BOOK

睡眠の科学

この本について

  • 眠りのメカニズム
  • 脳や体で何が起こって眠りが誘発されているのか

 これらのことが書かれています。この本を読めば眠りとは何かの概要と脳内で何が起こっているのか。などが理解できます。普段何気なく、ほとんど意識せず眠っていますが実は体には摂食と同じくらい大事な行動だと言うことが分かります。眠りについての概念が変わる一冊となっています。

 この記事は私が読んで勉強になったことや、周知したいな、と思った部分を抜粋して記事にしています。睡眠の知識についての全くの素人が読んで得た知識を記事にしていますので、間違った表現などがあるかもしれません。お手数ですが、そのような場合は御指摘いただければと思います。

著者のプロフィール

櫻井 武 1964年 東京都生まれ 筑波大学教授 

1998年に覚醒を制御する神経ペプチド「オレキシン」を発見
睡眠研究の第一人者

その他の書籍
<眠り>をめぐるミステリー―睡眠の不思議から脳を読み解く (NHK出版新書)
食欲の科学 (ブルーバックス) 
「こころ」はいかにして生まれるのか 最新脳科学で解き明かす「情動」 (ブルーバックス)

睡眠の科学の要点

なぜ眠るのか

 睡眠を取らない状態が続くと、脳の視床下部に悪影響が出るようになります。この視床下部とは、体温や体重の恒常性の維持に重要な役割を果たしている部位で、ここがうまく働かないと体重の維持、体温調整などが出来なくなり、人体に様々悪影響を及ぼすことになります。
 また、免疫機能もうまく働かなくなり、感染症などにかかりやすくなります。

ノンレム睡眠とレム睡眠

 ノンレム睡眠が深い眠り、レム睡眠は浅い眠りで眠りの状態のことと考えている人は多いと思います。実際、自分もそう思っていました。しかし、この2つの睡眠は名前は似ていても、全く別物で、脳や体の状態が、起きている時、寝ている時の違いのようにはっきりとした違いがあります。

ノンレム睡眠

 現在ではノンレム睡眠中に記憶の定着、整理に重要な影響を与えていると考えられていています。
 この時、脳そのものが休んでいる状態で、PCで言うならスリープみたいな状態になっています。この時に日々の活動で増えた情報の整理(新しく増えたシナプス、不要となったシナプスの整理)を行っている状態と考えられて、簡単に言えば、脳の整理整頓が行われています。この、脳の整理整頓をしている最中に、新しい情報が絶えず入ってきてしまっては、整理できるものもできないと言うことになります。脳の空きスペースを作るっているんですかね。PCで言うメモリの最適化に近い感じでしょうか。

レム睡眠

 では、レム睡眠の脳の状態はというと、ノンレム睡眠とは逆に活発に働いている状態です。
 驚くことに、活動時より活発に動いています。しかし、脳以外からの情報は遮断されているます。また、脳からの情報も同様に遮断している状態です。PCで言うならオフライン状態です。
 もし、アウトプットを遮断しておかなかったら、脳が活発に動いているので眠っている間に暴れてしまうことになります。それを防止するために遮断しているのだと考えられています。
 先にも説明したように、現在は記憶の定着はノンレム睡眠が大きな役割を果たしていると考えられていますが、レム睡眠の役割については、いまだに謎に包まれています。眠りは普通、ノンレム睡眠の後にレム睡眠が現れますが、実験で、レム睡眠が現れる前に起こすと言う実験をしたところ、ノンレム睡眠が発言する前に、いきなりレム睡眠が現れるようになるようです。更にその後の睡眠はレム睡眠を取り戻すかのように、長いレム睡眠に入るようです。(レム・リバウンド)つまり、レム睡眠は人体に絶対必要なものであると推測はされるものの何のために必要かまではわかっていません。

睡眠のサイクル

 睡眠は一般的にノンレム睡眠→レム睡眠と言う1サイクルを90分から120分間隔で行っています。この時間は個人差があるようです。
 睡眠の約75%がノンレム睡眠で残りの25%がレム睡眠と言うことになります。

 まず眠りに入るとノンレム睡眠の第1段階となります。その後に段々眠りが深くなり、ノンレム睡眠第2段階~第4段階へと眠りが深まります。そして第4段階まで深まった後にレム睡眠が訪れます。このレム睡眠に先行して発言するノンレム睡眠の長さを「レム潜時」と言います。レム睡眠にであるまでの深さに潜るための時間という意味ですね。
 そして、1サイクルのノンレム睡眠+レム睡眠の時間を「睡眠単位」と呼びます。このサイクルが朝になるまでに約4~5回繰り返します。このサイクルが増えるたびに、ノンレム睡眠の時間は短くなり、逆にレム睡眠の時間は多くなっていきます。覚醒への準備をしていると考えられます。

睡眠システムと覚醒システムはシーソーの関係

 眠り(睡眠)と起きている状態(覚醒)はどのような関係なのでしょうかを、ざっくりと簡単に説明します。
 脳には睡眠システムと覚醒システムがあって相互に干渉しあっています。シーソーの両端に覚醒と睡眠が座っている状態をイメージすると分かりやすいと思います。例えばこのシーソー上で睡眠が覚醒より重い時、人は眠りに落ちます。
 更に、睡眠と覚醒の関係は、デフォルト状態では覚醒より睡眠の方が若干重いと考えられています。人は眠っている状態がデフォルトで必要がある時に起きているということです。
 このシーソーの切り替えは、体内時計からの信号と睡眠負債とのバランスで決定されるという「ツー・プロセスモデル」という説で考えられています。体内時計は決まった時間になるとお腹が空いたり、眠くなったりする体のリズムです。一方、睡眠負債というのは、脳内に睡眠を促す物質が溜まっている状態で、これを解消するために睡眠をとる必要となる状態です。実は、睡眠物質の特定は現在も解明中であって決定的にこれが睡眠物質だという断定までには至ってないみたいです。
 
 さてデフォルトで睡眠に傾いているシーソーであれば、何かが覚醒へ手助けをしない限り、このシーソーは覚醒へ傾きません。その覚醒へ力を加えているのは何なのでしょうか。

覚醒を安定させるオレキシン

 ここで、著者の発見したオレキシンが登場します。
 このオレキシンは、発見当初は食欲に影響を及ぼす物質として取り上げられました。その背景もあって名前がギリシャ語で「食欲」を意味する「オレキシス」を由来としています。しかし、実験を進めていくうちに、食欲を直接抑制しているのではなく、覚醒への影響の結果、覚醒時の行動である摂食に影響を与えていたということがわかったのです。

 では、オレキシンは覚醒に同様に作用しているのでしょうか。

 そうです。これが覚醒側の重りになることで、シーソーが覚醒側へ傾くようになります。デフォルトで睡眠に傾いているシーソーを覚醒側へ傾ける手助けをし、それを安定させる役割がこのオレキシンの役割というわけです。オレキシンが安定して供給されることにより、安定的に覚醒を維持させ覚醒時の行動ができるようになります。

 それではオレキシンがないと人は目覚めないのか?ということになりますが、そういうことは無いようです。オレキシンがなくても人は目覚めることができます。ですが、非常に覚醒が不安定になるようです。上記で説明したように、若干睡眠の方が重い状態で、睡眠負債の溜まり具合や体内時計の関係から、人間の生活時間中には睡眠より覚醒の方が重くなる時間もあるようです。ただし、睡眠物質の影響ですぐに睡眠へ傾いてしまう非常に不安定な状況ということです。

 ナルコレプシーと言う病気の人はこのオレキシンが正常に分泌されないため、覚醒を維持できず、不意に眠ってしまうようです。前回記事であげた「最高の睡眠」の著者の西野精治さんは、この病気の解明を主に行っています。この本でも詳しくナルコレプシーについて書かれていますが、省略します。気になる方は本書で確認してください。

 オレキシンは体内時計の活動時間や、気持ちの高ぶり、空腹によって供給されるようになっています。
 確かにこれらの時に眠くなっては大変ですよね。

眠るためには

 それでは、眠るためには、この覚醒と逆のことをすれば良いのだと考えられます。
 いつもの寝る時間はオレキシンが供給されません。また、気持ちが安定しているときも供給はされません。さらに、適度に空腹が満たされる時もです。そして、睡眠物質が適度に溜まった状態であれば、シーソーの関係では睡眠システムの方が重くなっているので、理論上「眠気」を感じているはずです。
 よく考えると健康的な規則正しい生活そのままですね。規則正しい生活は、睡眠を促す生活と言えそうです。

夢について

 睡眠とは切っても切り離せない夢について少し説明します。


 夢のほとんどははレム睡眠中に見ています。
 脳が活動状態であるので、ここで夢を見ていると言うのは納得が行きますね。また、この時見る夢は運動に関係する夢が多いそうです。理由は、レンレム睡眠中は脳幹の運動にかからる部分が活動しているからと考えられています。誰かに追いかけられた夢だったり、どこかから落ちる夢だったり、そういえば運動に関する夢が多い気がしますね。
 そして、夢の中は普通はあり得ないことを変だと考えずにストーリーが進みますよね。それは、レム睡眠中は脳の前頭前野の活動が低下しているため、客観的に物事をみることが出来なくなっています。なので、夢を見ているということを客観的に捉えることができないのです。常に自分視点からしか物事を見ることができない状態なのです。

これからこの知識をどう活かすか

今までの自分

 眠るという行動を甘く見ていました。眠くなったら、寝れば良いという具合に、その行動に特段の興味を持ちませんでした。多少寝不足でも、頑張れば何とかなる。とか週末寝溜めすればいいや。とか、今考えるとゾッとするような考えを持っていました。

これからの自分

 睡眠をもっと意識的に取ろうと考えています。この本を読んで眠るという行動は人間にとっては必要不可欠な行動であり、それを維持するために様々の構造を人間は持っています。そしてそれはまだ、全てが解明されたわけではありません。そのような、デリケートな機能であるのであれば、しっかりとメンテナンスをしなければいけないものなんだと感じました。
 ただ寝ればい良いのではなく、体が求めている睡眠を取る必要があると考えるようになりました。
 しっかりとした睡眠サイクルが取れるように日々の生活の見直しと、自分がどのように寝てるのかのウォッチングもしていこうと思っています。
 質の良い睡眠をとって日々のパフォーマンスの向上も目指していきたいと思います。

 

まとめ

 今回、この記事でまとめた睡眠の科学ですが、表面の触り部分で、深い部分の説明は省略しています。
 もっと科学的で深い内容が本書には書かれています。
 特に第7章には睡眠に関する日常の疑問が書かれています、ここには、何時間寝れば良い?やコーヒーと睡眠の関係など興味深い内容が盛り沢山です。
 もっと上手くまとめたいと思ったのですが、今の力量だとこれが限界みたいなので、もう少し上達したら記事のバージョンアップしたいと思っています。
 この記事を読んで睡眠に興味を持たれた方は是非、本書を手にとって読んでみてください。きっともっと眠りについて興味が湧くと思います。