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ルシファーエフェクト

この記事について

スタンフォード監獄実験について書かれた「ルシファーエフェクト」についての感想です。

この本について

ルシファー・エフェクト 〜ふつうの人が悪魔に変わるとき〜

フィリップ・ジンバルドー 著

フィリップ・ジンバルドー

スタンフォード大学心理学名誉教授。エール大学、ニューヨーク大学、コロンビア大学でも教鞭をとる。米国心理学会会長、スランフォード対テロリズム総合政策教育研究センター所長を歴任。

ルシファー・エフェクトの著者紹介より引用

この本との出会い

BOOK OFFで何となく本を探していたら、一際分厚い本を見つけました。

手に持ってみると鈍器のように重く、ページ数は807頁でした。

ルシファーエフェクトというタイトルもかっこよく心擽られました。

定価は3800円で、そのお店では約2000円で売っていました。

その時は、内容など知らなかったので、「こんな分厚い本売ってるんだなぁ」くらいで棚に戻し、店を後にしました。

後日、その本が何について書かれていたのかを調べてみると、スタンフォード監獄実験について、実験者フィリップ・ジンバルドが書いた本でした。

本の構成を簡単に

第1章〜第9章 スタンフォード監獄実験の記録

スタンフォード監獄実験を始まりから終わりまでの詳細な記録

人間が監獄という閉鎖された空間の中でどのように変わっていくかが記されている。

普通の人間が、看守という立場になることで非道な行為を平然と行う様に、読者は嫌悪感を抱いてしまうだろう。

第10章〜第13章 実験の考察

スタンフォード監獄実験を終えて、その結果を著者のジンバルドーがナチスの例なども含めて考察する。

なぜ、このようなことが起こったとのか?何が原因なのか?

と原因を究明していく。

その過程でシステムの影響。

このシステムが人間を悪に変える力を持っていた。

第14章〜第15章 アブグレイブの虐待と拷問

イラク戦争中に米軍が運営していた拘留施設、アブグレイブ刑務所で、2004年に大規模な捕虜虐待事件が発覚し、国際的な注目を集めた事件について、著者ジンバルドーによる考察。

スタンフォード監獄実験の教訓を活かせず、悲惨な虐待事件は起きてしまった。

第16章 人間の中にある悪に抗う方法

最後の章となるこの章では、人間の善と悪に焦点を当てる。

誰もが善にも悪にもなり得るということ。

自分だけは大丈夫だという傲りは捨てなければいけない。

最後の一文にロシアの詩人でスターリンの強制収容所の元囚人、アレクサンドル・ソルジェニーツィンの言葉で締められている。

善と悪の境界線は、あらゆる人間の心の真ん中にある

アレクサンドル・ソルジェニーツィン

スタンフォード監獄実験

この実験は、心理学系の本を読んでいると、必ずと言っていいほど出てきます。

自分の実験の詳細は知りませんでしたが、その実験が何をして、どんな発見をしたのかは知っていました。

普通の大学生を看守役と囚人役に分けて模擬刑務所で2週間過ごすという実験です。

結果としては、6日間で実験を終了しなくてはならなくなるほど、実験対象者に精神的な悪影響が出てしまったのです。

環境(システム)が与える影響

この本の趣旨とも言える部分です。

どんな人でも、その環境によって人間性を変えられてしまうということ。

自分たちが考えている以上に簡単に、環境によって毒される。

そしてその影響は、無意識に私たちを蝕む。

環境が私たちに与える影響の大きさを理解し、それを認識しようとすることが大事である。

誰でも人は悪人になり得る

悪い環境に触れていれば、自分が好まない自分が生まれ、

良い環境に触れていれば、自分が好む自分が生まれる。

環境が大事であると巷では言われていますが、その実例をこの本は教えてくれます。

環境は、大きく見れば、国や地域、会社であったりしますが、小さく見れば、家族や友人など自分が触れるもの全てが環境となり得ます。

自分は大丈夫と思っている人ほど危険

どんな環境でも、「自分は大丈夫」と思っていると、環境からの影響から自分を守ることはできません。

なぜなら、自分が毒されていることに気付かないからです。

無意識に好まない自分になっているところが恐ろしい。

だから、警戒心を持って環境に立ち入ることが重要です。

まとめ

807頁という分厚い本ですので、これだけで全てをお伝えするのは、到底できません。

ただ、著者の言いたい部分は、概ね、ここに書いたことであると自分は感じました。

最近では、「闇バイト」というような言葉を頻繁に聞くようになりました。

どうしてその道に足を踏み入れてしまうのかという、心理的な状況を知るのにもこの本は役に立つと思います。

読むのは一苦労ですが、読む価値のある1冊だと思います。