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労働者派遣法とキャリアコンサルティングの関係

労働者派遣法とキャリアコンサルティングの関係

労働者派遣法(正式名称:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)は、派遣労働者の保護と派遣事業の適正な運営を目的として1985年に制定され、以降、社会情勢や雇用環境の変化に応じて何度も改正されています。

特に2015年の改正以降、派遣労働者のキャリア形成支援が法的に重視されるようになりました。

キャリアコンサルティングの法的位置づけ

2015年の改正労働者派遣法により、派遣元事業主には「キャリア形成支援制度」の実施が義務付けられました。

この中で、希望するすべての派遣労働者に対してキャリアコンサルティングの機会を提供することが明確に規定されています。

  • 派遣元は、派遣労働者の職業生活設計やキャリア形成に関する相談窓口を設け、希望者がいつでもキャリアコンサルティングを受けられる体制を整える必要があります。
  • 相談窓口の担当者は、キャリアコンサルタント(国家資格者)である必要はありませんが、キャリアコンサルティングの知見を有する者であることが求められます。
  • 実施したキャリアコンサルティングの日時や内容は、派遣元管理台帳に記載することが義務付けられています。

キャリアコンサルティングの内容と意義

キャリアコンサルティングとは、労働者がその適性や職業経験等を踏まえて自らの職業生活設計を行い、職業選択や能力開発を効果的に進められるよう、専門家が相談・助言・指導を行うことです。

主な内容は以下の通りです。

  • 自己理解(強み・興味・価値観の明確化)
  • キャリアプランニング(将来の目標設定と具体的な行動計画)
  • 職場環境や必要スキルの理解と適応支援
  • メンタルヘルスや職場復帰支援など幅広いサポート

キャリアコンサルティングを受けることで、派遣労働者は自分のキャリアを主体的に考え、スキルアップや雇用の安定につなげることができます。

労働者派遣法におけるキャリアコンサルティング義務のポイント

  • 派遣元は「キャリア形成支援制度」を整備し、希望する派遣労働者全員がキャリアコンサルティングを受けられるようにする。
  • 相談窓口の設置は、事務所内のブースだけでなく、電話・メール・Webサイト等多様な方法が認められています。
  • キャリアコンサルティングの実施状況は管理台帳に記録し、必要に応じて報告義務があります。
  • 教育訓練とキャリアコンサルティングはセットで義務化されており、派遣労働者のキャリアアップを総合的に支援する仕組みとなっています。

派遣元・派遣先の実務上の留意点

  • 派遣元はキャリアコンサルティングの機会を周知し、希望者が利用しやすい環境を整備する必要があります。
  • 派遣先も、待遇や職場情報の提供など、派遣元のキャリア形成支援に協力する義務があります。

まとめ

労働者派遣法は、派遣労働者のキャリア形成を支援するため、希望する全ての派遣労働者にキャリアコンサルティングの機会を提供することを派遣元に義務付けています。

これにより、派遣労働者は自らのキャリアを主体的に設計し、長期的な職業生活の安定やスキルアップを図ることができる仕組みとなっています。