プラス1点の知識

「逆転移」と「偏見」の違いについて

この記事について

逆転移という言葉を勉強の過程で知りましたが、あまりイメージがつかないので調べてみました。

転移はイメージできるのですが、カウンセラー側がCL側が感情を向けるとはどういうことなのか?と言いうのが疑問です。

逆転移と偏見って、同じではないか?と思ったりもしたので、その違いもまとめてみます。

「逆転移」とは

「逆転移(ぎゃくてんい)」とは、主にカウンセリングや精神分析などで使われる心理学用語で、「カウンセラー(治療者)がクライアント(相談者)に対して無意識に個人的な感情を向けてしまう状況」を指します。

もともと「転移」という現象が、クライアントが自分の過去の重要人物(親など)に向ける感情をカウンセラーへ投影してしまうことを意味する一方、「逆転移」はその反対で、カウンセラー側が無意識のうちにクライアントに自分の過去の人間関係や感情を重ね合わせてしまうことです。

逆転移の具体例

  • 感情的に過度に共感・同情してしまう:クライアントの話を自分の過去(例えば自分もいじめ被害を経験した、など)と重ね合わせ、冷静に対応できずに過剰に感情移入してしまう。
  • 特定のクライアントにだけ特別な感情を抱く:他のクライアントにはない親しみや怒りなどの感情が無意識に生じ、判断が偏る。
  • クライアントの態度や一言に過剰に反応する:クライアントからのある言葉が引き金で、治療者自身の昔の体験や未解決の問題が強くよみがえり、それが態度や対応に現れる。

このような状況は、カウンセラーとクライアントの関係性が深まったときや、カウンセラー自身の過去とクライアントの状況に共通点があるときなどに起こりやすいとされます。

医療・ビジネスの日常例

  • 医療現場:医師が自殺未遂の患者に対して否定的な感情や自分の体験を重ねて見てしまい、冷静な治療判断ができなくなる。
  • 職場の上司・部下関係:上司が、過去に苦手だった親や教師と似たタイプの部下に対して必要以上に厳しく(または甘く)接してしまう。

治療やケアを行う立場の人は、「逆転移」が無意識のうちに生じていないか、そしてそれが対応に悪影響を与えていないかを常に自己点検することが重要です。

逆転移と偏見の違い

逆転移と偏見は同じものではありません。心理学的には次のように区別されます。

逆転移(Countertransference)

主にカウンセリングや精神分析の文脈で使われる用語で、治療者(カウンセラーや医療者)がクライアントに対して無意識に自分の過去の人間関係や感情を投影し、感情的反応や態度を生じてしまう現象を指します。

これは無意識的なもので、治療関係の中でクライアントの転移(クライアントが治療者へ過去の感情を投影すること)に影響を受けて起こります。

逆転移は治療者の感情体験の総体ともでき、必ずしも悪いものではなく、自己洞察や治療理解に役立つ場合もありますが、無自覚に陥ると治療の質に悪影響を及ぼすこともあります。

偏見(prejudice)

一般的に持つ対象への先入観や固定的な否定的評価を指し、個人の無意識だけでなく社会的・文化的な影響、学習や経験などから形成されます。

偏見は意識的・無意識的な場合があり得ますが、必ずしもカウンセリング関係の中での相互感情に限定されません。

偏見は対人関係での公平な判断を妨げるものとして問題視されます。

まとめ

逆転移は心理療法などの専門的な対人援助関係における「治療者の無意識的感情反応」であり、偏見は「特定の対象に対する固定的でしばしば否定的な態度や見方」です。

逆転移はその場面ごとの治療関係に依存する無意識現象ですが、偏見はより広範かつ概念的な心の態度や傾向を指します。

簡単に言えば、逆転移は「治療関係内での治療者側の無意識的感情の混入」、偏見は「対象に対する固定観念や先入観」という違いがあります。

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