メラニー・クラインの理論は、精神分析における対象関係論の基礎を築いたもので、特に幼児期の心の発達と母子関係を中心にしています。
主な内容
妄想-分裂ポジション(パラノイド-スキゾイド・ポジション)
乳児期初期に現れ、子どもは「良い母」と「悪い母」など極端に分裂されたイメージで人や物事を捉えます。強い不安や攻撃性、原始的な防衛機制(分裂、投影、投影同一化)が中心です。
抑うつポジション
発達が進むにつれ、自分が愛する対象に攻撃的感情を持ったことに気づき、罪悪感や悲哀、喪失感を感じます。ここでは対象(母親など)が統合され、「良い面も悪い面も持つ一人の人物」として認識できるようになります。
クラインはフロイトが重視した父親やエディプス・コンプレックスよりも、母親(特に乳房)との関係を中心に据えました。母子関係が人格形成に大きく影響すると考えたのが、クライン派の核です。
投影同一化
自分の内面の不安・欲望を他者に「投げ込む」ことで、他者の反応を通じて自己を確かめる心的メカニズムです。人間関係や治療場面で重要視されます。
クラインは幼児期から精神分析的治療が可能とし、子どもの遊びに着目した分析技法も開発しました。
クライン理論の意義
- 心の発達段階の理解に革新をもたらし、現代の臨床・発達心理学や児童心理療法に広く影響を与えました。
- 対象関係論は、個人の人間関係やアイデンティティ形成の核心となる理論的枠組みです。