仕事と介護を両立するための基礎知識―介護離職を防ぐ制度と相談先
Contents
介護が始まっても、すぐに仕事を辞めない
家族に介護が必要になると、「自分が付ききりで介護しなければならない」「仕事を辞めるしかない」と考えてしまうことがあります。しかし、介護は終わる時期を見通しにくく、離職すると収入、社会とのつながり、将来の年金などにも影響します。
仕事と介護を両立する基本は、介護を一人で抱えず、介護保険サービスと職場の両立支援制度を組み合わせることです。家族の介護をすべて自分で行うのではなく、自分は働きながら介護体制を整え、必要な場面で関わるという発想が重要です。
本記事の制度内容は2026年8月時点の一般的な説明です。対象者や利用手続は個別事情で異なるため、勤務先、地域包括支援センター、市区町村などに確認してください。
最初に相談したい二つの窓口
地域の相談先
介護については、地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口に相談できます。要介護認定を受け、介護サービスを利用する場合は、ケアマネジャーが本人や家族の希望を踏まえてケアプランを作成します。
ケアマネジャーに伝えるのは、要介護者の状態だけではありません。「平日の昼間は仕事で不在」「残業のある曜日がある」「介護者自身に持病がある」など、介護する家族の生活と仕事も重要な情報です。働き続けたいという希望を明確に伝え、通所介護、訪問介護、短期入所などの利用を検討します。
勤務先の相談先
勤務先には、家族の介護に直面していることを早めに伝えます。上司だけでなく、人事・労務担当者や社内相談窓口へ、利用できる制度、申出の期限、必要書類を確認します。
家族の病名や詳しい事情を職場全体へ話す必要はありません。誰にどの範囲まで共有するかを確認しつつ、勤務上必要な情報を伝えます。就業規則に法律を上回る制度が設けられていることもあります。
介護休業は「自分が介護に専念する期間」ではない
介護休業は、対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として分割して取得できる制度です。
この期間の重要な目的は、家族の介護をすべて自分で行うことではなく、仕事へ戻った後も両立できる体制を整えることです。
- 要介護認定や介護サービスの申請を進める
- ケアマネジャーとケアプランを相談する
- 家族間で役割分担を話し合う
- 民間サービスや見守り手段を検討する
- 勤務先と復帰後の働き方を調整する
介護休業期間中には、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者へ介護休業給付金が支給される場合があります。支給要件はハローワークなどで確認します。
日々の対応に使う介護休暇
介護休暇は、通院の付き添い、介護サービスの手続、ケアマネジャーとの打合せなど、日常的な介護の必要に対応するための制度です。
対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで取得でき、1日または時間単位で利用できます。介護休業の93日とは別の制度です。
名称が似ていますが、長めの体制整備に使う介護休業と、日々の用事に使う介護休暇を区別します。
法律上、介護休暇を有給にすることまでは定められていません。有給か無給かは勤務先の規定を確認する必要があります。
働き方を調整する制度
育児・介護休業法には、休業・休暇以外にも両立を支える仕組みがあります。介護休業・介護休暇などの対象は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者です。制度ごとに対象者や、労使協定により対象外となり得る労働者の要件が異なるため、勤務先へ確認する必要があります。
所定労働時間の短縮等の措置
事業主は、短時間勤務、フレックスタイム、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、介護サービス費用の助成などから、一定の措置を設ける必要があります。利用できる制度は勤務先によって異なるため、就業規則を確認します。
所定外労働の制限
要件を満たす労働者が請求した場合、事業主は原則として所定労働時間を超えて働かせることができません。いわゆる残業免除です。
時間外労働と深夜業の制限
請求により、時間外労働には1か月24時間、1年150時間という上限が設けられます。また、一定の要件の下で午後10時から午前5時までの深夜業を制限できます。
制度ごとに対象労働者、申出時期、利用期間などが異なります。「制度名を知っている」だけでなく、自分がいつ、どの制度を使うかを勤務先と確認することが大切です。
2025年4月から強化された両立支援
2025年4月施行の改正により、介護離職を防ぐための事業主の対応が強化されました。
- 労働者が家族の介護に直面したと申し出たとき、事業主が制度を個別に知らせ、利用意向を確認する
- 労働者が40歳に達する時期などに、介護休業制度等について早期に情報提供する
- 研修、相談窓口の設置、事例提供など、制度を利用しやすい雇用環境を整備する
- 介護のためのテレワーク導入を事業主の努力義務とする
テレワークは介護サービスの代わりではありません。仕事と介護を同時に行うことを前提にせず、移動時間を減らすなど、両立を助ける選択肢の一つとして使います。
両立体制を作るための手順
1. 緊急度と本人の状態を確認する
医療上の緊急性、安全面、要介護者本人の希望を確認します。介護する家族だけで方針を決めず、可能な範囲で本人の意思を尊重します。
2. 地域の制度とサービスにつなぐ
地域包括支援センターなどへ相談し、要介護認定や必要なサービスの手続を進めます。緊急時の連絡先や、主な支援者が対応できない場合の代替手段も考えます。
3. 勤務先に相談する
介護休業だけでなく、介護休暇、短時間勤務、残業免除、テレワークなどを組み合わせて検討します。いつまで休むかだけでなく、復帰後の働き方まで見通します。
4. 定期的に見直す
要介護者の状態や介護者の仕事は変化します。一度作った体制を固定せず、ケアマネジャーや勤務先と定期的に見直します。
キャリア支援で注意したいこと
介護について相談されたとき、支援者が「家族なのだから介護を優先すべき」「仕事を続けるべき」と価値判断を押し付けないことが大切です。本人の生活、経済状況、仕事への思い、家族関係、健康状態を整理し、選択肢を広げます。
キャリアコンサルタントは介護認定やケアプランを決める専門職ではありません。制度の概要を伝えた上で、地域包括支援センター、ケアマネジャー、勤務先の人事・労務担当者など、適切な窓口につなぎます。
介護者自身の睡眠、健康、自由な時間を守る視点も欠かせません。長期的に両立するためには、介護者が倒れない体制を作ることが必要です。
まとめ
仕事と介護の両立では、離職を急いで決めず、介護保険サービスと職場の制度を組み合わせます。介護休業は対象家族1人につき通算93日・3回までで、主な目的は復帰後も続く介護体制を整えることです。介護休暇や短時間勤務等の措置、残業や深夜業の制限も用途に応じて利用します。
地域の相談先、ケアマネジャー、勤務先と早めにつながり、介護する人自身の仕事と生活を守ることが、継続的な介護にもつながります。
関連する過去問
第32回国家資格キャリアコンサルタント試験の問34では、厚生労働省が示す仕事と介護の両立のポイントが扱われました。正答と各選択肢の解説は、第32回 問31〜35 解答解説をご覧ください。
参考資料
厚生労働省「仕事と介護 両立のポイント―あなたが介護離職しないために」
2級キャリアコンサルティング技能検定を軸に、過去問の出題傾向を分析したオリジナル予想問題50問を作成しました。
国家資格キャリアコンサルタント試験とも出題範囲が重なる部分が多いため、国家試験の学科対策にも活用できます。
過去問を一通り解き終え、初見問題で実力を確認したい方はぜひご活用ください。




