「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を体系的に理解する(国キャリ第32回問15解説)
今回は視点を変え、企業(職場)側が学び・学び直しにどう取り組むべきかを国が示した「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を、体系立てて整理します。
試験だけでなく、企業へのコンサルティングを行う際の骨格としても使える内容です。
ガイドラインの基本情報
- 策定
厚生労働省(令和4年6月)
労使双方の代表を含む労働政策審議会(人材開発分科会)での検討を経て策定 - 対象者
企業・労働者のすべて
雇用形態にかかわらず(正社員・非正規雇用等を問わず)、あらゆる労働者と、その労働者を雇用する企業が対象 - 背景
DXの加速など経済・社会環境の急速な変化、労働者の職業人生の長期化に伴い、労働者が主体的に学び続ける必要性が高まっていること
まず大前提として、「正社員だけを対象にした制度ではない」という点が重要です。
問15の選択肢1が誤りとされたのは、正社員に限定しているというこの点でした。
全体構成=3部構成
ガイドラインは、大きく次の3部で構成されています。
- 基本的な考え方
- 労使が取り組むべき事項
- 公的な支援策
さらに、公的支援策や企業の取り組み事例を詳しく紹介する「別冊」も用意されています。
① 基本的な考え方
冒頭でまず示されるのが、ガイドライン全体を貫く最も重要な考え方です。
労働者のキャリア自律と、企業の生産性向上を両立させるためには、労使(事業者と労働者)が「協働」して学び・学び直しに取り組むことが重要である
ここでのポイントは、「協働」という言葉です。
- 労働者だけが自己責任で学ぶのでもなく
- 企業だけが一方的に研修を課すのでもなく
- 両者が同じ方向を向き、共に取り組むという関係性が強調されています
これが、問15の正解である選択肢2の内容そのものです。「労働者の自律」と「企業の成長」を対立するものとしてではなく、両立させるべきものとして位置づけている点が、このガイドラインの思想的な核になります。
また、基本的な考え方のパートでは、以下のような要素にも触れられています。
- 学び・学び直しは、「機会の提供」だけでなく、能力・スキルの明確化 → 目標のすり合わせ → 機会の提供 → 促進支援 → 実践・評価という一連の「プロセス」として捉えることが望ましいこと
- 学びが学びを呼ぶ「学びの好循環」を職場に生み出すことが期待されていること(特に中小企業では、経営者のリーダーシップがその鍵になるとされています)
② 労使が取り組むべき事項(6カテゴリ・13項目)
ガイドラインの中核となるのが、この「労使が取り組むべき事項」です。
6つのカテゴリ・13項目に整理されています。全体像は以下の通りです。
| カテゴリ | 主な項目 |
|---|---|
| 1. 学び・学び直しに関する基本認識の共有 | 1.経営者による経営戦略・ビジョンと人材開発の方向性の提示・共有 |
| 2. 能力・スキル等の明確化、方向性・目標の共有 | 2.役割に応じた能力・スキルの明確化 3.節目ごとのキャリアの棚卸し 4.方向性・目標の擦り合わせ |
| 3. 労働者の自律的・主体的な学びの機会の確保 | 5.教育訓練プログラム・機会の確保 6.労働者同士が学び合う環境の整備 |
| 4. 学びを促進するための支援 | 7.学びのための時間の確保 8.費用の支援 9.伴走支援 |
| 5. 持続的なキャリア形成につながる実践・評価 | 10.身につけた能力を発揮できる実践の場の提供 11.適切な評価 |
| 6. 現場のリーダーの役割、企業による支援 | 12.現場のリーダー(管理職)の役割と取り組み 13.リーダーのマネジメント能力向上への企業支援 |
ここで注目したいのが、カテゴリ6「現場のリーダーの役割」が独立した項目として明確に立てられている点です。
ガイドラインでは、日々労働者と接する管理職・現場のリーダーが、労働者との目標のすり合わせやキャリア形成のサポートにおいて重要な役割を担うとされており、あわせて企業側がそのリーダーを支援・配慮することも求められています。
問15の選択肢3は、この管理職の役割への言及が「ない」かのように記述していた点が誤りでした。実際には、管理職(現場のリーダー)の役割は、ガイドラインの中で独立したカテゴリとして明確に位置づけられている、という点をしっかり押さえておきましょう。
③ 公的な支援策
ガイドラインの3部目では、①・②で示した考え方や取り組み事項に沿って、国(省庁横断的)が用意している公的な支援策が紹介されています。別冊には、数十項目にわたる支援策が掲載されており、代表的なものとして以下が挙げられます。
- 人材開発支援助成金(企業が教育訓練を実施する際の費用等を助成)
- 各種の教育訓練給付金(一般・特定一般・専門実践。個人向け)
- 職業能力評価基準、デジタルスキル標準(DSS)(能力・スキルの明確化のための基準)
- キャリコンサーチ(キャリアコンサルタント検索システム)、ジョブ・カード(キャリアの棚卸しツール)
問15の選択肢4は、こうした公的支援策の活用・周知がガイドラインに盛り込まれていないかのように記述していた点が誤りでした。実際には、労使の取り組み事項と公的支援策がセットで紹介されていることが、このガイドラインの実務的な価値を高めているポイントです。
試験対策として押さえるべき全体像
問15のような比較・正誤問題に対応するには、以下の骨格を頭に入れておくと安定します。
- 対象:雇用形態を問わず、企業・労働者すべて
- 基本思想:労働者の「自律」と企業の「成長」を、労使の「協働」によって両立させる
- 構成:「基本的な考え方」「労使が取り組むべき事項(6カテゴリ13項目)」「公的な支援策」の3部
- 重要な担い手:経営者だけでなく、現場のリーダー(管理職)の役割が明確に位置づけられている
- 国の支援:助成金・給付金・スキル標準・検索システムなど、多様な公的支援策と連動している
「誰が」「何を」「どのように」取り組むべきかという骨格を軸に整理しておくと、細部の言い回しを変えたひっかけ選択肢にも対応しやすくなります。



