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この記事について
キャリアコンサルタントに出てくる理論家の1人ワッツのキャリアガイダンスの4つのイデオロギーについてまとめます。
スーパーやシャインのような頻出理論家ではないですが、キャリアガイダンスの変遷を整理するのに良いと思いましたので個別に記事にしました。
情報元は「キャリアコンサルティング理論と実践(6訂版) 木村周・下村英雄著」から頻用しています。
トニー・ワッツ(Tony Watts)
キャリアガイダンスとキャリア支援の分野で著名な理論家。
社会正義に基づくキャリア支援のパイオニア。
「キャリアガイダンスの4つのイデオロギー」を提唱。
キャリア支援を「社会に焦点がある/個人に焦点がある」と「変革を目指す/現状維持を目指す」の二軸で分類。
キャリアガイダンス4つのイデオロギー
社会に焦点 | 個人に焦点 | |
変革 | ラディカル (社会変革) | プログレッシブ (個人的変化) |
現状維持 | コンサバティブ (社会統制) | リベラル (非指示的) |
①コンサバティブ(最も古典的)→②リベラル→③プログレッシブ→ラディカル
①から④の流れが、歴史的なイデオロギーの流れ。
コンサバティブ(社会統制)
社会に焦点✖️現状維持
社会を中心に置いた歴史的に最も古いイデオロギー。
社会のニーズを満たすために適職に嵌め込んでいく、適材適所論の考え方。
パーソンズの特定因子理論がここに該当するかと思います。
リベラル(非指示的)
現状維持✖️個人に焦点
コンサバティブの次にリベラルが登場する。
社会中心の考え方から個人に焦点があたり、個人は自分の可能性を追求するべきという、個人の自由を重視するイデオロギー。
スーパーに代表されるキャリア発達理論がこれに該当する。
プログレッシブ(個人的変化)
個人に焦点✖️変革
個人に焦点を当てているため、リベラルと似ているが、変革を求めている部分に違いがある。
人間はどこまでも成長していけるという考え方。
現状に満足せず、個人の能力を高めることを求めるイデオロギー。
自己啓発が流行っている現代にも当てはまり、多くの人がここに該当するのではないでしょうか。
ただし、この考え方は、自己責任でなんでも片付けられてしまう、新自由主義的として批判もある。
新自由主義は「自己責任」を強調することで、個人の自由と競争を促進します。しかし、その一方で、社会的弱者への支援削減や連帯意識の低下といった負の側面も招いています。
ラディカル(社会変革)
社会に焦点✖️変革
この領域は、提唱者であるワッツが重視しているイデオロギー。
プログレッシブは個人が焦点であったが、変革の焦点を社会にに当て、社会そのものをどこまでも成長させようとする考えかです。
まとめ
現在の人々の考え方の主流は、③プログレッシブ的であると言えるのではないでしょうか。
本屋には自己啓発本が並び、自己の能力を上げることに焦点が当たっているように思います。
自分もその一人です。
それでよいと思っていました。
ただ、指摘があったとおり、それは「私一人」に焦点が当たっていて、自分の周辺環境が良くなることについての考えは皆無でした。
「私一人」だけの幸せの追求は、本質的な幸せに到達できないと考えると、焦点は個人ではなく、社会に向けるべきなのだろうと考えました。
社会の変革には個人個人の能力の向上が必要ですが、個人の能力の向上を目的とせず、その能力を使い、どのように社会の変革に自分の能力を還元するのかを考えて生きるべきなんだなと、考えさせられました。