この記事について

サビカス キャリア・カウンセリング理論(<自己構成>によるライフデザインアプローチ)から引用し自分なりにまとめています。

ナラティブ・カウンセリング

サビカスのナラティブ・カウンセリングは、「語りを通してキャリアの意味を再構成し、次の行動につなげる」というアプローチをします。

このカウンセリングは演劇の3幕劇に似ていて、以下のような3部構成になっています。

第1幕 登場人物の紹介

第2幕 葛藤、真実の理解、新しい理解

第3幕 新しい理解による変化

今回のは、第1幕の登場人物の紹介の部分について深掘りしていきます。

第1幕 登場人物の紹介

キャリアストーリーを語ってもらう
まず、これまでの経験、印象的な出来事、転機、価値観などを自由に語ってもらい、クライエントの物語を集めます。

マイクロナラティブを拾う
個別の小さなエピソードを丁寧に見て、繰り返し出てくる関心、対人関係のパターン、困難への向き合い方を確認します。

対話

クライエント自身のナラティブ・アイデンティティ(物語的自己同一性)への理解は、一方的な「洞察」(カウンセラーの分析やクライエントの突然の気づき)ではなく、カウンセラーとの「対話」を通じて生まれます。

ナラティブ・アイデンティティとは、人生の出来事を個人的な物語としてつなぎ合わせ、自分自身を定義するものです。

洞察と対話の違い

洞察は内省や外部からの指摘で得られる静的な「ひらめき」ですが、対話は動的で共同的なプロセスです。

キャリアストーリー・インタビューでは、クライエントが過去のエピソードを語り、カウンセラーが質問で深掘りすることで、ライフ・テーマや自己構成タイプが共同で再構築されます。

これにより、クライエントは自ら物語を「書き換え」、キャリア・アダプタビリティを高めます。

カウンセリング実践での意義

対話を通じて生まれる理解は、クライエントの主体性を尊重し、関係次元(感情的つながり)を活性化します。

例えば、欲求が生まれた時点から始まるカウンセリング関係が、この対話でナラティブを豊かにし、単なる情報共有を超えた変容を促します。

ナラティブ・アイデンティティの客観的再認識

カウンセラーは、クライエントが語る人生のストーリー(キャリアストーリー)を丁寧に分析し、その中で「時間とともに変化した要素」(成長や適応)と「一貫して変わらない要素」(核心的な価値やテーマ)を象徴する具体的なエピソードを選び出し、クライエントにフィードバックするという意味です。

これにより、クライエント自身が自身のナラティブ・アイデンティティを客観的に再認識し、自己理解を深めます。

変化したものと変わらぬものの抽出

ストーリーから「変化したもの」(例: 職業の転換やスキル向上)はキャリア・アダプタビリティの証拠として、「変わらぬもの」(例: 常に人を助けたいというライフ・テーマ)は自己構成タイプの基盤として抽出されます。

カウンセラーはこれを急がず時間をかけ、インタビューの対話を通じて自然に特定します。

「変化したもの」の意味

  • 環境が変わっても柔軟に対応できた証拠で、「キャリア・アダプタビリティ」(適応力)を示します。
  • 例: 転職を繰り返しても新しい役割を学べたエピソード → 「好奇心や自信が強い」と評価。

「変わらぬもの」の意味

  • 人生を通じて一貫する核心(ライフ・テーマ)で、「自己構成タイプ」(自分をどう見ているか)の土台です。
  • 例: 挫折時も「人を助ける」選択を繰り返す話 → 「支える役割が私のアイデンティティ」とわかる。

クライエントに返す意義

抽出したエピソードをクライエントに「返す」ことで、カウンセラーは単なる聞き手ではなく共同の物語構築者となり、関係次元を強化します。

これが洞察ではなく対話から生まれる理解を促進し、クライエントの欲求を活かしたキャリア変容を支えます。

ライフテーマ

クライエントの複雑さと矛盾に混乱させられるのを防ぐため、事実ではなく事実同士を互いに結びつける接着剤を聞き取らなければならない

サビカス キャリア・カウンセリング理論 P69

クライエントの話は、仕事の成功談と挫折、相反する感情や選択が混在して複雑で矛盾だらけに見えます。

カウンセラーがその表面の「事実」(例: 「転職した」「失敗した」)だけに囚われると混乱しますが、事実をただ列挙するのではなく、事実をつなぐ「接着剤」(クライエント自身の意味づけや一貫したテーマ)を聞き取ることが重要です。

「接着剤」とは何か

事実同士のつながりを生むもの。

つまり、ライフテーマのことです。

例で言うと、「転職した(事実1)」「失敗した(事実2)」を、「人を助けたい一心で挑戦したから(接着剤)」と結びつける。

これがライフ・テーマ(変わらぬ核心)で、混乱を整理し、ストーリーに統一感を与えます。