目標を書くときは、

「本人が納得して選ぶために、何を理解し、どんな判断や行動ができる状態になる必要があるか」

を考える。今回は、この考え方を練習の軸にします。

前回の問2の記事では、本人の希望と、判断・行動を妨げていること、その影響をつなげて考えました。次は、その見立てから目標を組み立てる練習です。

「本人が選ぶ」の前に、何が必要なのか

私がこれまで解いてきた答案分析では、本人が納得して選ぶ方向は書けていると評価されました。一方、そのために当面何を理解・比較できる必要があるかが、抽象的になる点が課題でした。

「価値観を明確にし、納得して意思決定する」だけでは、今回の相談者に必要な支援が見えません。何を大切にしているかを既に語っている人なら、その希望を現実の条件と結び付けて検討することが必要かもしれません。

合格基準を安定して超える力をつけるために、目標らしい言葉を書くところから進み、なぜこの目標が必要で、達成すると何が変わるのかを答案から読み取れることを目指したいと思います。

公式資料と、学習用の評価を分ける

第36回の公式問題は、問3が目標15点、問4が具体的な方策45点の4問形式です。目標と方策を同じ問3に書く旧形式とは区別し、対象回の設問・解答欄を確認します。この記事は4問形式の問3を中心に説明します。

2026年度前期の公式講評では、問2で課題を捉えることと無理のない目標設定とのつながりが述べられています。また、一般的な表現だけに終わらず、事例に即した根拠と実行可能性を検討する必要性が示されています。受検者全体への講評であり、私の答案を直接採点したものではありません。

これを踏まえ、復習では次の観点で評価します。

観点答案で確かめること
妥当性本人の相談内容と、根拠のある見立てに応えているか
具体性何を理解・比較・判断できる状態か分かるか
主体性・実行可能性本人の希望や準備、生活・仕事の条件に無理がないか
一貫性目標に向かう具体的な働きかけを、方策で説明できるか

この表は学習用の整理で、公式採点表ではありません。公式受検概要では論述の合格基準は100点満点で60点以上ですが、問3単独の合格点を意味しません。学習用の点数や例文だけで、合格水準を満たしたとは判断しません。

目標を考える4段階

1.希望・現在地・見立てを確認する

本人が望むこと、既に知っていること・行ったこと、なお判断や行動を難しくしていることを短くメモします。問2の根拠が弱ければ、目標を整える前に見直します。

「情報不足だから情報を得る」と書く場合も、何の情報が必要なのかを確かめます。調べた事実を見落とすと、目標も本人の現在地からずれてしまいます。

2.今回の相談で必要な到達点を考える

相談を通して、本人が何を考えられる・選べる・相談できるとよいかを考えます。仕事の選択、役割の調整、今後の学びなど、本人が相談したいことに戻ります。

毎回、最終決定までを目標にする必要はありません。気持ちや選択肢を整理し、必要な確認や話し合いへ進める状態が、当面の到達点になる場合もあります。本文に期限がなければ、日付を付け足しません。

3.そこへ進むために必要な変化を具体化する

到達点だけでは、主訴の希望の言い直しになることがあります。「今はなぜ難しいか」に対応させ、本人に必要な理解・受け止め・判断の変化を考えます。

例えば「自信がない」を「自信をつける」と裏返すだけでは、何を支えるかが曖昧です。経験をどう評価できると、何を検討しやすくなるのかまで考えます。不安が完全になくなることを、行動の前提にはしません。

4.重要な内容を選び、方策との対応を確かめる

メモを基に、「何を捉えられるようになり、何を基に検討し、どこへ進むか」を文章にします。全部を定型文に入れる決まりではなく、その人に必要な変化を選ぶための補助線です。

今回の困り方の中心に関わる目標を優先し、重複はまとめます。心理面と環境面に別の課題がある場合は、一方だけで済ませないようにします。長い場合も、必要な論点を削る前に「理解を深める」などの抽象部分を具体的な内容に置き換えます。

さらに、目標ごとに「そのためにどう支援するか」を一つ挙げてみます。目標は本人が目指す状態、方策はそこへ向かう働きかけとして、対応を確認します。

前回の架空事例から、目標を作ってみる

総務を7年間担当し、社内の研修担当への応募を迷う社員の事例です。前回の記事と同じ、解き方を説明するための独自の架空事例です。公式問題の再現や、本試験と同じ分量の模擬問題ではありません。CLは相談者の発言を表します。

CL1:新人に社内手続きを説明しています。「分かりやすかった」と言われるとうれしいです。これからは、人が学ぶことを支える仕事に関わりたいです。

CL2:研修担当の募集要項を読み、担当者にも仕事内容を聞きました。最初は先輩と組んで研修の準備をするそうです。

CL3:でも、研修を一から企画した経験はありません。向いていないのかもしれません。

CL4:今も相手に合わせて資料や話し方を工夫していますが、研修の企画とは別物ですよね。応募書類を書き始めても、経験がないのに応募してよいのかと考えて進めません。

まず自分で考える

  • 本人が望んでいること:______
  • 判断・行動を難しくしていること:______
  • 本人にどんな理解や検討が必要か:______
  • その結果、何ができる状態を目指すか:______

見立てと目標をつなぐメモ

見立ての根拠目指す状態
CL3・4:企画未経験から適性を不安視し、準備が止まる未経験の部分と、既にある説明の経験を、研修の仕事に照らして検討できる
CL2・4:先輩と準備する条件は知るが、今の経験と別物に感じる経験を生かせそうな部分と、新しく学ぶ部分を具体的に考えられる
CL1・4:学びを支える希望と、応募へのためらいがある希望と実際の仕事・学習条件を踏まえ、応募の是非と次の行動を選べる

本人が既に仕事内容を聞いているので、「仕事内容を知る」だけを目標にすると現在地を捉えきれません。また、説明の工夫が研修企画に必ず通用するとも断定できません。生かせる部分と新たな課題を具体的に検討する目標にします。

抽象的な目標と、改善例を比べる

抽象的な例(29字)

自己理解を深め、価値観を明確にして、納得できる選択をする。

本人が選ぶ方向はあります。ただ、何を理解する必要があるか、なぜ準備が止まっているかとの対応が読み取れません。

改善例(108字)

相手に合わせて説明を工夫した経験を研修の仕事に照らし、生かせる部分と新たに学ぶ課題を具体化する。先輩と準備する条件も踏まえ、人の学びを支える希望と実際の仕事を結び付け、応募の是非と次の行動を自分で選べることを目指す。

この例では、妨げになっている適性への不安に対し、経験と仕事の関係を検討する状態を置いています。「応募する自信をつける」と結論を先に決めず、応募しない判断や追加確認も含め、本人が選べるようにしています。

評価したいのは字数の増加ではなく、見立てへの対応と、判断に使う材料が文章で示されたことです。実際の相談では、この目標案を本人と検討・共有します。公式の試験範囲にも、相談の到達目標や範囲について本人との具体的な合意を得ることが含まれています。

方策で支えられるか、逆から確かめる

目標の内容対応する働きかけの例
経験を生かせる部分と学ぶ課題の具体化説明を工夫した場面を振り返り、研修準備の業務と比べる。先輩と取り組む範囲など、必要な追加確認を本人と絞る
希望に照らした応募判断と次の行動本人が望む関わり方と、仕事・学習上の負担を検討し、応募する場合の準備や、判断に残る確認事項を整理する

これは対応点検用のメモで、問4の完成答案ではありません。前者だけで終えると、経験整理を何に使うかが曖昧になります。後者だけでは、判断を難しくする不安への支援が薄くなります。

心理面だけで目標を立てない

別の短い架空例として、親の介護が増え、仕事を続けたいが勤務調整を相談できず、家族の分担も決まっていない人を考えます。

「仕事と家族の価値観を整理する」だけでは、実際に必要な介護と仕事をどう組み合わせるかが残ります。心理面に加え、本人と周囲が担うこと、職場や地域で相談できる支援条件を把握し、当面の対応を検討できることが目標になります。

将来の暮らしを考えることも大切ですが、まず何を確かめると目前の対応を考えやすくなるかを見ます。制度の利用や家族の協力を、既に可能だと補ってはいけません。期日や必要性が未確認なら、最終決定を急がず、相談・確認の準備を当面の目標にできます。

目標を評価するときに直したい4つの例

表現の例評価上の弱点と修正方向
価値観を明確にする何を大切にするかだけでなく、それをどの判断に使うかを具体化する
自信をつけて応募するCCが応募へ誘導するおそれがある。経験と仕事を検討し、本人が応募の是非を判断できる状態へ直す
CCが担当者への質問を準備し、面談を提案する支援者の手順に寄っている。確認により本人が何を理解・検討できるかを目標に置く
上司の承認を得て異動する相手の判断も必要な成果。本人が希望と根拠を伝え、調整事項や別案を検討できる状態を考える

行動を目標に含めること自体は問題ありません。その行動が今回の困り方に応え、本人が取り組めるかを見ます。「自分で」「納得して」と付けても、結論誘導や実現条件の不足は解消しません。

目標だけを10分で練習する

部分練習では、3分で希望・見立て・到達点をメモし、4分で目標を書き、3分で次を点検します。この時間は本試験の推奨配分ではありません。

  • [ ] 問2の根拠と本人の相談内容から、目標の必要性を説明できる。
  • [ ] 理解・整理する対象と、その先の判断や行動が読み取れる。
  • [ ] 既に分かっていることや行ったことを出発点にしている。
  • [ ] 本人の気持ち・準備と、環境・支援条件を踏まえている。
  • [ ] 必要な変化を支える方策を、具体的に説明できる。

答案例の字数は句読点・記号を含み、空白・改行を除いて数えています。字数は公式の制限ではなく、原寸での手書きの収まり・所要時間は未検証です。

次の練習では、例文を見ずに目標を作り、別の事例でも根拠を説明できるか確かめたいと思います。復習には、単なる「具体性不足」ではなく、「誰の、何の判断に使うかが抜けた」など、直す箇所を残します。

参考資料

確認日:2026年11月5日。本記事の手順・架空事例・答案例・評価観点は学習用の整理で、公式模範解答や詳細な採点基準ではありません。面接の評価区分を論述の採点表として扱っていません。

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