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この記事について
キャリアコンサルタントの学科試験には、数多くの理論とその提唱者が出題されています。
この記事では、動機づけ理論とその提唱者をまとめました。
クレイトン・アルダファー
1972年に提唱したERG理論は、マズローの欲求階層説を修正・発展させた動機づけ理論です。
この理論は、マズローの5段階説よりも柔軟で、現実の人間行動をより適切に説明できるとされており、人間の欲求を以下の3つのカテゴリーに分類しています。
- 存在欲求(Existence):生存や安全のための基本的な物理的・生理的欲求。
- 関係欲求(Relatedness):他者との良好な人間関係を求める欲求。
- 成長欲求(Growth):自己実現に向けた成長を求める欲求。
ERG理論の主な特徴
- 複数の欲求が同時に存在し得る。
- 欲求の順序は人によって異なる可能性がある。
- フラストレーション・リグレッション原則:上位の欲求が満たされないとき、下位の欲求が高まる。
ERG理論は、組織行動や人事管理の分野で広く応用されており、従業員のモチベーション向上や職場環境の改善に活用されています。
デイビッド・マクレランド
1976年に三欲求理論(達成動機理論)を提唱しました。
この理論は、人間の行動を動機づける主要な3つの欲求について説明しています:
達成欲求(need for achievement)
- 何かを自分で成し遂げたいという欲求
- 適度なリスクを好み、早期のフィードバックを求める
- 成功確率が50%程度の時に最も強く動機づけられる
権力欲求(need for power)
- 他者に影響を与え、コントロールしたいという欲求
- 責任を与えられることを好む
- 競争や地位を求める傾向がある
親和欲求(need for affiliation)
- 他者と良好な関係を築きたいという欲求
- 協力や相互理解を好む
- 競争よりも協調を望む
マクレランドの理論の特徴
- これらの欲求は後天的に獲得され、個人によって強さが異なる
- 各欲求の強さによって、仕事への適性が決まるとされる
- マズローの欲求階層説の上位3つ(自己実現欲求、承認欲求、社会的欲求)に着目した理論とも言える
この理論は、従業員のモチベーション理解や人材配置に活用され、組織行動学や人事管理の分野で重要な役割を果たしています。
フレデリック・ハーズバーグ
1959年に提唱した「二要因理論」(動機づけ・衛生理論)は、仕事に対する満足と不満足の要因を分析した理論です。この理論の主な特徴は以下の通りです。
二つの要因
- 動機づけ要因:仕事への満足を引き起こす要因
- 衛生要因:仕事への不満を引き起こす要因
動機づけ要因
- 達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長の可能性
- これらの要因が満たされると満足度が上がる
- 満たされなくても必ずしも不満にはつながらない
衛生要因
- 会社の方針と管理、監督、仕事上の人間関係、職場環境、安全保障、給与
- これらの要因が満たされないと不満が生じる
- 満たされても必ずしも満足にはつながらない
理論の特徴
- 満足と不満足は別々の要因によって引き起こされる
- 衛生要因を改善しても、必ずしも従業員の満足度は上がらない
実践的応用
- 従業員のモチベーション向上には、動機づけ要因と衛生要因の両方に注目する必要がある
- 職場の課題発見や解決に活用できる
- この理論は、19世紀の産業化が進む社会背景の中で、個人の生産効率向上に注目が集まる中で提唱されました。
現代の人材育成や組織マネジメントにおいても重要な理論として活用されています。
エドワード・L・デシ
内発的動機づけに関する研究で知られる心理学者です。
彼の主要な理論と貢献は以下の通りです。
内発的動機づけ理論
人間の動機づけを「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」に分類しました。
- 外発的動機づけ:外部からの報酬や罰によって行動が促される
- 内発的動機づけ:活動自体の楽しさや満足感から生じる自発的な動機づけ
内発的動機づけが創造性や責任感の点で外発的動機づけより優れていることを実証しました。
アンダーマイニング効果
1969年に行った実験で、外的報酬が内発的動機づけを低下させる可能性があることを示しました。
この現象は「アンダーマイニング効果」と呼ばれ、当時の行動主義心理学の定説に反する発見として注目を集めました。
自己決定理論
自律的な決定がモチベーション向上につながるという「自己決定理論」を提唱しました。
この理論では、人間の基本的な心理的欲求として以下の3つを挙げています。
- 自律性の欲求
- 有能感の欲求
- 関係性の欲求
これらの欲求が満たされることで、内発的動機づけが高まるとされています。
動機づけの連続体
自己決定理論では、動機づけを以下のように連続体として捉えています。
- 無動機
- 外発的動機づけ(外的調整、取り入れ的調整、同一化的調整、統合的調整)
- 内発的動機づけ
この連続体は、自律性の程度に応じて整理されており、内発的動機づけに近づくほど自律性が高くなります。
デシの理論は、教育や組織マネジメントなど様々な分野で応用され、人々のモチベーション向上や個人の成長を促進する方法の理解に貢献しています。