社会認知的キャリア理論(SCCT)

社会認知的キャリア理論(Social Cognitive Career Theory:SCCT)は、人がどのように仕事への興味をもち、進路を選び、行動を続けるのかを説明するキャリア理論です。

レント(Lent)、ブラウン(Brown)、ハケット(Hackett)が、バンデューラ(Bandura)の社会的認知理論を基盤として提唱しました。

試験対策では、まず次の流れを押さえましょう。

  1. 学習経験
  2. 自己効力感・結果期待
  3. 興味
  4. 目標
  5. 選択・行動
  6. 達成・結果 → 学習経験へループ

ただし、キャリア選択は本人の認知だけで決まるわけではありません。個人の特性や、周囲からの支援、経済状況、労働市場などの環境要因も影響します。

SCCTの基礎となる三者相互作用

バンデューラの社会的認知理論では、次の3つが互いに影響し合うと考えます。

  • 個人的要因:考え方、感情、能力、身体的特徴など
  • 行動:学習する、応募する、練習するなど
  • 環境:家族や周囲の支援、教育機会、経済状況、労働市場など

たとえば、資格の勉強を始めて問題が解けるようになると、「自分にもできそうだ」という感覚が高まります。その感覚によって勉強を続ければ、さらに経験が増え、周囲から助言や応援を得る機会も生まれます。

このように、人は環境から一方的に影響を受けるだけではなく、自分の行動によって環境にも働きかけます。一方で、経済的事情や利用できる制度などの環境が、行動を後押ししたり妨げたりすることもあります。

SCCTの3つの中心概念

SCCTでは、特に自己効力感・結果期待・目標の3つが重視されます。

自己効力感

自己効力感とは、「自分はその行動をうまくできる」と考える信念です。

たとえば、「必要な勉強を続けられそうだ」「人前で分かりやすく説明できそうだ」という、自分の遂行能力に対する見通しを指します。一般的な自信ではなく、特定の課題や行動に関する判断であることがポイントです。

結果期待

結果期待とは、「その行動をすると、どのような結果になるか」という見通しです。

たとえば、「資格を取得すれば希望する仕事に応募しやすくなる」「研修で発表すれば周囲から評価される」と考えることが該当します。

結果期待には、主に次のような結果が含まれます。

  1. 物理的成果:収入や物品など
  2. 社会的成果:承認、評価、地位など
  3. 自己評価的成果:達成感や満足感など

自己効力感が「自分にできるか」という判断であるのに対し、結果期待は「実行すると何が起こるか」という判断です。

目標

目標とは、将来の結果を得るために、特定の行動をしようと決めることです。

興味があっても、必ず行動に移るとは限りません。「この分野を学ぶ」「この職種に応募する」と目標を定めることで、行動の方向が明確になります。

学習経験が自己効力感と結果期待をつくる

SCCTでは、過去の学習経験が、自己効力感と結果期待の形成に影響すると考えます。

ここでいう学習経験は、学校での勉強だけではありません。仕事、日常生活、成功や失敗、他者の観察、周囲から受けた言葉など、経験を通して学んだことを広く含みます。

たとえば、仕事で説明を任されてうまくできた経験は、「自分は説明できる」という自己効力感を高める可能性があります。また、その結果として感謝された経験は、「説明すると相手の理解に役立つ」という結果期待につながります。

反対に、失敗が続いたり、周囲から否定的な評価を受けたりすると、自己効力感や結果期待が低くなることもあります。ただし、その後の新しい経験や支援によって、これらの認知は変化する可能性があります。

興味・目標・行動へつながるSCCTモデル

SCCTでは、一般に次のような流れでキャリア選択を捉えます。

  1. 学習経験が、自己効力感と結果期待に影響する
  2. 自己効力感と肯定的な結果期待が、興味の形成を促す
  3. 興味が、進路や職業に関する目標につながる
  4. 目標が、進学、応募、学習などの選択や行動を方向づける
  5. 行動の結果が新たな学習経験となり、その後の自己効力感や結果期待に影響する

この流れは一直線ではありません。周囲からの支援は選択や行動を後押しし、差別、経済的事情、情報不足などの障壁は、興味があっても選択肢を狭めることがあります。

そのためSCCTは、本人の「やる気」だけでキャリアを説明する理論ではありません。個人の認知と行動に加えて、機会や支援、障壁を含む環境との関係を捉える理論です。

キャリア支援での活用

SCCTの視点は、希望する進路に踏み出せない人への支援に活用できます。

たとえば、相談者が「自分にはその仕事はできない」「挑戦してもよい結果にならない」と考えている場合、次の点を分けて確認します。

  • 何を「できない」と考えているのか
  • 行動すると、どのような結果になると予想しているのか
  • その考えに影響した学習経験は何か
  • 行動を支える人、制度、機会はあるか
  • 行動を妨げている障壁は何か

そのうえで、達成できる小さな課題を設定する、手本となる人の行動を見る、必要な情報や練習機会を得るなど、新しい学習経験につなげます。

支援では、相談者の認知だけを変えようとするのではなく、利用できる制度を探す、環境を調整する、障壁を減らすといった働きかけも重要です。

キャリアコンサルタント試験での押さえ方

SCCTについては、次の組み合わせを押さえておきましょう。

  • 提唱者:レント、ブラウン、ハケット
  • 理論的基盤:バンデューラの社会的認知理論
  • 三者相互作用:個人的要因・行動・環境
  • 中心概念:自己効力感・結果期待・目標
  • 基本的な流れ:学習経験から興味、目標、選択・行動へ
  • 環境要因:支援は行動を促し、障壁は行動を制約する

特に、**自己効力感は「自分にできるか」、結果期待は「実行するとどうなるか」**と区別すると覚えやすくなります。

まとめ

社会認知的キャリア理論(SCCT)は、学習経験によって形成される自己効力感と結果期待が、興味、目標、選択・行動にどのようにつながるかを説明する理論です。

同時に、キャリア選択には個人の認知だけでなく、周囲からの支援や社会的・経済的な障壁も影響すると考えます。

試験対策では、「レント、ブラウン、ハケット」「バンデューラ」「自己効力感」「結果期待」「目標」「三者相互作用」を関連づけて理解しましょう。

参考資料

Toward a Unifying Social Cognitive Theory of Career and Academic Interest, Choice, and Performance(Lent, Brown & Hackett, 1994)されたら、「学習経験」「パンデューラ」「自己効力感」「結果期待」を連想できるといいですね。

職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(JILPT 資料シリーズNo.165)