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「利益の源泉」を探れ

この記事について

「ストーリーとしての競争戦略」第2章の要約です。

第1章のキーワードは「利益」でした。

第2章はその利益がどこから湧くかが深掘りされ章になります。

価格競争が起きている市場は末期

市場では、利益を得ようとする企業が互いに「違い」を作り出し、競争しています。

作られた「違い」は、他社に真似され、やがて「違い」が「違い」ではなくなります。

「違い」を作れなくなると、最終的に価格で「違い」を無理やり作り出し、価格競争へと陥ります。

この論理から考えられることは、この市場では他社との違いを価格以外で出せなくなった成熟した市場ということになり、儲けにくい市場ということになります。

「違い」こそ利益の源泉

ここからわかるように、利益の源泉となるものが「違い」であることがわかります。

競争がある場所では「違い」が消される圧力がかかります。その状況の中で、どうにかして「違い」を作り利益の源泉を確保、維持するという試みを競争戦略と言います。

2つの違い

利益の源泉である違いには2つの種類があります。

「程度の違い」と「種類の違い」です。

程度の違い 

ある基準があって、その尺度に対して良い悪いという判定ができる違いのことです。

例えば、身長などが程度の違いにあたります。(180cmは身長が高いのように)

この尺度のあるものに競争優位性の源泉を求める戦略をOC(Organizational Capability)と呼びます。

これは、「組織能力」に着目した戦略で、自社に何があるか、それをどう使うかという部分に着目し、それを「違い」へと昇華させる戦略です。

種類の違い

程度の違いとは違い、種類の違いには、基準や尺度が存在しない違いです。

例えば、性別や職業などです。

この種類の違いに競争優位性の源泉を求める戦略をSP(Strategic Positioning)と呼びます。

これは、どこで戦うかという、「ポジショニング」を重視した概念です。

その立ち位置に「違い」を作る戦略となります。

SP戦略【戦略的ポジションング】

他社と違った行動をすることで違いを生み出す戦略です。

競争環境を見極め、自分の立ち位置を作り、その位置に違いを見出します。

この戦略において、他社と比べて良い悪いという軸ではなく、他社との「違い」だけに焦点を当てます。

「ストーリーとしての競争戦略」の中では、レストランの独自メニューの作成をSP戦略の例として出されていました。とてもわかりやすい例えだと思いました。

この他社との明確な違いを生み出すためには、「何をやるか」より「何をやらないか」を決めることが重要で、「選択と集中」という概念が基本にあります。

どこにポジションどりをするかを決めたら、そこに一気に投資する。他のことは二の次。とにかく、ここに一点集中という戦略です。

このような戦略なので、最初のポジション取りがとても重要となり、その采配を決める経営者のマネジメント能力に影響を受ける戦略とも言えます。

また、「違い」を生むポジションが見つかれば、そこに投資し、比較的早期にその戦略の効果が出るのもこの戦略のポイントでもあります。

OC戦略【組織能力】

S P戦略が他社と違ったことをすることに焦点を当てていましたが、OC戦略は他社と違うものを持つということに焦点を当てた戦略です。

企業内部に独自の能力を構築し、それを競争優位の源泉とします。

企業にはたくさんの経営資源を持っていますが、この経営資源の中でも、組織特殊性(他者が簡単には真似できず、市場でも容易には買えない)を満たすものをOCと呼びます。

この戦略の基礎は、模倣の難しさにあります。

S P戦略にはマネジメント能力が大きく影響を与えますが、OC戦略は、下記に記したように、因果関係が不明確であることが多いため、SP戦略に比べるとマネジメント能力の影響は大きくありません。

この模倣の困難さは、因果関係の不明確さ、時間の経過とともに成熟、という要素があります。

因果関係の不明確さ

組織能力(OC)は多くの要素が複雑に絡み合って形成されています。個々の要素がどのように相互作用し、全体としての成果に結びついているかを明確に特定することが難しいのです。

また、OCは日常的な「仕事の進め方」に深く埋め込まれているため、外部からその実態を把握することが困難です。多くの場合、組織のメンバー自身も明確に説明できないことがあります。

さらに、OCは組織の歴史的な発展過程(経路依存性)と密接に関連しています。過去の経験や決定が現在の能力に影響を与えているため、単純な因果関係では説明できない場合が多いです。

時間の経過とともに成熟

組織能力は一朝一夕には構築できません。日々の業務や経験を通じて、徐々に蓄積されていきます。

時間の経過とともに、組織は試行錯誤を重ね、より効率的な方法を学習していきます。これにより、能力が洗練されていきます。

さらに、明文化されていない知識や技能(暗黙知)が、時間とともに組織内に蓄積されていきます。これは他社が簡単に模倣できない強みとなります。

どちらが優れているというものではない

SPの方が優れているとか、OCが劣っているというものではありません。

どちらにもメリット・デメリットがあるので、その状況に適した戦略を組み合わすことが重要です。

SPは企業の戦略的な方向性を示します。つまり、企業がどの市場セグメントを狙うか、どのような製品やサービスを提供するか、どのような顧客ニーズに応えるかなど、戦略の大きな方向性を決定します。

一方、OCは企業がその戦略を実行する能力を表します。つまり、選択した方向性(SP)に対して、どれだけ効果的に戦略を実行できるか、どれだけ強力な組織能力を持っているかを示します。

まとめ

今回は、「ストーリーとしての競争戦略」の第2章をまとめました。

自分は経営者ではないのですが、自分の人生の戦略立案としてとても役にたつ知識ばかりだと思います。