問1を書くときは、

「本人がどのような状況で、何を望み、何に迷い、この面談で何を相談したかったのか」

をつなげて考えます。

「転職するか迷っている」「定年後の働き方を相談したい」だけでは、同じテーマの別の相談者にも当てはまります。その人が迷う背景や気持ちを添えると、今回の相談内容が伝わります。

この記事では、問1の読み取りから答案にまとめるまでを、短い架空事例で説明します。問2の記事と同じ事例を使い、本人の相談内容と、CCとしての見立ての違いも確認します。CLは相談者、CCはキャリアコンサルタントを表します。

問1では、本人が相談したかった内容をまとめる

第36回の公式問題の問1は、相談者がこの面談で相談したかったことを記述する設問で、配点は20点です。問2ではCCとして考える相談者の問題が問われています。この記事は、この4問形式の問1を対象にします。

問1では、本人が語った希望や困りごとを、その人の立場からまとめます。「主訴をまとめる」と考える場合も、冒頭の一言だけでなく、逐語全体で語られた内容を確かめます。

例えば、最初は「転職するか迷う」と話していても、その後に、今の職場への感謝、やってみたい仕事、家族との生活への心配が語られることがあります。そうした背景が、本人にとって何を決めにくくしているのかを捉えます。

ここから紹介する手順は、答案を整理するための学習上の方法です。公式の採点基準や、必ずこの順番で書くという指定ではありません。

公式講評から、状況と気持ちの両方を見る

2026年度前期の公式講評の問1に関する記述では、重要なポイントを具体的にまとめた答案が評価されています。一方、状況や来所の背景の整理が不十分な答案、悩みや迷いに目を向けず、表面的な出来事だけで捉えた答案への指摘もあります。

この講評を踏まえると、復習では「何が起きたか」に加えて、「本人はそれをどう受け止め、何に困っているか」まで確かめたいところです。職場や家族の状況と、本人の思いをつなげて読みます。

これは受検者全体の傾向についての講評であり、個別答案の得点を示すものではありません。四つの整理項目も、この講評を踏まえて学習用に組み立てたものです。

書く前に、四つの内容を拾う

逐語を読みながら、次の四つを短くメモします。

整理する内容確かめること
状況・きっかけ何が起き、なぜ今相談に来たのか
本人の希望何をしたい、何を大切にしたいと話しているか
迷い・気がかりと背景何を心配し、どのような事情で決めにくいのか
相談したいことこの面談で、何を考えたい・整理したいのか

四つに同じ字数を割り当てる必要はありません。一つの発言が複数に当てはまることもあります。年齢、家族構成、職歴などは、今回の相談を理解するために必要な内容を選びます。

大切なのは、「出来事があった」から「何について相談したい」までのつながりです。本人の気持ちを抜くと経歴の紹介になり、背景を抜くと漠然とした悩みの説明になります。

同じ架空事例で、問1を考えてみる

以下は、書き方を説明するための独自の架空事例です。公式問題の再現や、本試験と同じ分量の模擬問題ではありません。

相談者は、総務の仕事を7年間担当している社員です。研修担当への社内公募に応募するか迷っています。

CL1:新人に社内手続きを説明する仕事を任されています。「分かりやすかった」と言ってもらえると、うれしいです。これからは、人が学ぶことを支える仕事に関わりたいと思っています。

CL2:研修担当の社内公募が気になって、募集要項を読み、担当者に仕事内容を聞きました。最初は先輩と組んで研修の準備をするそうです。

CL3:でも、研修を一から企画したことはありません。経験のない私には、向いていないのかもしれません。

CL4:今の説明の仕事では、相手に伝わるように資料や話し方を工夫しています。でも、研修の企画とは別物ですよね。応募書類を書き始めたものの、経験がないのに応募してよいのかと考えて、その先に進めません。

まず自分で整理する

  • 状況・きっかけ:______
  • 本人の希望:______
  • 迷いと、その背景:______
  • 今回相談したいこと:______

メモには、根拠となる発言番号も添えてみてください。

整理メモの一例

内容読み取ったこと根拠
状況社内公募に関心を持ち、仕事内容を聞いて書類を書き始めたCL2・4
希望人が学ぶことを支える仕事に関わりたいCL1
迷い・背景企画未経験で向いていないのではと思い、今の説明経験も別物と感じているCL3・4
相談内容経験のない自分が応募してよいか迷い、応募をどう考えればよいか相談したいCL3・4

末尾の相談内容は、発言全体からまとめたものです。「相談したい」と明言された一文がなくても、本人が何に困り、何を考えたいかを、語られた範囲から整理できます。CCが必要だと思う支援を、本人の希望として付け加えないことが大切です。

大まかな答案と、具体化した答案を比べる

大まかな例(39字)

研修担当への社内公募に応募するか迷っており、今後のキャリアについて相談したい。

相談のテーマは分かります。ただ、なぜ応募したいのか、何が気がかりなのかが抜けています。

具体化した例(173字)

新人への説明で喜ばれた経験から、人の学びを支える仕事に関わりたいと考え、研修担当の社内公募に関心を持っている。仕事内容を聞いて応募書類を書き始めたが、研修を一から企画した経験がなく、自分には向いていないのではと不安を感じている。今の説明の経験も企画とは別物と感じて準備が進まず、未経験の自分が応募してよいのか、応募をどう考えればよいか相談したい。

具体化した例では、希望、既に行ったこと、不安の内容、準備が止まっている状態を、相談内容につないでいます。単に情報を増やすのではなく、本人が相談したい理由を説明する情報を選んでいます。

問1と問2は、何が違うのか

同じ発言が、問1と問2の両方の根拠になることはあります。違いは、何を説明するために使うかです。

設問この事例で書く内容の例
問1:本人の相談内容企画未経験で向いていないのではと不安になり、応募してよいか相談したい
問2:CCの見立て企画未経験であることを適性への不安に結び付け、既にある説明経験を仕事内容に照らして検討しにくく、応募準備が止まっていると考える

問1でも、本人が語った「なぜ迷うか」は書けます。気持ちや背景を全部問2へ回す必要はありません。問2では、そこからCCとしてどのように困り方の仕組みを捉えるかを説明します。

例えば問1に「自己理解不足なので経験を棚卸しする必要がある」と書くと、CCの評価と方策が入り込みます。本人がその必要性を訴えた事例でなければ、本人の相談内容として扱わないようにします。

問1で気を付けたい四つの書き方

1.最初や最後の発言だけでまとめる

冒頭は相談の入口、最後は相談したいことを捉える手がかりになります。ただし、途中で語られる希望や迷いの背景も重要です。両端だけを抜き出さず、逐語全体と照合します。

2.経歴や出来事を順番に並べる

プロフィールと発言を順に短くしても、相談内容が明確になるとは限りません。「その情報が、今回の希望や困りごとをどう説明するか」を確かめて選びます。

今回なら、総務を7年間担当した事実だけより、説明で喜ばれ、人の学びを支えたいと思っていることが、応募への関心を伝えます。

3.本人の気持ちを、客観的な事実へ変える

「向いていないかもしれないと感じる」を「研修担当には向いていない」としてはいけません。また、「周囲に迷惑をかけそうだ」という本人の心配と、実際に周囲から非難されたことも異なります。

「〜と感じている」「〜ではないかと心配している」と、誰の受け止めかが分かる書き方にします。

4.CCが勧めたい結論を、相談内容にする

「自信をつけて応募したい」「今の仕事を続けるべきだと理解したい」など、本人が語っていない結論を足さないようにします。応募したい気持ちがあっても、応募へのためらいも語られているなら、その両方を残します。

同様に、本文にない応募期限、家族の反対、収入の減少などを、もっともらしい背景として追加しません。

字数を整えるときも、相談内容のつながりを残す

長くなったときは、「相談者は〜という状況にある」などの前置きや、同じ迷いを繰り返す部分から整理します。今回の相談に直接関わらないプロフィールも見直します。

本人の希望と気がかりの両方が重要なら、短くするために片方を落とさないようにします。文章は一文に詰めず、状況と希望、迷う背景、相談内容に分けると読みやすくなります。

「〜したいが、〜が気になり、〜について相談したい」は、まとめ方の一例です。対立する希望がない事例にも無理に当てはめる型にはしません。

答案例の字数は、句読点・記号を含み、空白・改行を除いて数えています。公式の必要字数や字数制限を示すものではありません。上の架空事例は説明用の短い事例であり、本番の欄を埋める分量の基準にはしていません。原寸での手書きの収まり・所要時間は未検証です。

書き終えたら、本人の立場で読み直す

部分練習では、まず四つのメモを作り、答案にした後に次を確かめます。

  • [  ] 今回、何を相談したい人なのかが分かる。
  • [  ] 本人の希望と、迷いや気がかりの背景がつながっている。
  • [  ] 既に調べたことや行ったことを、未実施に置き換えていない。
  • [  ] 本人の受け止めと、客観的な事実を区別している。
  • [  ] CCの見立て・支援方針や、本文にない事情を付け加えていない。

最後に「この人の相談を、別の人の相談と区別できるか」と読み直してみます。漠然としたテーマだけで終わっていたら、本人が大切にすることや、迷いを生む事情に戻ります。

続けて、問2では困り方の仕組みを捉え、問3では目指す状態を考え、問4では具体的な支援につなげます。問1で捉えた本人の希望と気持ちを、その後の答案でも大切にしていきます。

参考資料

確認日:2026年11月7日。本記事の整理手順・架空事例・答案例・点検項目は学習用に作成したもので、公式模範解答や詳細な採点基準ではありません。

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