第32回 国家資格キャリアコンサルタント試験 学科試験 解答解説(問6〜10)
この記事について
令和8年7月実施の「第32回 国家資格キャリアコンサルタント試験」学科試験について、問6〜10を、初めてキャリア理論を学ぶ人向けに解説します。
この範囲では、似た表現の選択肢を、**「誰の理論か」「キャリアをどのように捉えるか」**で区別する問題が中心です。まず太字の要点を押さえ、そのあとで各選択肢の理由を確認してください。問題文は公式の過去問題をご確認ください。
解説には誤りが含まれる可能性があります。学習時には、一次資料や原典もあわせて確認してください。
問6
正解:2
テーマ:特性因子論
まず押さえること
特性因子論は、**「自分に合う仕事を探す」**ための基本的な考え方です。
- 個人側の「特性」:能力、興味、価値観、性格など
- 職業側の「因子」:その仕事で必要な能力、仕事の内容、条件など
この二つを調べて照らし合わせ、合う仕事を選ぶことを重視します。パーソンズが原型を示し、ウィリアムソンがカウンセリングに応用しました。
選択肢1:不適切
「生涯に複数の役割をもち、家庭・学校・職場などで演じる」という考え方は、スーパーのライフ・キャリア・レインボーです。特性と職業を照合する特性因子論とは異なります。
選択肢2:適切
特性因子論の中心は、個人の特性と職業に必要な条件を、できるだけ客観的に把握してマッチングさせることです。たとえば「人と話すことが得意で、対人支援に関心がある人」と「対人対応が多い仕事」を結びつけて考えます。
選択肢3:不適切
キャリアを「その人が自分の人生に与える物語」として捉え、本人がどのような主人公として生きたいかに注目するのは、コクランなどのナラティブ・アプローチです。客観的な適性検査だけで職業を決める考え方ではありません。
選択肢4:不適切
学習経験や思い込みが職業選択に影響し、新しい経験によって考え方を変えられると考えるのは、クランボルツの社会的学習理論です。
問7
正解:4
テーマ:ヒルトンの意思決定モデル
まず押さえること
ヒルトンは、職業選択を「迷いを解消していく過程」として説明しました。もとになったのはフェスティンガーの認知的不協和理論です。
認知的不協和とは、自分の考えと新しく得た情報が食い違い、心の中に違和感が生じる状態です。たとえば「この仕事に向いているはずだ」と思っていたのに、仕事内容を調べると望む働き方と合わないと分かった場合です。人は情報や考え方を見直し、その違和感を小さくしようとします。
選択肢1:不適切
職業選択を、時間をかけて進むプロセスであり、選択には非可逆性(一度選ぶと完全には元に戻せない面)があり、現実との妥協も起こるものと示したのは、ギンズバーグの初期の職業選択発達理論です。
選択肢2:不適切
「構築」「共構築」「脱構築」は、本人と支援者が対話を通して意味や物語をつくり直すナラティブ・アプローチに関係する言葉です。ヒルトンのモデルの用語ではありません。
選択肢3:不適切
「予期システム・価値システム・基準システム」は、ジェラットの前期理論である連続的意思決定モデルの構成要素です。選択肢ごとの結果を予測し、価値を比べ、基準に照らして選ぶ考え方です。
選択肢4:適切
ヒルトンは、もともとの前提と外部から得た情報の間に生じる不協和を解消していく過程として、職業選択を捉えました。新しい情報を集めたり、自分の前提を見直したりしながら、ひとまずの計画をつくっていきます。
問8
正解:4
テーマ:サビカスのキャリア構築理論
まず押さえること
サビカスのキャリア構築理論は、キャリアを「あらかじめ決まった正解を見つけるもの」ではなく、本人が経験に意味を与えながらつくっていくものと捉えます。土台にあるのは社会構成主義です。
つまり、同じ転職経験でも、「失敗だった」とだけ捉えるか、「自分に合う働き方を知る転機だった」と捉えるかによって、その後のキャリアの物語は変わり得る、という見方です。
選択肢1:不適切
サビカスが示したキャリア・アダプタビリティ(変化に対応し、自分のキャリアを形づくる力)の4次元は、関心・統制・好奇心・自信です。「適性」は含まれません。
- 関心:自分の将来に目を向け、備えようとすること
- 統制:将来を自分の責任で形づくろうとすること
- 好奇心:自分や仕事の可能性を探ること
- 自信:課題を乗り越えられると信じること
選択肢2:不適切
状況(Situation)、自己(Self)、支援(Support)、戦略(Strategies)の4Sは、シュロスバーグの枠組みです。転職、退職、結婚などの転機に直面した人が、利用できる資源を整理するために用います。
選択肢3:不適切
個人の興味・能力と、職業側の要件を客観的に照合することを重視するのは、特性因子論です。サビカスは、本人が経験にどのような意味を見いだすかをより重視します。
選択肢4:適切
サビカスの理論は社会構成主義を基盤とし、キャリアを本人が主観的に構築していくものと捉えます。経験や職業行動をどう意味づけるかに注目する説明なので、適切です。
問9
正解:2
テーマ:クランボルツの社会的学習理論・計画された偶発性理論
まず押さえること
クランボルツは、キャリアは計画どおりに決まるだけではなく、これまでの学習経験や偶然の出来事にも大きく影響されると考えました。
社会的学習理論では、キャリア意思決定に影響する要因を次の4つに整理します。
- 遺伝的特性・特別な能力
- 環境的状況・環境的出来事
- 学習経験
- 課題接近スキル(課題に向き合い、解決しようとする方法)
選択肢1:不適切
選択肢の結果や可能性を予測し、何を大切にしたいかを評価しながら合理的に決める説明は、ジェラットの連続的意思決定モデルに近いものです。クランボルツは、予測しきれない学習経験や偶然も重視します。
選択肢2:適切
クランボルツはキャリア形成を学習経験の結果と考え、上の4要因がキャリア意思決定に影響すると整理しました。仕事で褒められた経験、家族や地域から受ける影響、偶然参加した講座なども、選択に影響し得ます。
選択肢3:不適切
社会的学習理論が重視する学習は、自分で実際に体験することだけではありません。他者の行動とその結果を見て学ぶ代理経験も含まれます。たとえば、先輩の働き方を見て職業への関心が高まることです。
選択肢4:不適切
計画された偶発性理論では、予想外の出来事を避けるのではなく、キャリアの機会として生かすことを重視します。そのために、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心という5つの態度を発揮し、偶然の機会を生み出してつかむことが勧められます。
問10
正解:1
テーマ:カウンセリングに関する理論
まず押さえること
この問題は、悩みの原因や支援の方法を、各アプローチがどう考えるかで区別します。
| アプローチ | 注目する点 |
|---|---|
| 精神力動論的アプローチ | 過去の経験、無意識の葛藤 |
| 人間性アプローチ | 本人の成長する力、自己理解 |
| 論理療法 | 非合理的な信念 |
| 認知的・行動的アプローチ | 考え方や行動の学習・修正 |
選択肢1:適切
精神力動論的アプローチでは、現在の悩みや症状の背景に、過去の経験、トラウマ、無意識の葛藤、抑圧された感情などがあると考えます。代表例はフロイトの精神分析療法です。
選択肢2:不適切
自己実現を目指し、自分の感情や内なる声に気づきながら生き方を学ぶという考え方は、人間性アプローチです。代表例はロジャーズの来談者中心療法で、相談者自身がもつ成長する力を大切にします。
選択肢3:不適切
「必ず成功しなければならない」のような非現実的・極端な考え方(非合理的信念)を、現実的で柔軟な考え方に見直し、苦痛な感情を和らげるのは、エリスの論理療法です。
選択肢4:不適切
より役に立つ考え方や行動を身につけられるよう支援するのは、認知的・行動的アプローチです。代表例には行動療法、認知療法、認知行動療法があります。過去の無意識の葛藤を中心に扱う精神力動論的アプローチとは区別します。
参考資料
- 第32回 学科試験問題・正答等(キャリアコンサルティング協議会)
- 職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(JILPT)
- 木村周『キャリアコンサルティング 理論と実際』
- 渡辺三枝子編著『新版 キャリアの心理学』
2級キャリアコンサルティング技能検定を軸に、過去問の出題傾向を分析したオリジナル予想問題50問を作成しました。
国家資格キャリアコンサルタント試験とも出題範囲が重なる部分が多いため、国家試験の学科対策にも活用できます。
過去問を一通り解き終え、初見問題で実力を確認したい方はぜひご活用ください。



