この記事について

エドガー・H・シャイン著「プロセス・コンサルテーション」の中で、キャリアコンサルタントとして重要だと思う部分をまとめました。

以前に読んだ「人を助けるとはどういうことか」でも出てくるプロセス・コンサルテーションについて詳細に書かれているものです。

キャリア・コンサルタントととしての心構えを考える上で非常に参考になります。

うまく機能する援助関係を構築する上でのジレンマ

うまく機能する援助関係を構築する上でのジレンマは、両者とも互いについて学ばなければならない一方、同時にクライアントが自らの話を語ることのできる安全な環境を作り出しているということにある。

プロセス・コンサルテーション(P55)

これは、援助者はクライアントのことを理解しようと学び続ける必要がある一方で、同時にクライアントが安心して自分の思いを話せる場を守らなければならない、という意味です。

どういうジレンマか

援助関係では、援助者もクライアントも、最初から相手を完全には分かっていません。だから両者が互いについて少しずつ学んでいく必要があります。
一方で、クライアントが本音を話すには、「否定されない」「急かされない」「秘密が守られる」と感じられる安全な空間が必要です。

つまり、援助者は知ろうと近づきすぎると場を壊すが、離れすぎると理解できないという難しさを抱えています。
この文は、そのバランスを指しています。

要点

援助者はクライアントを理解するために質問したり、関わったりする必要がある。

でも、詰問したり、評価したり、急に助言しすぎると、クライアントは話しにくくなる。

だから、学ぼうとする姿勢を持ちながら、まずは安心して話せる雰囲気を作る。

その安全の中で、クライアント自身の物語が少しずつ語られていく。

たとえば、面接で援助者が「何があったんですか」と聞くのは必要ですが、すぐに「それはこういう問題ですね」と決めつけると、クライアントは身構えます。
逆に、「ここではゆっくり話して大丈夫です」と伝え、相手のペースを尊重すると、話しやすくなります。

誘惑に打ち勝つ

問題を認めたことによってクライアントが作り出した力の空白へ足を踏み入れたいとする当初の衝動に援助者は打ち勝てねばならない。

プロセス・コンサルテーション(P55)

これは「クライアントが問題を自覚したときに生じる、まだ何かで埋まっていない“空き”に、援助者がすぐ入り込んで埋めてしまってはいけない」という意味です。

クライアントが作り出した空白

クライエントが「問題がある」と認めると、心の中に不安や混乱が生まれます。=クライアントが作り出した空白

そこに援助者が急いで答えや指示を与えると、クライエント自身が考え直したり、自分で気づいたりする余地を奪ってしまいます。

この文の「力の空白」は、政治学の「権力の真空」から来た比喩で、支配や統制が弱まって空白ができた状態を指します。
ここでは、それを援助場面に当てはめて、「クライエントの自己決定の余地」を援助者が奪ってはいけない、というニュアンスです。

要点

クライエントが問題を認める。

すると、すぐ埋めたくなる“間”が生まれる。

でも援助者は、その空白に飛び込んで主導権を握らない。

その“間”の中で、クライエント自身が気づき、選び、動けるように待つ。

つまり、「助けるために急ぎすぎないこと」を言っています。

たとえば相談者が「自分は怒りっぽい」と認めた場面で、援助者がすぐに「ではこうすべきです」と答えを出すのではなく、「そのことに気づいた今、どんな感じがしますか」と返す。

こうして、クライエントが自分の内側を見つめる時間を守る、ということです。