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この記事について
キャリアコンサルタントの学科試験には、数多くの理論とその提唱者が出題されています。
かなりの量の理論を覚えなければいけないので、備忘記録として記事にします。
提唱者と理論、あとは、提唱者を連想するためのキーワードなどを書いていきます。
今回は、ロジャーズ、ホランド、ジェラット、レビンソンの理論をまとめます。
ロジャーズ
人間中心の心理療法
カール・ロジャーズは、20世紀を代表する心理学者の一人で、その人間中心の心理療法は、現代のカウンセリングや対人関係の基礎となっています。
ロジャーズの理論は、人間中心の心理療法の基礎であり、現代のカウンセリングや対人関係の考え方にも大きな影響を与えています。
無条件の肯定的配慮、共感的理解、自己一致という3つの原則を心に留め、自分自身と他者との関係を築いていくことが、より良い人間関係を築くための第一歩と言えるでしょう。
ロジャーズの理論の核心
ロジャーズの理論は、人間は本来、成長し、自己実現をしようとする存在であるという考えに基づいています。そして、その成長を妨げるのは、他者からの評価や期待といった外的要因、そして自己に対する否定的な感情であると考えていました。
ロジャーズの3原則
ロジャーズの心理療法は、以下の3つの原則に基づいています。
- 無条件の肯定的配慮:
- 相手をありのままに受け入れること。
- 価値判断をせず、相手の感情や考えを尊重すること。
- 共感的理解:
- 相手の立場に立って、相手の気持ちを深く理解しようとすること。
- 相手の言葉だけでなく、非言語的なサインにも注意を払い、共感の気持ちを示すこと。
- 自己一致:
- 言葉と態度が一致していること。
- 相手に誠実に向き合い、偽りのない自分を見せること。
これらの原則を実践することで、セラピストはクライアントに対して安全な空間を提供し、クライアントが自己の内面を探求し、自己成長を促すことができるように支援します。
キーワード
・3原則(無条件の肯定的配慮、共感的理解、自己一致)
ホランド
ジョン・L・ホランドの理論は、個人のパーソナリティと職業環境の相互作用に基づくキャリア選択モデルです。
ホランドの理論は、キャリア選択に迷っている人々に貴重な示唆を与え、キャリアカウンセリングや職業指導の分野で広く活用されています。
理論の特徴
ホランドの理論は、「差異心理学の興味の測定」と「パーソナリティの類型論」という2つの心理学分野をベースにしています。
彼の軍隊での入隊面接官時代や、大学生、身体障がい者、精神障がい者とのカウンセリング経験から、人々の興味や特性、行動が数種の枠で大別できるという確信を得ました。
この理論は、個人が自己のパーソナリティタイプを理解し、それに適した職業環境を選択することで、職業満足度と安定性が高まるという考えに基づいています。
6つのパーソナリティタイプ(RIASEC)
ホランドは人間のパーソナリティと職業環境を6つのタイプに分類しました
- 現実的 (Realistic): 物、道具、機械、動物を扱うことを好む。地に足がついた実践的な性格。
- 研究的 (Investigative): 生物学、物理学、数学、化学、医学などの分野に興味がある。学究肌で分析的。
- 芸術的 (Artistic): 言語、美術、音楽などの創造的な活動を好む。自由な発想を重視。
- 社会的 (Social): 人に伝える、教える、手助けすることを好む。友好的で対人関係を重視。
- 企業的 (Enterprising): リーダーシップを発揮し、他人に影響を与えることを好む。野心的で外交的。
- 慣習的 (Conventional): 情報を秩序立てて整理することを好む。責任感があり、緻密で信頼できる。
理論の主要概念
- スリー・レター・コード
- 個人の性格を上位3つのタイプの組み合わせで表現する。
- 例:SIA(社会的、研究的、芸術的)
- 一貫性
- 六角形モデルで隣接するタイプは類似性が高く、対角にあるタイプは最も異なる。
- 例:RとIは類似性が高いが、RとSは最も異なる。
- 分化
- 最も高いタイプと最も低いタイプの差を指す。
- 分化が大きいほど、個人の興味や能力が明確に現れる。
- 適合性
- 個人のパーソナリティタイプと職業環境の一致度。
- 適合性が高いほど、職業満足度や安定性が高まると考えられる。
理論の応用
- VPI職業興味検査の開発
- 個人の職業興味を測定するツールとして広く使用されている。
- VPIは6つの興味領域と5つの行動傾向尺度(自己統制・男性男女・地位志向・稀有反応・黙従反応)がわかる。
- VPIは160個の職業名に対する興味の有無を回答して実施。
- キャリアカウンセリングでの活用
- クライアントの自己理解を促進し、適切な職業選択をサポートする。
- 職業選択や適性判断のツールとしての利用
- 個人のパーソナリティタイプと職業環境のマッチングに活用される。
キーワード
- 6つのパーソナリティタイプ(RIASEC)
- スリー・レター・コード
- VPI
シャイン
エドガー・H・シャインの理論は、キャリア発達における個人と組織の相互作用を重視したもので、特に「キャリア・アンカー」、「キャリア・サバイバル」、「キャリア・コーン」といった概念が中心となっています。
理論の特徴
個人と組織との相互作用や発達的視点からキャリア発達を理解しようとしています。
彼の理論は、キャリアカウンセリングや組織開発において重要なフレームワークとして広く活用されています。
シャインは、欲求と動因の基本的な組み合わせは、効果的なキャリア・アンカーとして役割を果たすとし、それはキャリアの選択に影響を与えるだけでなく、転職にも影響を与え、その個人が人生で見つけたいと思っているものを形づくり、未来の展望、関連する目標と対象の総合的な評価を特徴づけるとした。
キャリア・アンカー
キャリア・アンカーとは、個人が選択を迫れれたとき、その人が最も放棄したがらない欲求、価値観、能力(才能)等のことで、その個人の自己像の中心を示すものであり、キャリアの積極的定着促進要員といえます。
キャリア・アンカーは、個人が職業上の自己イメージを形成する要素であり、以下の3つの要素から構成されます。
- 自覚された才能と能力: 自分が得意とするスキルや知識。
- 自覚された動機と欲求: 何を重視し、どのような働き方を望むか。
- 自覚された態度と価値: 自分が大切にしている価値観や信念。
キャリア・アンカーの種類
シャインは最初に5つのキャリア・アンカーを提唱しましたが、最終的には以下の8つに分類しました。
- 専門・職能的コンピタンス: 特定の専門分野での能力を発揮すること。
- 全般管理コンピタンス: 組織全体を管理し、成功に貢献すること。
- 自律・独立: 自分の基準で仕事を進めたいという欲求。
- 保障・安定: 安全で安定した職場環境を求めること。
- 起業家的創造性: 新しい事業を創出し、成功させたいという意欲。
- 奉仕・社会貢献: 社会に貢献したいという願望。
- 純粋な挑戦: 難しい課題を克服したいという欲求。
- 生活様式: 仕事と私生活のバランスを重視すること。
キャリア・サバイバル
キャリア・サバイバルは、個人の価値観やニーズと企業の求める役割やスキルを調和させることを目指す概念です。
働き手が持つ「譲れない価値観」や「仕事に求めるもの」と、企業が求める役割やスキルとの調和を図るプロセスを指します。
このプロセスは以下のステップから構成されます。
- 現在の職務と役割を棚卸しする
- 環境の変化を識別する
- 環境変化が利害関係者に与える影響を評価する
- 職務と役割への影響を確認する
- 職務要件を見直す
- プランニング・エクササイズを広げる
このプロセスは、個人が自己のニーズと組織のニーズを調和させながら、キャリアパスを形成していくために重要です。
キャリア・コーン(3次元モデル)
シャインは、組織内キャリアを理解するために「キャリア・コーン」というモデルを提唱しました。このモデルは以下の3つの次元から構成されています。
- 機能(職能): 組織内で異なる職能間(例:製造から販売)で移動すること。
- 地位(階層): 組織内での昇進や降格(例:見習社員から係長へ)による移動。
- 中心性: 組織内での重要な役割や位置づけ(例:部門間で中心的な役割を果たす)。
このモデルは、個人がどのようにして組織内で成長し、移動していくかを示すものであり、キャリア開発における戦略的な視点を提供します。
内的キャリアと外的キャリア
シャインはキャリアを「内的キャリア」と「外的キャリア」の2つの軸から捉えています。
- 内的キャリア: 個人が仕事に対して抱く動機や意味づけ、自身の価値観など主観的側面。
- 外的キャリア: 客観的側面として、仕事の内容や実績、組織内での地位など。
キーワード
- キャリア・アンカー
- キャリア・サバイバル
- キャリア・コーン
- 内的キャリア・外的キャリア
- 組織と人との相互作用
ジェラッド
ハリィ・ジェラットの理論は、意思決定に関する前期理論と後期理論に分けられます。
ジェラットは、現代のキャリア開発を「激流を筏で下る旅の過程」に例え、目標到達だけでなく、行程や過程にも意味があるとしています。
前期理論
連続的意思決定プロセス
ジェラットは意思決定を3段階のシステムで説明しています。
- 予測システム: 選択肢の予測と結果の可能性を判断
- 評価システム: 予測される結果の望ましさを評価
- 決定システム: 目的や目標に照らし合わせて選択肢を評価し決定
これらの3ステップを繰り返しながら意思決定が行われるとしています。
主観的可能性
ジェラットは、人間が陥りやすい「誤り」に注目し、キャリアにおける意思決定では主観的可能性が採用されやすいと示唆しました。
客観的なデータによる「コントロール」ではなく、主観的可能性に縛られない「フリー・チョイス」を進めることを提唱しています。
後期理論
積極的不確実性
後期理論では、不確実な未来に対して肯定的に認知し、ありのままを受容することの重要性を強調しています。
ジェラットは以下の2点を新たなガイドラインとして提示しました。
- 情報は限られており、変化し、主観的に認知されたものである。
- 意思決定は、目標に近づくと同時に、目標を創造する過程でもある。
この理論は未来志向の創造的カウンセリングとして位置づけられ、客観的で合理的なストラテジーだけでなく、主観的で直感的なストラテジーも統合して用いることを提唱しています。
キーワード
- 積極的不確実性
- 合理的な意思決定、直感的な意思決定
- 予期、評価、決定システムの3段階の意思決定プロセス
レビンソン
レビンソンの発達段階説は、人生を四季になぞらえた包括的なライフサイクル理論。
人生の各段階における課題や変化を理解し、キャリア発達を支援する上で重要な視点を提供している。
レビンソンは、それまであまり取り上げられることのなかった成人の発達について明らかにすることが試みられた。
成人前期から中年期への移行期を「人生半ばの過渡期」とし、①若さと老い、②破壊と創造、③男らしさと女らしさ、④愛着と分離 の4つの両極性の解決を個性化の主要課題とした。
理論の特徴
- 過渡期(トランジション)を重視し、キャリア発達の転機として捉える
- 中年期、特に「人生半ばの過渡期」に焦点を当てている
- 生活構造の概念を用いて個人と環境の相互関係を分析
基本的な考え方
- 人生には一定のパターン(ライフサイクル)がある
- 発達は安定期と過渡期(トランジション)の繰り返しで進む
- 各発達期は約25年続き、過渡期は4〜5年程度
4つの発達期と主要な過渡期
- 児童期と青年期(0〜22歳)
- 親や社会に保護されながら生きる時期
- 成人前期(17〜45歳)
- 成人への過渡期(17〜22歳)
- 30歳前後の過渡期(28〜33歳)
- 課題:アパシー(無力感・無価値)、離人感
- 中年期(40〜65歳)
- 人生半ばの過渡期(40〜45歳):最も重要な転換期
- 50歳の過渡期(50〜55歳)
- 課題:基本的対立(若さと老い、破壊と創造、男らしさと女らしさ、愛着と分離)の解決と統合
- 老年期(60歳以降)
- 老年への過渡期
- 課題:死の受容と新たな生への希望の獲得
キーワード
- 人生の四季
- 人生半ばの過渡期
- 若さと老い、破壊と創造、男らしさと女らしさ、愛着と分離