この記事について
令和6年版 労働経済の分析(人手不足への対応)のまとめです。
毎年、この資料からの設問があるようなので、概要を知っておくのは重要かと思います。
また、資料は概要版と全体版がありますが、この記事は概要版を抜粋してます。
引用元URL 厚生労働省ホームページ「令和6年版 労働経済の分析」
白書の主なポイント
この資料の全体のまとめです。
ホームページから引用しています。
人手不足には、需要増加、労働時間短縮、サービス産業化の進展等が複合的に影響している。今後も人口減少や高齢化が続くことが見込まれる中、2010年代以降の人手不足は「長期かつ粘着的」となっており、さらに、2023年時点で、人手不足が相当に広い範囲の産業・職業で生じている。
こうした人手不足に対応するためには、労働生産性の向上に引き続き取り組んでいくとともに、誰もが活躍できる社会の実現に向けて、女性、高齢者、外国人等の多様な人材が活躍できる職場づくりが重要である。さらに、介護や小売・サービス等の人手不足が深刻な分野においては、離職率を下げることが重要であり、賃金水準をはじめ労働環境、労働条件の整備・改善が求められるほか、人手不足の程度に応じて、ICTの活用や機械化の対応も効果的である。
【2023年の労働経済の推移と特徴】
雇用情勢の動向
- 我が国の雇用情勢は、求人が底堅く推移する中で、改善の動きがみられた。
- 正規雇用労働者は女性を中心に9年連続で増加。
- 非正規雇用労働者は長期的に男女ともに増加傾向。
- 人手不足感は、新型コロナウイルス感染症の拡大前よりも強まった。
- 「宿泊・飲食サービス」において特に人手不足感は強い。
賃金の動向
- 現金給与総額は3年連続で増加
- 民間主要企業の賃上げ率は3.60%、2年連続で前年を上回る。
- 2023年の民間主要企業の賃上げは、賃上げ率は3.60%と、1993年の3.89%に次ぐ30年ぶりの高水準。
- 2024年の賃上げ率は5.10%と1991年の5.66%に次ぐ33年ぶりの高水準。
- 名目賃金は24か月連続の増加となったが、実質賃金は物価上昇により21か月連続で減少。
⇒物価上昇により実質賃金は減少。
※ 実質賃金:前年比▲2.5%(2022年 ▲1.0%、2021年 +0.6%) - 2023年の現金給与総額は3年連続で増加。
【これまでの人手不足局面とその背景】
過去半世紀でみると、3期間で人手不足が生じている。
- 1970年代前半(高度経済成長期末期)
⇒経済成長率が高く超過需要が主因 - 1980年代後半~1990年代前半(バブル経済期)
⇒経済のサービス化とフルタイムの労働時間短縮が寄与
⇒女性を中心にパートタイム労働者が急速に増加。
※1990年代後半~2000年代は長期的に雇用情勢が悪化 - 2010年代以降から現在までの3期間で人手不足が生じている。
⇒経済が回復することで労働力需要が増加。
⇒今後も高齢化は進む見込み。
- 2010年代以降は、人手不足を感じる企業が過去よりも多く、その期間も長期にわたっている。
- 今後も続く高齢化や人口減少には、労働生産性や労働参加率の向上が必要。
2023年と1990年の労働力供給量と総労働時間(就業者数✕労働時間)
- 2023年の総労働時間は就業者数が増加したものの、週当たり労働時間は減少したことにより、1990年の総労働時間より少ない水準
- 2010年代は、企業の欠員率は過去よりは高くはない
- 2023年における求人の充足率はこの半世紀の中で 最も低い水準。
⇒今後想定される人口減少を踏まえれば、過去の局面よりも人手不足は「長期かつ粘着的」 に続く可能性がある。
2010年代以降の人手不足の現状
- 最大限の労働力供給が行われたとして試算しても、2017年以降、総じて労働力供給が労働力需要を下回っている。
- 産業・職業別に、労働力需給ギャップ(労働力供給量の不足)を労働時間でみると、2010年代以降は、「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」等でマイナスがみられる。
- 人手不足の産業・職業の範囲が広がっている。
人手不足と労働移動/賃金の関係
- 人手不足の中、特に中小企業から大企業への労働移動が活発化。
- 日本はアメリカと比べて欠員率に対する賃金の感応度が高く、今後の欠員率の高まりが賃金上昇に繋がっていく可能性がある。
【誰もが活躍できる社会の実現】
潜在労働力の状況について
- 「就業希望はあるが求職していない無業者」460万人と「無業の求職者」は320万人計約800万人。
- 求職していない理由は「病気・けが・高齢のため」、59歳以下の女性では「出産・育児・介護・看護のため」が多い。
- 正規・非正規雇用で労働時間を増やしたい者が約300万人
- 追加就業希望者(現在就いている仕事を続けながら、他の仕事もしたいと思っている者)が約500万人。一方、労働時間を減らしたい者が約750万人。
- 就業希望のない無業者の就業を希望しない理由として最も多いのは、「病気・けが・高齢のため」であり、男女ともに60~69歳の5割弱、70歳以上の8割強。
- また、59歳以下の女性の約4割に当たる約100万人が、「出産・育児・介護・看護・家事のため」に無業となっている
女性の活躍推進
- 我が国の女性の就業率は上昇しているが、パート比率も上昇し、諸外国の中と比較して高い水準。
- 女性の正規雇用比率は若い世代を中心に上昇しており、育児休業を利用した就業継続率とともに上昇。
- 一方、非労働力・失業からの就労参加(再就職等)は非正規雇用が中心。
- 標準労働者(生え抜き)とそれ以外では、40歳以降に賃金差があり、女性の標準労働者割合も低下。
高齢者の活躍推進
- 我が国の高齢者の就業率は、国際的に高い水準。
- 2013年以降、高齢者の就業率は、特に60~64歳、65~69歳において大きく上昇。
- 高齢者については、「就業率の崖」がこれまで60歳であったが、高齢者の雇用確保措置等により、65歳へシフトしている。
- 特に男性において60歳を境に非正規雇用比率が大きく高まる傾向がある。
国際化する我が国の労働市場
- 特定技能で就労する外国人はベトナム人を中心に増加。
- 日本の賃金が伸び悩んできたことで、送出国との賃金差は縮小傾向。
- ハローワークにおける求人の分析によると、外国人求職者の応募を増やす最も大きな要素は募集賃金。
- 120日以上の休日日数も応募を増やす可能性。
【人手不足への対応】
介護分野における人手不足の状況と取組の効果
- 介護分野では、都市部や規模の大きい事業所において人手不足感が強くなっている。
- 入職率は低下傾向で推移しており、人手不足への対応としては、離職率を下げていくことが重要。
人手不足の緩和に効果がある取組
- 介護事業所の平均的な水準以上の賃金水準の確保
- 相談支援の整備
- 定期的な賞与の支給
- ICT機器等の導入
人手が「大いに不足」「不足」している場合に効果的な取組
- 職員の身体的な負担を軽減するような介護福祉機器の導入
※入浴の補助に資するものや、車椅子のまま利用できるリフ トや体重計等は特に効果あり。 - 相談体制の整備
人手が「やや不足」している場合に効果的な取組
- 標準的な介護事業所よりも10%程度高い賃金の支給
- 定期的な賞与の支給
- 事務負担を軽減するようなICT機器等の導入
※給与計算等を一元化するシステムや情報共有システムを活用した他事業所との連携システム等
小売・サービス分野における人手不足の現状と取組の効果
- 小売・サービス分野においては、正社員、パート・アルバイトともに、半数以上の事業所が人手不足。
- 人手適正・過剰事業所と人手不足事業所との間では、入職率よりも離職率に差がある。
- 小売・サービス事業所でも、人手不足解消には、労働条件整備に積極的に取り組み、離職を防止することが重要。
特に正社員の人手不足に効果的な取組
- 一定水準以上の月額賃金の確保
- 研修や労働環境の整備
- 給与制度等の労働条件の整備等
賃金
- 正社員では少なくとも月20万円以上の月額賃金(残業代、 ボーナスを除く)であると、人手確保にプラスの効果。
賃金以外
- 事務やバックヤードでの業務負担を軽減する取組
- 多様な人材が活躍できる環境の整備
- 仕事の 内容やスキルを評価して給料に反映させる仕組みの整備が、正社員の人手不足緩和に効果がある可能性。
- 月20時間以上の時間外労働は、人手確保にマイナスの効果