トーンスタム(Lars Tornstam)
1989年に「老年的超越(Gerotranscendence)」理論を提唱しました。
この理論は高齢期における心の発達を説明するもので、従来の社会学や老年学の「活動理論」や「サクセスフル・エイジング」とは異なり、高齢者の内面的でスピリチュアルな発達に注目しています。
トーンスタムの理論は、人が高齢になるにつれて物質的で合理的な世界観から、宇宙的超越や自己超越を含むより広いメタ認識の世界へ移行するとされます。
この移行は以下の3つの次元で構成されます。
- 宇宙的次元(宇宙的超越)-物質や日常生活を超えた宇宙的視点への展開
- 自己の次元(自我超越)-自己中心性の減少と精神的な成熟
- 社会と個人の関係の次元-社会的役割や人間関係の理解の変化
トーンスタムは自身の理論を禅の哲学的視点も参考にし、西洋の離脱理論を新たな理解へと昇華させました。
加齢に伴う変化は単なる喪失ではなく、精神的成長や新たな価値観・世界観の獲得であるとみなします。
彼は量的調査やインタビューを用いて科学的に老年的超越の存在を実証し、高齢者に特有の成熟した幸福感や人生の叡智が形成されることを示しました。
この理論は、高齢者の心理的発達やスピリチュアリティの理解に革新をもたらし、老年の精神的成長と豊かな人生の可能性を照らし出しています。



