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【キャリコン】各理論のまとめ  #2(ハンセン、ホール、ヒルトン、グランボルツ、バンデューラ)

この記事について

キャリアコンサルタントの学科試験には、数多くの理論とその提唱者が出題されています。

かなりの量の理論を覚えなければいけないので、備忘記録として記事にします。

提唱者と理論、あとは、提唱者を連想するためのキーワードなどを書いていきます。

今回は、ハンセン、ホール、ヒルトン、グランボルツ、バンデューラの理論をまとめます。

ハンセン 【統合的人生設計】

現代社会の複雑性や多様性を反映しており、個人のキャリア発達を包括的に捉える枠組みを提供している。=統合的人生設計(Integrative Life Planning)」

統合的生涯設計では、キャリアを仕事だけでなく、家庭、社会、人生における役割全てを含む包括的な概念として捉える。

ハンセンはこれを「ライフキャリア」と呼び、人生全体を統合的に考えることを重視した。

理論の特徴

  • キャリアを「ライフキャリア」として捉え、仕事だけでなく人生全体を包括的に考える
  • 人生の役割をキルト(パッチワーク)に例え、様々な要素が組み合わさって全体を形成すると考える
  • キャリアは直線的ではなく螺旋的に発達するとしている
  • ジェンダーやダイバーシティの視点を重視している
  • 精神性や人生の意味を重要な要素として位置づけている

4L

ハンセンは人生の役割を4つの要素(4L)に分類した。

  1. 労働(Labor)
  2. 愛(Love)
  3. 学習(Learning)
  4. 余暇(Leisure)

これらの要素が統合されることで、意味のある全体的な人生が形成されるとしている。

統合的ライフ・プランニングの6つの重要課題

統合的生涯設計では、以下の6つの重要課題が提示されている。

  1. グローバルな視点から仕事を探す:社会や世界の問題解決に貢献する仕事を選ぶ。
  2. 人生を意味ある全体像の中に織り込む:職業選択を人生の複数の役割と組み合わせて考える。
  3. 家庭と仕事を結びつける:男女が平等なパートナーとして協力し、家庭と仕事のバランスを取る。
  4. 多様性と包括性を重んじる:人種、性別、年齢、障害、信念など、様々な違いを認識し尊重する。
  5. 個人の転機と組織の変革に対処する:環境変化に適応する能力を身につける。
  6. 仕事に精神的な意味を見出す:内面的意義や人生の目的を探求する。

キーワード

  • 統合的人生設計
  • キルト
  • 人生と仕事の統合
  • 人生の4つの要素(愛・労働・学習・余暇)
  • 6つの重要課題

ホール 【プロティアン・キャリア】

プロティアン・キャリア 個人が自律的にキャリアを管理し、変化する環境に柔軟に適応することの重要性を強調。

キャリアを営むその人の欲求に見合うようにその都度方向転換されるもの。

移り変わる環境に対して、自己志向的に変幻自在に対応。

現代の動的なキャリア環境において必要とされる適応力と自己主導性を反映。

ギリシャ神話のプロテウスから名付けられている。=「変幻自在」を意味

理論の特徴

  1. 個人主導: キャリアは組織ではなく個人によって自律的に形成・調整される。
  2. 価値観重視: 「自分が満足できるか」「自分がしたいことは何か」という個人の欲求・意思を最も重視する。
  3. 変幻自在: 環境の変化に柔軟に対応し、継続的に学習・適応する。
  4. 心理的成功: 外部からの評価ではなく、個人の内面的な満足感や達成感を重視する。

ホールによるキャリアの定義

  • 生涯にわたる仕事に関する経験や活動の連続
  • 昇進や昇格だけでなく、個人的に知覚された態度や行動の連続
  • 主観的側面(価値観、動機)と客観的側面(観察可能な選択行動)の両方を考慮する必要がある

伝統的キャリアとの比較

  • 主体者: 個人 vs 組織
  • 核となる価値観: 自由、成長 vs 昇進、権力
  • 重要なパフォーマンス側面: 心理的成功 vs 地位、給料
  • 重要な態度的側面: 仕事満足感、専門的コミットメント vs 組織コミットメント

キーワード

  • プロティアン
  • 価値観の重視
  • 変幻自在

ヒルトン 【ヒルトンの意思決定モデル】

心理学の認知的不協和理論を応用したキャリア意思決定理論。

ジェラットやティードマンの理論と共に、意思決定のプロセスを重視する理論の一つとして知られてい流。

理論の特徴

ヒルトンは、意思決定を個人の内的な前提と外部からの情報との間に生じる不協和(不一致)を解消するプロセスとして捉えている。

  • 意思決定を機械的なプロセスとして捉えている
  • 個人の内的な認知過程に焦点を当てている
  • 不協和の解消を通じて、より適切な意思決定が可能になると考えている

モデルの3つの主要要素

  1. 前提:
    • 個人が持つ自己概念、希望、期待、職業観など
  2. 不協和:
    • 前提と外界からの情報との間に生じる矛盾や不一致
  3. 再調整:
    • 不協和を解消するための情報収集や前提の再検討

意思決定プロセス

  1. 個人は自己概念や職業観などの前提を持っている。
  2. 外部からの情報がこれらの前提と不一致を起こすと、不協和が生じる。
  3. 不協和を解消するため、個人は以下の行動を取る。
    • 新たな情報を収集する
    • 既存の前提を再検討する
  4. 不協和が解消されるまで、このプロセスが繰り返される。
  5. 不協和が十分に低下すると、意思決定が行われる。

再調整

不協和を解消するために、個人は自身の前提を再調整したり、新しい情報を収集したりする。

キーワード

  • 認知的不協和理論

クランボルツ 【社会的学習理論・計画的偶発性理論】

社会的学習理論(SLTCDM)

キャリア選択がどのように行われるかを説明したもの。「なぜ特定の職業を選択するのか」「なぜ職業を変えるのか」「いろいろな職業に対しての好みがあるのはなぜか」といった質問に答えるもの。

人間は学習し続ける存在であり、キャリア選択は学習の結果である。

直接経験だけでなく、他者の行動の観察や模倣によっても学習が成立する。

バンデューラの社会的学習理論を基礎におく。

キャリア形成に影響を与える4つの要因

  1. 遺伝的特性・特別な能力
  2. 環境条件や出来事
  3. 学習経験
  4. 課題へのアプローチスキル

これらの要因が相互に影響し合い、個人の信念、スキル、行動を形成する。

信念については、自分自身に関する信念と仕事に関する信念の2つが存在するとし、新しい学習経験の妨げとなっている信念を測定するために、CBIを作成した。

計画的偶発性理論(ハップンスタンス・ラーニング・セオリー)

キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。

偶然の出来事をチャンスに変える5つのスキル

  • 好奇心
  • 持続性
  • 柔軟性
  • 楽観性
  • 冒険心(リスクテーキング)

これらのスキルを活用して「プランド・ハップンスタンス」(計画された偶発性)を作り出すことが、個人のキャリア発達と人生の質を向上させると主張。

「未確定」は、新しい学習をおたらすために必要な望ましいもの。

予期せぬ出来事がキャリアの機会に結びつく。

偶発的な出来事を自らの主体性や努力によってキャリアに最大限に活用していく。

キャラカウンセリング理論における4つの命題

クランボルツのキャリアカウンセリング理論における4つの命題は以下の通りです

  1. キャリアの選択は単なる一回限りの出来事ではなく、生涯にわたる学習プロセスである。
  2. キャリア・アセスメントは個人の特性と職業の特性をマッチングするためではなく、学習を促すために用いられる。
  3. クライエントの行動と探索的スキルが、キャリアの成功につながる。
  4. カウンセラーの主な役割は、クライエントの学習を促進することである。

キーワード

  • 社会的学習理論
  • 4つの要因(遺伝・環境・経験・課題)
  • 5つのスキル(好奇心・持続性・楽観性・柔軟性・冒険心)
  • 計画的偶発性理論
  • 未確定
  • 人間は学習し続ける存在

バンデューラ 【社会的学習理論】

社会的学習理論は、個人が環境と相互作用しながら学習し、キャリアを形成していく過程を説明する重要な理論。

理論の基本概念

社会的学習理論は、人間の行動を包括的に説明しようとする理論。

  • 人間は主体的に認知を変えることができる
  • 認知の変化によって、より良いキャリア選択や高い成果を出せる

学習のプロセス

2つの主要な学習プロセス

  • 直接経験による学習
  • 観察学習(モデリング)

特に観察学習を重視しており、これは従来の理論にはない特徴。

モデリング(観察学習)の4つの過程

バンデューラは、モデリングの過程

  1. 注意過程 無数にある情報のうち、どの情報に注目し選びとるかという過程
  2. 保持過程 注意過程で選択されたモデリング刺激が象徴的な形で記憶に留められる過程
  3. 運動再生過程 保持過程で記憶に留められた象徴的表蔵を実際の行動に変換する過程
  4. 動機づけ過程 そこまでの過程で習得した行動を実際に遂行するかどうかを決定する過程

自己効力感の重要性

社会的学習理論において、自己効力感は最も重要な概念の一つ。

自己効力感とは、自分がある状況で必要な行動を遂行できるという信念。

自己効力感は以下の3つの次元で変化

  1. 大きさ:難易度順の課題を解決できる能力
  2. 強さ:課題を確実にできそうという確信の程度
  3. 一般性:自己効力がどの程度一般化できているか

自己効力感を高める4つの方法

  1. 遂行行動の達成:自分の力で達成した経験
  2. 代理的経験:他人の成功を観察し、自分にもできそうだと感じること
  3. 情動的喚起:身体や心の中で起きた生理的・感情的な変化
  4. 言語的説得:他者からの励ましや褒め言葉

キーワード

  • 自己効力感
  • グランボルツ
  • モデリング(観察的学習)