外だった建設業」「運輸業,郵便業」にも上限規制が適用されたことが、この低下幅拡大の一因です。

「2024年問題」として話題になったテーマが、統計にも表れている形です。

② 年次有給休暇取得率:比較可能な1984年以降で過去最高

年次有給休暇の取得率は上昇を続け、1984年の比較可能な統計開始以降で過去最高を更新しました。

企業規模別にみると、企業規模「30〜99人」の取得率が6割を超えるなど、中小企業での上昇幅が大きい点も特徴です。

産業別では、「医療,福祉」「卸売業,小売業」で特に取得率が大きく上昇しました。

③ 賃金の動向:名目は増加、実質は「就業形態計」で3年連続減

現金給与総額(名目賃金)は前年比2.8%増と、4年連続で増加しました。

一方、物価変動を除いた実質賃金は前年比0.3%減と、就業形態計では3年連続の減少となりました。ただし、ここで重要なポイントがあります。

就業形態別にみると、一般労働者は前年比0.0%、パートタイム労働者は前年比0.7%増と、それぞれ3年ぶりにマイナスから脱却している

「就業形態計」だけがマイナスとなった理由は、パートタイム労働者比率(相対的に賃金水準が低い層)の上昇という構成要因にあります。

つまり、個々の働き手にとっては賃金の実質的な目減りに歯止めがかかりつつあるのに、統計全体としては構成比の変化でマイナスに見える、という「合成の誤謬」的な現象です。

この「内訳を見ると、実は改善している」という構造は、試験でも狙われやすいポイントです。

④ パートタイム労働者の時給は過去最高

パートタイム労働者の時給は前年比4.3%増の1,343円となり、過去10年間でみても増加傾向にあります。

最低賃金の引上げや同一労働同一賃金の取組の進展、労働力需給の引き締まりが背景です。

⑤ 春季労使交渉:賃上げ率5.10%、33年ぶりの高水準

2024年の春季労使交渉(春闘)の結果は、集計主体によって数字は異なりますが、いずれも高水準でした。

集計主体賃上げ率
厚生労働省5.33%
経団連(大手)5.58%
連合5.10%(33年ぶりの高水準)

厚生労働省の別調査「賃金引上げ等の実態に関する調査」では、一人当たり平均賃金の改定額11,961円・改定率4.1%と、いずれも現行の調査方法となった1999年以降で過去最高を記録しました。

賃上げ実施企業割合は91.2%と、ほぼ9割の企業が賃上げを実施・予定しています。

⑥ 労働組合員数は減少するも、パートタイム労働者の組合員数は過去最高

労働組合員数は991万人となり、3年連続で1,000万人を割り込み、推定組織率も16.1%と4年連続で低下しました。

一方で、パートタイム労働者の労働組合員数は146万人と過去最高を記録しています。

正社員中心の伝統的な労働組合のあり方から、パートタイム労働者を含めた組織化への広がりが進んでいることがうかがえます。

試験対策としてのポイント整理

テーマキーワード方向性
労働時間137.0時間減少(働き方改革・パート増加)
有給休暇取得率1984年以降過去最高更新
名目賃金(現金給与総額)2.8%増4年連続増加
実質賃金(就業形態計)0.3%減3年連続減少
実質賃金(一般・パート別)0.0%・0.7%増3年ぶりにプラス転換
春季労使交渉(連合)5.10%33年ぶりの高水準
労働組合員数991万人4年連続減少(パートは過去最高)

この分野は「名目 vs 実質」「就業形態計 vs 内訳(一般・パート別)」という切り口の違いで結論が変わる箇所が頻出です。

単に「賃金は増えた/減った」と丸暗記するのではなく、どの切り口で見た数字なのかを意識して読み解く習慣をつけておくと、選択肢の細かい表現の違いに惑わされにくくなります。