マイクロカウンセリングは、カウンセリングで用いる複雑なコミュニケーションを、学習しやすい小さな単位(マイクロ技法)に分けて身につける訓練モデルです。

一つの技法だけで相談を進めるのではありません。

相談者との関係をつくり、話を聴き、経験や感情を整理し、必要に応じて新しい見方や行動を検討するという面接の流れに応じて、複数の技法を使い分けます。

技法は階層として理解する

マイクロカウンセリングでは、基本的なかかわりから、相談者の変化をより積極的に促す働きかけへと、技法を段階的に整理します。試験対策では、個々の名称だけでなく、技法の目的を区別することが大切です。

かかわり行動

視線、姿勢、声の調子、言語的な追跡などを通して、「あなたの話を聴いている」という姿勢を示します。後に続くすべての技法の土台です。

ただし、視線の合わせ方や対人距離の感じ方には個人差や文化差があります。型を機械的に当てはめるのではなく、相談者が安心して話せる関わりを考えます。

質問技法

開かれた質問は、相談者が自分の言葉で広く答えられる質問です。閉ざされた質問は、事実や必要な情報を絞って確認するときに役立ちます。

質問を続けすぎると、相談者が尋問されているように感じることがあります。質問への答えを受け止め、言い換えや感情の反映と組み合わせることが必要です。

言い換え・要約・感情の反映

言い換えは、相談者が話した内容の要点を支援者の言葉で返す技法です。要約は、複数の発言や面接の経過を整理して返します。感情の反映は、言葉や非言語的な表現から受け取った感情を確かめるように返します。

いずれも支援者の解釈を断定するものではありません。「そのように感じているのですね」と決めつけるのではなく、理解が合っているかを相談者と確かめます。

積極技法

積極技法は、相談者が自分を別の角度から捉えたり、具体的な行動を検討したりできるよう、支援者が意図的に働きかける技法です。代表例として、指示、論理的帰結、解釈、自己開示、フィードバック、情報提供、説明、対決などがあります。

積極的に関わることは、支援者が正解を押し付けることではありません。相談者との信頼関係と、それまでの話の理解を土台にして用います。

試験で問われやすい積極技法

指示

相談者が取り組む行動や課題を、具体的に示す技法です。たとえば、次回までに求人情報を整理するよう提案することが考えられます。

支援者の命令に従わせることが目的ではありません。必要性を共有し、相談者が納得して取り組める内容かを確かめます。

自己開示

支援者が自分の経験や、その場での感じ方を適切な範囲で伝える技法です。相談者の理解や自己開示を促すために用います。

支援者が自分の話をしたいから話すものではありません。相談者の利益になるか、面接の焦点を奪わないかを点検する必要があります。

フィードバック

支援者から見えた相談者の行動や印象などを、自己理解のための情報として返します。「話の内容とは別に、声が小さくなったように感じました」のように、評価や決めつけを避けて具体的に伝えます。

フィードバックは、相談者を採点したり非難したりする技法ではありません。本人が自分の行動や影響を吟味できるようにします。

対決

対決は、相談者の言葉、感情、行動などに見られる不一致や矛盾を、本人が検討できるように示す技法です。

たとえば、「転職したい」と話す一方で応募を避けている場合、その二つを責めずに並べて示し、本人にとってどのような意味があるかを一緒に考えます。

日常語の「対決」には、相手と争う、誤りを正すといった印象があります。しかし、カウンセリング技法としての対決は、相談者の誤った意見を支援者が訂正することではありません。この違いが試験で重要です。

基本技法と積極技法を対立させない

基本的な傾聴が「よい技法」で、積極技法が「強すぎる技法」という関係ではありません。面接の目的、相談者の状態、信頼関係に応じて使い分けます。

十分に話を聴かずに対決や解釈を行えば、相談者は否定されたと感じるかもしれません。一方、相談者が行き詰まっているときに、傾聴だけを続ければよいとも限りません。技法の名称ではなく、「今、この働きかけが相談者の自己理解や自己決定に役立つか」を考えることが基本です。

試験対策での見分け方

選択肢を判断するときは、次の三点を確認します。

  • 技法の説明と目的が一致しているか
  • 支援者が相談者を評価・操作する説明になっていないか
  • 相談者の気づきや主体的な検討を支える関わりになっているか

とくに対決は、「矛盾を気づきとして示す」と理解します。「誤りを防ぐ」「支援者が正しい考えに直す」といった説明は、対決の目的とは異なります。

まとめ

マイクロカウンセリングは、面接で用いるコミュニケーションを小さな技法に分け、段階的に学ぶ枠組みです。かかわり行動、質問、言い換え、要約、感情の反映などを土台に、必要に応じて積極技法を用います。

指示、自己開示、フィードバック、対決はいずれも、相談者を支援者の考えに従わせるものではありません。相談者が自分を理解し、選択肢を吟味し、主体的に行動できるように使います。

関連する過去問

第32回国家資格キャリアコンサルタント試験の問36では、マイクロカウンセリングの積極技法が扱われました。正答と各選択肢の解説は、第32回 問36〜40 解答解説をご覧ください。

参考資料

厚生労働省「キャリア・コンサルティング研究会報告書」

JILPT資料シリーズNo.165「職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査」