検査・ツールは「何をみるか」で区別する

キャリア支援では、相談者の自己理解を助けるために、心理検査やカード式ツールを用いることがあります。名称だけを覚えるのではなく、何を捉えるものか、どのような方法を使うかを区別することが大切です。

第32回国家資格キャリアコンサルタント試験の問40には、東大式エゴグラム、VRTカード、内田クレペリン検査、YG性格検査が登場しました。4つの違いを先に整理すると、次のようになります。

検査・ツール主に捉えるもの方法の特徴
東大式エゴグラム(TEG)交流分析に基づく自我状態の傾向質問項目への回答
VRTカード職業興味と職務遂行への自信職務が書かれたカードの分類と対話
内田クレペリン検査作業の進め方に表れる能力面・性格行動面の特徴一桁の連続加算作業
YG性格検査12尺度からみた性格特性質問項目への回答

これらは自己理解の材料を提供するものであり、検査だけで職業や人間の価値を決定するものではありません。

東大式エゴグラム(TEG)

交流分析の自我状態を捉える

東大式エゴグラム(Tokyo University Egogram:TEG)は、交流分析の考え方に基づき、五つの自我状態の傾向を捉える質問紙法の心理検査です。東京大学医学部心療内科TEG研究会によって開発され、現在は「新版TEG 3」が刊行されています。

  • CP(Critical Parent):規律、責任、批判などに関わる傾向
  • NP(Nurturing Parent):養育、共感、受容などに関わる傾向
  • A(Adult):事実に基づく合理的な判断に関わる傾向
  • FC(Free Child):自由な感情表現や創造性に関わる傾向
  • AC(Adapted Child):周囲への適応や遠慮に関わる傾向

得点の高低だけで「よい・悪い」を決めるものではありません。複数の尺度の組合せや全体的なプロフィールから、現在の対人関係や行動の傾向を理解する手がかりにします。

混同しやすい点

TEGは、価値観、職業興味、関心を直接測る検査ではありません。また、「自己分析理論」という別の理論に基づくものでもありません。基礎にあるのは交流分析です。

VRTカード

職業興味と自信を対話で探索する

VRTカードは、職業レディネス・テスト(VRT)の職務記述をカード化したキャリアガイダンス・ツールです。各カードには、仕事で行う活動が短い文で示されています。

利用者は、カードを「やりたい」「どちらともいえない」「やりたくない」などに分類し、職業興味の方向を考えます。また、その仕事を「自信がある」「どちらともいえない」「自信がない」という観点で分類し、職務遂行への自信も検討できます。

カードを分類して終わりではない

VRTカードの特徴は、分類結果をきっかけに、利用者と支援者が対話できることです。「なぜこの仕事をやりたいと思ったのか」「興味はあるが自信がない理由は何か」などを話し合うことで、本人の価値観、経験、思い込みにも気づくことがあります。

ただし、VRTカードが価値観そのものを測定する検査という意味ではありません。中心となるのは、職業興味と職務遂行への自信の探索です。

内田クレペリン検査

一桁の連続加算を行う作業検査

内田クレペリン検査は、隣り合う一桁の数字を連続して加算する作業検査です。質問に「はい・いいえ」で答える性格検査とは、方法が大きく異なります。

一定時間ごとの作業量と、その時間的な変化である作業曲線、作業上の誤りなどを総合し、能力面と性格・行動面の特徴を捉えます。

計算能力だけを測る検査ではない

数字を足し続けるため、単純な計算テストに見えます。しかし、難しい計算問題の正答数から学力を測ることが目的ではありません。定型的な作業を継続したときの量や変化に着目する点が特徴です。

検査結果は、専門的な判定基準に基づいて扱います。作業曲線の一部分だけを見て、性格を単純に決めつけることはできません。

性格・行動面については、物事への取りかかり方に関する「発動性」、気分や行動の変化に関する「可変性」、行動の強さや勢いに関する「亢進性」の三つの側面から捉えます。

YG性格検査

12の尺度から性格特性を捉える

YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)は、質問への回答から12の性格特性を捉える質問紙法の検査です。

12尺度は、抑うつ性、回帰性傾向、劣等感、神経質、客観性の欠如、協調性の欠如、攻撃性、一般的活動性、のんきさ、思考的外向、支配性、社会的外向です。

これらをプロフィールや型として総合的に解釈します。

試験問題や資料によっては、情緒、人間関係、行動、知覚などの観点に整理して説明されることがあります。一方、現在の提供元には、行動特性、情緒の安定性、人間関係への取組姿勢、社会適応性、リーダー資質、物事の捉え方という六つの特性で説明しているものもあります。

一つの尺度で人物を決めない

たとえば、ある尺度の得点が高いことだけで、仕事への適性や問題の有無を断定することはできません。複数の尺度の関係、検査時の状態、生活歴や相談内容などを合わせて理解します。

4つの違いを試験で見分ける

選択肢を判断するときは、検査名と次のキーワードを対応させます。

  • 東大式エゴグラム:交流分析、五つの自我状態
  • VRTカード:職務記述カード、職業興味、職務遂行への自信、対話
  • 内田クレペリン検査:一桁の連続加算、作業量、作業曲線
  • YG性格検査:質問紙、12の性格尺度、プロフィール

「価値観・興味・関心を調べる東大式エゴグラム」のように、検査の理論的背景と測定対象を入れ替えた説明に注意します。

キャリア支援で使うときの注意

心理検査やキャリアガイダンス・ツールは、相談者を分類して答えを出すための道具ではありません。利用するときは、少なくとも次の点に配慮します。

  • 利用目的と結果の扱いを事前に説明する
  • 検査の対象者、実施方法、適用範囲を守る
  • 結果を本人へ分かりやすくフィードバックする
  • 検査結果だけで進路、採用、配置などを決めない
  • 面接で得た情報や本人の経験と合わせて考える
  • 実施・解釈に必要な資格や専門性を確認する

結果が本人の予想と異なる場合も、検査結果を絶対視して説得するのではなく、なぜ違いを感じるのかを対話します。その検討自体が自己理解を深める機会になります。

まとめ

東大式エゴグラムは交流分析の自我状態、VRTカードは職業興味と職務遂行への自信、内田クレペリン検査は連続加算作業に表れる特徴、YG性格検査は12尺度による性格特性を捉えます。

試験では、検査の名称、理論的背景、測定対象、実施方法を対応させて覚えると、説明の入れ替えに気づきやすくなります。実務では、いずれの結果も相談者を決めつける判定ではなく、対話と自己理解を支える一つの材料として扱います。

関連する過去問

第32回国家資格キャリアコンサルタント試験の問40では、これら4つの検査・ツールの特徴が扱われました。正答と各選択肢の解説は、第32回 問36〜40 解答解説をご覧ください。

参考資料

JILPT「VRTカード」

JILPT「職業適性検査・職業興味検査」

日本・精神技術研究所「内田クレペリン検査」

SANKA「YG性格検査」

日本心理学会『心理学研究』「日本における情緒不安定性の増加」