コクラン(Larry Cochran)のナラティブアプローチは、キャリアカウンセリングの分野に「物語(ナラティブ)」の手法を導入した先駆的理論です。

1990年代に提唱され、従来のキャリア理論とは異なり、個人の人生やキャリアを「物語」として捉え、その語りを通じて自己理解や未来の意思決定を支援することを重視しています。

理論の背景と特徴

  • 社会構成主義に基づき、「現実や意味は人と人との関係や言語的やり取りの中で構築される」と考えます。
  • キャリアや人生の意味づけが中心的な主題であり、語り(ナラティブ)を通じて自分自身の価値や人生の方向性を再発見・強化することを目指します。
  • クライエントの「物語」を多面的に掘り下げ、再構成することで、未来のシナリオを主体的に描く力を育てることが目的です。

具体的な技法・ワーク

コクランのナラティブアプローチでは、以下のようなインタビューやワークを通じてクライエントの語りを強化します。

  • ライフライン
    人生を時間軸に沿って曲線で描き、ポジティブ・ネガティブな時期や出来事を可視化する。
  • ライフチャプター
    自分の人生を「章立て」し、それぞれにタイトルをつけることで物語性を明確にする。
  • 成功体験のリスト化
    これまでの成功体験を振り返り、自己資源や強みを再認識する。
  • 家族の布置(レイアウト)
    家族の特徴や違いを確認し、個人の価値観や役割を考察する。
  • ロールモデル
    尊敬する人物と自分の共通点や違いを明確にし、理想像や価値観を探る。
  • 人生早期の記憶
    幼少期の印象的な記憶を振り返り、人生観やキャリア観の根源を探る。

4つのフェーズ

コクランの理論では、人生の物語を以下の段階で捉えます。

  • 不完全(Incompleteness):
    初期段階で、何か欠けている感覚や探求心が芽生え、物語の始まりを促す。
  • ポジショニング(Positioning)
    自分を世界に位置づけ、役割やアイデンティティを探る段階。
  • ポジティング(Positing):
    明確な目標や信念を打ち出し、行動を起こすコミットメントのフェーズ。
  • 完結(Completion):
    物語が統合され、達成感や解決に至る最終段階。

他理論との違い

  • サビカスのキャリア構築理論もナラティブアプローチですが、サビカスはスーパーやアドラーの影響を受けているのに対し、コクランはスーパーのキャリア概念を「広すぎる」と批判し、より個人の物語性に焦点を当てています。
  • ホワイトのナラティブ・セラピーは心理療法分野での応用ですが、コクランはキャリアカウンセリング分野の実践に特化しています。

まとめ

コクランのナラティブアプローチは、人生やキャリアを「物語」として捉え、語りを通じて自己理解と未来の創造を支援する理論です。

具体的な質問技法やワークを用い、クライエントが自分自身の意味や価値を見出し、主体的に未来を描けるようサポートします。