副業・兼業の管理モデルとは?労働時間の上限と割増賃金をわかりやすく解説
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副業・兼業の管理モデルとは
副業先で働く時間は、本業の会社も毎日確認しなければならないのでしょうか。
厚生労働省の「管理モデル」を適切に導入し、各社が設定した上限を守って働かせる場合、他社の実労働時間を日々確認せずに管理できます。勤務先ごとに労働時間の上限を事前に設定し、割増賃金の取扱いを決めることで、労働時間の申告や通算管理の負担を軽くする方法です。厚生労働省「副業・兼業」
ただ、「法定労働時間」「法定外労働時間」「設定した上限」という言葉をまとめて読むと、何を管理しているのか分かりにくくなります。
この記事では、二つの会社で雇用されて働く場合を例に、基本から整理します。
確認日:2026年10月11日。両社が原則1日8時間・週40時間の通常の労働時間制を採用し、時間外労働の上限規制が一般則どおり適用される場合を中心に説明します。以下の数値例では、法定休日の労働はないものとします。変形労働時間制やフレックスタイム制、業務・事業による特例がある場合には、別途確認が必要です。
まず、法定労働時間と所定労働時間を区別する
法定労働時間は、原則として1日8時間・週40時間
法定労働時間とは、法律が定める労働時間の基準です。原則として、休憩時間を除き、1日8時間・1週間40時間以内です。労働基準法第32条
日と週の両方で判断します。通常の労働時間制で1日10時間働いた場合、週の合計が40時間以内でも、その日の2時間は法定外労働です。
変形労働時間制などの例外もあるため、実際の計算では、その勤務先の労働時間制度を確認します。厚生労働省「勤務時間の上限は法律で決まっていますか」
所定労働時間は、会社との契約などで決めた勤務時間
例えば、会社の勤務時間が1日7時間の場合、8時間働けば、追加の1時間は「所定外労働時間」です。
一方、日単位では8時間を超えていないので、その1時間は「法定外労働時間」にはなりません。週40時間を超えるかは、別に確認します。
| 言葉 | 判断する基準 |
|---|---|
| 所定外労働時間 | 会社との契約などで決めた勤務時間を超えたか |
| 法定外労働時間 | 適用される法律上の労働時間の基準を超えたか |
なお、割増賃金とは、時間外労働などについて、通常の賃金に一定の率を加えて支払う賃金です。労働基準法第37条
会社での「残業」という言葉だけでは、どちらを指すか分からない場合があります。厚生労働省の副業・兼業の解釈通達も、所定労働時間と所定外労働時間を分けて説明しています。解釈通達・第3、第4
副業・兼業では、原則として複数の勤務先の時間を通算する
雇用契約によって複数の会社で働く場合、法定労働時間に関する規定は、原則として各勤務先の時間を合計して適用します。
通算することで、法定労働時間を超える部分や割増賃金の対象を判断し、複数の勤務先を合わせた時間外・休日労働の上限を守るように管理します。
例えば、通常の労働時間制で、ある日にA社で8時間、B社で2時間働くと、合計は10時間です。B社だけを見て「2時間だから法定労働時間内」と判断することはできません。
具体的な通算では、契約で決めた時間を労働契約の締結順に、所定外労働を実際に発生した順に扱います。双方で残業が発生すると、時間の申告や、割増賃金をどちらが支払うかの判断にも手間がかかります。厚生労働省「兼業時の総労働時間について、法規制はありますか」、解釈通達・第3、第4
この記事で扱うのは、両方の勤務先で雇用される場合です。副業という名称でも、自営業や業務委託など、労働基準法の労働時間規制が適用されない働き方には、同じ通算ルールをそのまま当てはめません。解釈通達・第1
管理モデルでは、A社とB社で管理する時間の範囲が異なる
管理モデルを理解する際は、次のように会社を区別します。
- A社:時間的に先に労働契約を結んだ会社。
- B社:時間的に後から労働契約を結んだ会社。
A・Bは契約の順番で決まります。働く人がどちらを「本業」と呼ぶかや、給与の多さで決めるものではありません。
基本の取扱いは、次のとおりです。
| 会社 | 上限を設定する時間 | 時間外労働の割増賃金を支払う対象 |
|---|---|---|
| A社 | 自社での法定外労働時間 | 自社での法定外労働時間 |
| B社 | 自社での労働時間全体 | 自社での労働時間全体 |
A社は法定外労働、B社は働く時間全体を対象にするという違いが中心です。各社は、それぞれの36協定の範囲内で時間の上限を設定します。36協定とは、法定時間外・法定休日の労働をさせるために必要となる労使協定で、締結と労働基準監督署への届出が必要です。労働基準法第36条、副業・兼業の促進に関するガイドライン・3(2)オ(本文pp.14〜16)
「設定した上限」は、週40時間とは別のもの
管理モデルでは、A社の法定外労働時間とB社の労働時間全体を合計し、次の範囲に収まるように、各社の上限を設定します。
- 1か月では100時間未満。
- 2〜6か月の、それぞれの期間の平均では、月80時間以内。
この規制は、時間外労働と法定休日の労働を合わせた時間に適用されます。法定休日に働かせる場合も、その時間を含めて上限を守る必要があります。副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A・問1-4、1-7(本文pp.31、38〜39)
厚生労働省の資料では、次の設定例が示されています。
| 対象 | 1か月の上限の例 |
|---|---|
| A社の法定外労働時間 | 45時間 |
| B社の労働時間全体 | 35時間 |
| 上記二つの合計 | 80時間 |
45時間・35時間は設定例で、全員共通の数字ではありません。
また、ここでの合計80時間に、A社の通常の法定内労働時間をすべて足すわけではありません。「本業と副業の全労働時間が月80時間まで」という意味ではないのです。
「1日8時間・週40時間」は法定外労働になるかを判断する基準であり、「月45時間・月35時間」は管理モデルで事前に設ける上限の例です。厚生労働省「管理モデル」解説資料(PDF p.2)、同Q&A・問1-6(本文pp.32〜33)
設定上限と、実際に働いた時間を分けて考える
先ほどのA社45時間・B社35時間という設定のもとで、ある月に次のように働いたとします。実際の時間は、仕組みを説明するための例です。
| 対象 | 設定上限 | 実際の時間 |
|---|---|---|
| A社の法定外労働時間 | 45時間 | 20時間 |
| B社の労働時間全体 | 35時間 | 30時間 |
| 上記二つの合計 | 80時間 | 50時間 |
実際の合計は50時間です。上限の合計を80時間にしておけば、両社がそれぞれの上限を守る限り、管理対象の合計は80時間を超えません。
そのため、他社の実労働時間を日々確認せずに管理できます。A社は自社の20時間を45時間以内に、B社は自社の30時間を35時間以内に収めるように管理します。
A社の法定外労働が、その月は0時間だった場合も同じです。日々の確認を省ける根拠は、両社が合意した管理モデルの上限設定と賃金の取扱いにあります。A社の残業が少なかったという実績だけでは、この取扱いは使えません。副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A・問1-6(本文pp.32〜33)
なぜ、B社は労働時間全体に割増賃金を支払うのか
基本の取扱いでは、B社はA社での実際の労働時間にかかわらず、自社の労働時間全体を法定外労働として扱います。
先ほどの例でB社が2時間働かせたなら、B社はその2時間全体に割増賃金を支払います。B社単独で1日8時間を超えた部分だけを対象にする方法ではありません。
この取扱いと事前の上限設定によって、各社が設定した範囲内で働かせる限り、他社の実労働時間を逐一把握せずに労働時間を管理できます。厚生労働省「簡便な労働時間管理のポイント」(2023年3月、pp.1〜2)
| 比較項目 | 原則的な通算管理 | 管理モデルの基本の取扱い |
|---|---|---|
| 他社の実労働時間 | 労働者の申告等で把握して通算する | 適切な上限設定とその遵守により、日々の把握を省ける |
| 割増賃金の対象 | 契約の順序・所定外労働の発生順などで判断する | A社は法定外労働、B社は労働時間全体 |
| 自社の実労働時間 | 把握する | 把握し、設定した上限も守る |
このように、管理モデルを利用すると時間の申告や通算の手間を減らせますが、B社には基本的に全労働時間への割増賃金が必要になります。導入時には、賃金の負担も含めて確認します。副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A・問1-6(本文pp.32〜33)
B社の全時間へ割増賃金を払わない取扱いもある
B社がA社の日ごとの実労働時間を把握し、通算しても法定労働時間内に収まる部分が明確な場合、その部分を時間外労働として扱わず、割増賃金を支払わない取扱いも認められています。A社で法定外労働が発生する可能性がない場合も、Q&Aで具体例が示されています。副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A・問1-6、1-13(本文pp.36〜37、43〜46)
この取扱いを利用するなら、B社はA社の実労働時間を把握して通算します。まずは表の基本を理解し、実際の運用では、どの取扱いを採るかを確認することが大切です。
導入には、両社と労働者の情報共有が必要
一般的には、A社が労働者に管理モデルでの副業・兼業を求め、労働者を通じてB社にも伝え、労働者とB社が応じることで導入します。
上限や賃金の取扱いについて、三者の認識をそろえる必要があります。厚生労働省Q&Aの問1-9は、必要な情報を書面や電子的な方法で共有しておくことが望ましいとしています。副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A・問1-9(本文p.41)
各社は自社での労働時間を把握し、設定した上限を守って働かせます。導入したというだけで、労働時間管理の責任がなくなるわけではありません。
設定した上限を超える場合は、どうするか
A社45時間・B社35時間と決めていたのに、実際には次のようになったとします。
| 対象 | 設定上限 | 実際の時間 |
|---|---|---|
| A社の法定外労働時間 | 45時間 | 50時間 |
| B社の労働時間全体 | 35時間 | 30時間 |
| 上記二つの合計 | 80時間 | 80時間 |
実際の合計が80時間でも、A社は自社の設定上限を5時間超えています。B社の実績が少なかったことだけを理由に、A社が設定上限を超えて働かせてよいとはいえません。
設定上限と法律上の上限は、別々に確認する
管理モデルの設定上限を超えたことと、法律違反が発生したかどうかは、分けて確認します。
この例では、A社で月45時間を超える時間外労働をさせるため、適法な特別条項付き36協定や、その適用条件なども確認が必要です。設定上限の超過によって時間外労働の上限規制等に違反した場合、超えて働かせた使用者が法違反を問われ得ます。労働基準法第36条、解釈通達・第5の4(4)
上限の変更は、事前の通知・調整によって行う
厚生労働省の通達は、A社の上限を変更する必要が生じた場合、あらかじめ労働者を通じてB社へ通知し、必要に応じてB社の上限も変更できるとしています。解釈通達・第5の4(2)
例えば、法令と各社の36協定の条件を満たすことを前提に、今後の上限をA社50時間・B社30時間へ調整する方法が考えられます。
すでに上限を超えて働かせた場合は、実労働時間、36協定、通算した時間の上限規制などを確認します。事後に設定上限の数字を書き換えるだけでは、実際に生じた法令違反を解消できません。
月の設定上限に加えて、年間の上限も守る
時間外労働の一般的な上限は、次のとおりです。特別条項は、通常予見できない業務量の大幅な増加など、臨時的な特別の事情がある場合の取扱いです。
| 規制 | 上限・条件 | 副業・兼業での適用 |
|---|---|---|
| 原則の時間外労働 | 月45時間・年360時間 | 各事業場の36協定で管理 |
| 特別条項の年間時間外労働 | 年720時間以内 | 各事業場の36協定で管理 |
| 月45時間を超える月数 | 年6か月以内 | 各事業場で管理 |
| 時間外労働+法定休日労働 | 月100時間未満 | 複数の勤務先の時間を通算 |
| 時間外労働+法定休日労働の平均 | 2〜6か月の各平均が月80時間以内 | 複数の勤務先の時間を通算 |
月45時間・年360時間・年720時間の規制には、法定休日の労働時間を含めません。一方、月100時間未満・複数月平均80時間以内の規制には、法定休日の労働時間も含めます。労働基準法第36条、副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A・問1-1
各社の36協定の限度を確認する場合と、複数の勤務先の時間を通算する場合を区別する必要があります。解釈通達・第1の2、3
例えば、A社で毎月45時間の時間外労働を12か月行うと、年540時間になります。月の設定上限は守っていても、特別条項を設けていない通常の36協定では、原則の年360時間を超えてしまいます。
A社45時間・B社35時間という管理モデルの設定例は、年間を通してその時間だけ働けるという許可を意味するものではありません。
上限の範囲内でも、健康への配慮は続ける
管理モデルを利用しても、健康診断など、法令に基づく健康確保措置は、それぞれの適用条件に応じて必要です。
働く人にとっても、勤務先が変われば疲労がリセットされるわけではありません。通勤を含めた生活時間、睡眠、休日の過ごし方も考えながら、無理のない働き方を検討したいところです。
法令上の上限まで働くことを目標にせず、体調や生活と両立できる範囲を話し合うことが大切です。厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」解説パンフレット(2025年3月版、本文p.36)、同Q&A・問1-14(本文p.47)
まとめ
管理モデルは、副業・兼業での労働時間の申告や通算管理を簡便にする方法です。
押さえたい点は、次の四つです。
- 法定労働時間と、管理モデルで事前に設定する上限を区別する。
- A社は法定外労働時間、B社は労働時間全体を管理の対象にする。
- 基本の取扱いでは、B社が自社の全労働時間に割増賃金を支払う。
- 合計時間の上限に加え、各社の設定上限と36協定の月・年の限度を守る。
そのうえで、両社が設定した上限を守り、労働者と必要な情報を共有します。勤務先の労働時間制度などによって取扱いが異なる場合もあるため、実際の導入や個別の判断は、勤務先の労務担当者や労働基準監督署等に確認してください。
参考資料
- 労働基準法(厚生労働省法令等データベース):第32条・第36条・第37条・第38条。
- 厚生労働省「副業・兼業」:公式資料・導入通知の様式例の案内。
- 厚生労働省「勤務時間の上限は法律で決まっていますか」:法定労働時間と変形労働時間制の基本。
- 厚生労働省「副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について」:2020年9月1日付、第1・第3・第4・第5。
- 厚生労働省「兼業時の総労働時間について、法規制はありますか」:勤務先をまたぐ労働時間の通算。
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」:2022年7月8日改定版、3(2)オ、本文pp.14〜16。
- 厚生労働省「副業・兼業における労働時間の通算について(簡便な労働時間管理の方法『管理モデル』)」:PDF p.2、上限設定の方法と例。
- 厚生労働省「副業・兼業の場合における簡便な労働時間管理のポイント」:2023年3月、pp.1〜2。
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A」:2022年7月13日改定版、問1-1・1-4・1-6・1-7・1-9・1-13・1-14。
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」解説パンフレット:2025年3月版、本文p.36。
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