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この記事について
原点に戻って。
論述や面談で必ずと言っていいほど出てくる自己理解不足。
キャリコンの中でとても重要なものであることは間違いないと思います。
でも、この自己理解不足に対する理解は十分なのだろうか?
論述や面談での講評を見てみると、問題の把握力が薄い印象だと書いてありました。
では、問題の把握とは。
これは、自己理解、仕事理解、啓発的経験、意思決定、方策の実行、適応 のキャリアコンサルタントの6つの分野の支援に該当されるものかと思います。
これらが不足しているから、支援が必要となる。
その中でも、一番大きく重要なのは、自己理解不足かと思います。
自分も、自己理解不足だとCL問題を見立てているにも関わらず、自己理解のことをぼんやりとしか知らないことに気づきました。
では、自己理解不足とは一体、どのような状況なのか、まとめてみました。
面談に行き詰まっている方、是非、見ていってください。
特に、下記の自己理解を深める問いは、「私は」のところを、「あなた(CL)は」に置き換えることで、CLに対する自己理解を深める問いとなります。
自己理解を深める問い
- 私は誰なのか?(自己同一性・アイデンティティ)
- 私は何を知っているのか?(自己知識・自己概念)
- 私は何を感じているのか?(自己感情)
- 私は何を信じているのか?(自己信念・価値観)
- 私は何を持っているのか?(自己資源・強み)
- 私はどのように行動しているのか?(自己行動認識)
- 私は他者からどう見られているのか?(自己イメージ・他者認識)
- 私はどんな役割を担っているのか?(自己役割認識)
- 私はどんな成長や変化を遂げているのか?(自己発達・自己変容)
- 私はどんな未来を描いているのか?(自己ビジョン・自己目標)
自己理解不足
自己理解不足とは、自分自身について十分に理解できていない状態を指します。
具体的には、自分の能力、適性、価値観、性格、思考や感情、意思決定の基準、そして人生の生き方や夢などについての把握や納得が不十分であることです。
自己理解は「ありのままの自分を知り受け入れること」であり、その過程を経て自分の考えや行動に対して自己責任を持てる状態を目指しますが、不足していると以下のような問題や特徴が現れます。
自己理解不足の詳細な特徴
- 自分の感情や行動の理由を説明できない
自分がなぜそのように感じたり行動したりするのかを言語化できず、他者との対話やサポートを受けるのが難しくなる。 - やりたいことや価値観が見えていない
自身が大切にしたいことや本当に情熱を持てる分野が不明確で、意思決定やキャリアの方向性が定まらない。 - 強みと弱みを具体的に言えない
自分の能力や特性について具体的で実感を伴う理解がなく、一般的な言葉だけでしか表現できない。 - 将来のビジョンを描けていない
目標や成長の方向性が見えず、キャリア選択や人生設計に消極的になりやすい。
自己理解不足の背景原因
- 迅速な社会変化や多様な価値観により自己定義が複雑になっている
- SNSや情報過多で自分の本質的な思考と他者の意見の区別が難しい
- 忙しさやオンライン化で自己を振り返る時間や他者からのフィードバックが不足
- 自己評価の歪みや失敗への恐れ、完璧主義的傾向により現実的な把握が妨げられる
自己理解不足がもたらす影響
- 意思決定に迷いが生じやすい
- コミュニケーションが苦手になり、対立を避けて表面的な同調に陥る
- キャリア開発や成長の機会を逃しやすい
- 自分の強みを活かせず、本来の可能性を引き出しにくい
- ストレスや燃え尽きのリスクが高まる
自己理解不足は個人だけでなく、組織やチームのパフォーマンスにも影響を及ぼす重要な課題です。しかし、適切な支援を受けたり自己観察を深めたりすることで改善は可能です。
サポートリソースの認識不足
自己理解不足の中には、自分のサポートリソースの認識不足も含まれると考えられます。
自己理解不足は、自分の強みや弱み、価値観、役割理解などの不足だけでなく、自分を支える外部や内部のリソース(サポート体制、人脈、環境など)に対する認識が不十分なことも含まれます。
自己理解が不足していると、自分の感情や行動の理由が説明できなかったり、将来ビジョンが描けなかったりするほか、利用可能な支援や資源に気付けないこともあります。
これが結果的に適切な支援を受けられない原因となるため、サポートリソースの認識不足は自己理解不足の一要素と考えてよいです。
自己理解とサポートリソース認識の関係
- 自己理解が深まることで、自分の内的な強み弱みだけでなく、利用可能な人的・物的リソースの把握も促進される。
- 逆に、自己理解が不足すると、自分への適切なサポートを認識・活用できずに、問題解決や成長の機会を逃すことになる。
- 組織やキャリアコンサルティングの実務では、自己理解不足を支援する際に、サポートリソース認識の向上も重要な課題となる。
以上より、「自己理解不足」の中に「自分のサポートリソースの認識不足」が含まれると捉えるのが適切です。
自己理解不足の具体例
自己理解不足の具体例としては以下のようなものがあります。
- 自分の興味・関心や能力・適性について把握できていない
例:営業職に自信が持てず、なぜうまくいく時とうまくいかない時があるのか理解できずに悩む状態。 - 自分の理想ややりたいことが曖昧で、具体的なビジョンが描けない
例:将来何がやりたいのか分からず、「〇〇がやりたい」と漠然と言うものの、具体的な行動目標や理由は説明できない。 - 自己の強みや弱みを具体的に把握していない
例:上司や同僚からフィードバックを受けても、「自分の強みはこれだ」と言語化できず、周囲の評価と自覚にズレがある。 - 自分の価値観や意思決定の基準が不明確
例:仕事やプライベートでの選択に迷いが多く、なぜその選択をしたのか振り返っても納得できない。 - 他者からの評価や役割理解と自己理解が乖離している
例:管理職としての役割や期待を理解できていないため、何をすべきか分からず葛藤が生じる。 - 感情や行動の理由が説明できず、対人関係や自己表現が苦手
例:なぜ特定の場面でストレスを感じるのか、感情の起伏の原因がわからないので適切に対処できない。
これらの例はキャリア相談の現場や論述試験でもよく挙げられる典型的な自己理解不足の状況です。自己理解不足は本人の認知の歪みや評価不能、経験不足、価値観の混乱など多角的な要因が絡みます。支援の際には具体的な事例をもとにその根拠や背景を深掘りしながら自己理解を促進することが効果的です。
自己理解不足10事例
自己理解不足の具体例を10個挙げます。
- 自分が何に興味や関心を持っているか分からないため、キャリアの方向性を決められない。
- 自分の強みや弱みを具体的に説明できず、仕事での自己評価が曖昧になっている。
- 自分は「気楽な性格」だと思っているが、他者からは「気難しい」と評価されギャップを感じている。
- 将来どんな仕事をしたいのか明確なビジョンを持てず、転職や昇進に対して迷いが生じている。
- 自分の価値観や譲れない信念が整理できておらず、意思決定に自信が持てない。
- 上司から期待されている役割や会社の求める能力・姿勢が理解できていない。
- 職場での自分の役割が不明確で、成果をどう出すべきか方向性が分からない。
- 感情の起伏やストレスの原因が分からず、対人関係での自己表現が苦手。
- 自分のスキルや能力の過去・現在・未来における変化や成長の見通しが描けていない。
- 自己概念と実際の経験がずれており、自分自身のイメージが実態と合わずに困惑している。
これらはキャリアコンサルティングの現場でもよく見られ、自己理解不足の典型例です。これらをベースに支援者は対話やフィードバック、アセスメントなどを通じて理解の促進を図ります。