構成的グループエンカウンターとは―SGEの目的と4つの柱をわかりやすく解説
人との関わりの中で、「自分はこんなときに緊張するのか」「相手は同じ出来事を違うふうに受け止めていたのか」と気づくことがあります。
構成的グループエンカウンター(Structured Group Encounter:以下、SGE)は、課題をグループで体験し、そこで生まれた感情や気づきを分かち合うことを通して、ふれあいと自己発見を目指すグループ・アプローチです。
この記事では、SGEの目的と原理、プログラムを支える4つの柱、キャリア支援で考えたい活用方法を解説します。「構成する」とは何を決めることなのか、参加者の自由とどう両立するのかも整理していきます。
Contents
SGEの位置づけと二つの目的
SGEはカウンセリングの一形態であり、人間関係を育てる予防的カウンセリングとしても位置づけられます。問題が起きた後に対応するだけでなく、自分や他者への理解を深め、関係づくりを支える点に意味があります。
ふれあいは、率直な気持ちを表現し、受け止めること
SGEでいう「ふれあい(リレーション)」は、自分の気持ちに気づき、それを表現しながら、相手の気持ちも受け止める交流です。
たとえば、共同作業で相手に合わせていた人が、「本当は別の方法も試してみたかった」と自分の思いに気づくことがあります。それを話し、相手がどう感じていたかを聴くことが、率直な交流につながります。
ただし、本音を表現することと、相手を非難することは区別する必要があります。「あなたは自分勝手だ」と評価するよりも、「私は意見を言うタイミングがつかめず、戸惑いました」と自分の体験として伝えることが大切です。
自己発見は、自分では見えていなかった自分に気づくこと
自己発見には、他者には見えているのに、自分では気づいていない特徴、つまり「自己盲点」に気づくことが含まれます。
自分では「何もできなかった」と思っていた人が、ほかの参加者から「話を最後まで聴いてくれて、安心しました」と伝えられ、自分の関わりが相手を支えていたと気づく場合もあります。
ここで大切なのは、他者の見方を本人への決めつけにしないことです。その場で受け取った感想を手がかりに、本人が自分を理解していく過程を尊重します。
目的と位置づけは、JILPT「第12章 構成的グループエンカウンター」でも説明されています。
SGEを支える3つの原理
SGEの原理は、次の三つに整理できます。
| 原理 | 意味 |
|---|---|
| 本音に気づく | 自分の中に生じている率直な感情や思いに気づく |
| 体験を構成する | 課題や人数、時間などの枠組みを設け、体験と自己開示を促す |
| シェアリングを行う | 感情や気づきを分かち合い、物事の見方や受け取り方を広げ、見直す |
たとえば、同じ共同作業でも、ある人は「相談できて安心した」と感じ、別の人は「早く決めなければと思って焦った」と感じるかもしれません。シェアリングを通して、この違いに触れることで、自分の見方が唯一ではないと気づけます。
活動を終えるだけでなく、そこで何を感じ、何に気づいたのかを扱うことが、SGEを理解するうえで重要です。
「構成する」とは、安心して体験できる条件を整えること
SGEでは、目的に合わせてエクササイズ、グループの人数、時間などを設定します。
枠組みを設ける理由は、参加者の緊張や抵抗を和らげ、心理的な傷つきから守りながら、交流を促すためです。ただし、条件を整えれば必ず安心できるわけではありません。リーダーは実際の参加者の反応も見ていく必要があります。
國分康孝が提唱する「折衷的な」プログラム構成では、参加者の属性や心理状態に応じて、内容や展開を柔軟に考えます。折衷的とは、さまざまな方法を取り入れ、参加者にとって意味のある組み合わせを選ぶということです。
たとえば、初対面で緊張が強い段階では、深い自己開示を求める課題を急いで取り入れるのではなく、取り組みやすい活動から関係を育てていくことが考えられます。これは、柔軟な構成を理解するための補足例です。
参加者の自由を守る4つのルール
SGEでは、次のルールが重要です。
- グループ内で知った個人的な内容を外部に漏らさない
- 相手を非難したり、批判・評価したりする発言をしない
- 発言を強要せず、沈黙する自由を守る
- エクササイズを強要せず、参加を見送る自由を守る
自己開示は、自分について他者に伝えることです。SGEでは自己開示を促しますが、何をどこまで話すかは本人の意思を尊重します。
「せっかく参加したのだから、全員が必ず話すべきだ」と求めると、沈黙の自由が失われます。話さないことや活動を見送ることも選べる枠組みを、最初から共有しておくことが大切です。
プログラムを支える4つの柱
SGEのプログラムを理解する手がかりとして、リチュアル、ペンネーム、全体シェアリング、役割遂行という四つの柱があります。
リチュアル:共通の行動を通して所属感を育てる
リチュアルは「儀式」を意味し、参加者が共通して行う行動様式を指します。集団としてのまとまりや、その場への所属感を育てる働きがあります。
たとえば、開始時に短いあいさつを交わす共通の時間を設ける、といった形が考えられます。これは本記事の補足例です。形式だけを守らせるのではなく、参加者がその場に入りやすくなることに目を向けます。
ペンネーム:肩書から距離を置き、自分を表現しやすくする
ペンネームは、グループ内で使う名前を自分で選ぶ取り組みです。普段の肩書や実名に結びつく役割意識から距離を置き、率直な交流をしやすくするねらいがあります。
職場では、上司や部下、ベテランや新人という立場が話し方に影響することがあります。自分で選んだ呼び名は、そうした立場へのとらわれを緩める一つの工夫です。ただし、呼び名を変えるだけで実際の上下関係がなくなるわけではありません。
全体シェアリング:グループで体験を分かち合う
全体シェアリングは、参加者の感じ方、考え方、行動の仕方をグループ全体で共有する時間です。
複数のエクササイズを終えたところで振り返る短い形式もあれば、一つのセッションを使い、ワークショップ全体を振り返る形式もあります。
楽しかったことだけでなく、戸惑いや不快感なども共有の対象になります。ただし、何を話すかは本人が選び、ほかの参加者はそれを批判や評価の対象にしないことが大切です。
役割遂行:役割をきっかけに交流を育てる
役割遂行は、参加者が係などの役割を担い、その役割を通して人間関係をつくる取り組みです。
たとえば、資料を配る係を担当した人は、ほかの参加者に声をかけたり、必要なものを尋ねたりする接点を持てます。自由な雑談が苦手な人でも、役割が交流の入口になる場合があります。
SGEでは、役割を果たすための関係を入口として、感情を分かち合う関係につなげることを目指します。仕事のように係の成果を評価することが中心ではありません。
四つの柱については、JILPTのプログラム構成の説明を参照できます。
具体例で考える、体験から自己発見まで
ここでは、理解を助けるための架空の例を紹介します。実施手順を示すものではありません。
少人数のグループで、一人ずつ最近うれしかった出来事を話し、ほかの人が聴く時間を設けたとします。Aさんは話す前に緊張していましたが、相手が急かさず聴いてくれたことで、少し安心できました。
振り返りの時間に、Aさんは「うまく話すことばかり気にしていたけれど、待ってもらえると話しやすかった」と伝えました。Bさんは「自分は沈黙があると、すぐ質問して埋めようとしていた」と気づきました。
この例では、話す・聴くという体験があり、その後に感じたことを共有しています。Aさんは自分が安心できる条件に、Bさんは自分の関わり方の特徴に気づいています。
同じ活動でも、気づきは人によって異なります。リーダーが全員に同じ結論を求めず、それぞれの体験を尊重することが大切です。
キャリアコンサルティングでの活用と注意点
職場の人間関係に不安がある人にとって、自分の気持ちを表現し、相手の反応を受け止める体験は、対人関係を振り返る機会になり得ます。
JILPTの資料では、人間関係に困難を抱える人の復職支援グループなどへの応用可能性が述べられています。ただし、これは活用の可能性を示した説明であり、SGEを行えば復職できると保証するものではありません。
実務で考えたいのは、活動中の気づきが本人の働き方とどうつながるかです。「話を急がれると緊張する」「頼み事をするときに遠慮してしまう」などの気づきから、職場で必要な関わりや支援を一緒に考えられます。
一方、参加者の状態や希望、グループへの影響を踏まえて進める必要があります。強い感情が表れたときは、一律の対応を決めるのではなく、本人とグループの状態を確認し、活動の継続や変更、個別のフォローを検討します。
導入に当たっては、支援者自身が参加者としての体験とリーダーとしての学習を重ね、グループの動きを捉える力を身につけることも重要です。
非構成的エンカウンターとの違い
両者の違いは、体験の枠組みをどの程度あらかじめ設定するかにあります。
| 比較する点 | 構成的グループエンカウンター | 非構成的エンカウンター |
|---|---|---|
| 課題や進め方 | 目的に沿ってエクササイズなどを設定する | 特定の課題をあらかじめ細かく設定せず、その場の相互作用を重視する |
| 体験の入口 | 設定された課題や条件を手がかりに関わる | グループ内で生じるやり取りを手がかりに関わる |
構成の程度が異なっていても、参加者同士の関わりが重要であることは共通しています。SGEのリーダーも、決めた手順を進めるだけではなく、グループの状態を見ながら働きかけます。
キャリアコンサルタント試験で注意したい点
学習では、用語とその働きを対応させて整理しましょう。
- 目的:ふれあいと自己発見
- 3つの原理:本音に気づく、体験を構成する、シェアリングを行う
- 構成:課題、人数、時間などの条件を設定すること
- 4つの柱:リチュアル、ペンネーム、全体シェアリング、役割遂行
- 参加者の自由:沈黙する自由と、エクササイズを見送る自由
特に、3つの原理と4つの柱を混同しないようにします。原理はSGEがどのように気づきや交流を促すかを示し、柱はプログラム構成の重要な要素を示します。
また、自己開示を促すことを「全員に発言を強制すること」と捉えるのは適切ではありません。構成することを、参加者の感情や答えを統制することと取り違えないことも大切です。
出題例を使った学習には、「SGEの過去問分析」を併せてご覧ください。
理解を確認する一問一答
問1
SGEの二つの目的は何ですか。
答え
答え:参加者同士のふれあいと自己発見です。 自分の率直な気持ちを表現し、相手の気持ちを受け止める交流を通して、自他への理解を深めます。
問2
SGEで自己開示を促すためには、全員に発言を求める必要がありますか。
答え
答え:いいえ。沈黙する自由を守り、発言を強要しません。 エクササイズへの参加を見送る自由も尊重します。
問3
役割遂行をプログラムに取り入れるねらいは何ですか。
答え
答え:役割をきっかけに参加者同士の接点をつくり、交流を促すことです。 係の成果を評価することが中心ではありません。
まとめ
SGEは、枠組みのあるグループ体験とシェアリングを通して、ふれあいと自己発見を促すアプローチです。
リチュアルは所属感を育て、ペンネームは肩書へのとらわれを緩め、全体シェアリングは体験を分かち合い、役割遂行は交流の接点をつくります。いずれも、参加者の関係づくりや気づきを支える工夫として理解できます。
キャリア支援で活用する際も、参加者が何に気づいたかを尊重し、沈黙や参加を見送る自由を守ることが土台になります。




