バンマーネンとシャインの組織社会化理論
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この記事について
キャリアコンサルタント学科試験で出題されたニッチな問題があったので備忘記録として調べた結果をシェアします。
過去問からの出題ですので、再出題も十分にあり得ます。
プラス1点を目指しましょう!
バンマーネンとシャインの組織社会化理論は、個人が組織の一員となるプロセスを説明する重要な枠組みです。
第31回 2級技能士 問28に出題されたました。
組織社会化の定義
組織社会化とは、個人が組織の一員になるために必要な態度、行動、知識を習得するプロセスを指します。
バンマーネンとシャインは1979年の論文「Toward a Theory of Organizational Socialization」でこの概念を詳細に説明しました。
組織社会化の3段階モデル
シャインは1978年に組織社会化の3段階モデルを提唱しました。
- 参入段階
個人が組織に入る前に、仕事や組織に対する期待を形成する段階。 - 社会化段階
「現実ショック」とも呼ばれ、新入社員が組織の現実に直面し、新しい役割や報酬システムを理解する段階。 - 相互受容段階
個人と組織が互いを受け入れ、個人が組織内で最善のパフォーマンスを発揮するようになる段階。
組織社会化戦略
組織社会化戦略とは、組織が新規参入者(新入社員や中途採用者)に対して、その組織の文化、価値観、行動規範、役割や業務の知識を効率的かつ効果的に伝え、彼らがスムーズに組織に適応できるように計画的に実施する方針や施策のことを指します。
組織社会化戦略には「制度的戦略」と「個人的戦略」とに大別されます。
制度的戦略
制度的戦略とは、組織社会化において組織側が計画的かつ体系的に設計・提供する社会化の方法や方針のことを指します。これは、新規参入者に対して、組織の文化、価値観、行動規範や役割を明確に伝え、ルールや手順を決めて教育や研修プログラムなどの制度的な支援をおこなうものです。
主な特徴は以下の通りです。
- 集合的かつ公式的なプログラムで、新人をグループとして扱うことが多い
- 明確な時期・手順が設定されているため、適応の過程が固定的
- 役割や期待される行動が規則的に伝えられるため、不安が少なく失敗を減らしやすい
- 例としては、導入研修、メンター制度、評価基準の明確化、組織理念の浸透研修などが挙げられます
制度的戦略は、組織と個人の双方にとって社会化を効率的に進め、満足度や組織コミットメントの向上に寄与する重要な社会化手法とされています。
制度的戦略の6つの次元
バンマーネンとシャインは、組織が新入社員を社会化させるための6つの戦略軸を提案しました。
- 集合的(collective)vs 個人的(individual)
- 集合的:新入社員をグループとして扱い、共通の経験を提供する
- 個人的:各新入社員を個別に扱い、独自の経験を提供する
- 公式的(formal)vs 非公式的(informal)
- 公式的:新入社員を既存の従業員から分離し、構造化された訓練を提供する
- 非公式的:新入社員を既存の作業グループに直接配置し、実務を通じて学ばせる
- 規則的(sequential)vs 不規則的(random)
- 規則的:明確に定義された段階を通じて役割に移行する
- 不規則的:役割への移行過程が曖昧で変化しやすい
- 固定的(fixed)vs 変動的(variable)
- 固定的:各段階の期間が明確に設定されている
- 変動的:各段階の期間が不確定で、進捗に応じて変化する
- 連続的(serial)vs 断続的(disjunctive)
- 連続的:経験豊富な組織メンバーが新入社員の指導役となる
- 断続的:新入社員の前任者がいない、または指導役が提供されない
- 付与的(investiture)vs 剥奪的(divestiture)
- 付与的:新入社員の個人的特性を肯定し、活用する
- 剥奪的:新入社員の特定の特性を否定し、新しい自己概念を形成させる
戦略の影響
これらの次元の組み合わせによって、組織は新入社員の社会化プロセスをデザインします。研究によると、より制度化された(集合的、公式的、規則的、固定的、連続的、付与的)戦略は、以下の効果があることが示されています。
- 満足度の向上
- 組織へのコミットメントの強化
- 組織や仕事との適合性の向上
しかし、制度化された戦略は役割変革にはネガティブな影響を与える可能性があります。
新規参入者の個性や特徴が抑圧され、変革的な行動が起きにくくなる傾向があります。
個人的戦略
個人的戦略とは、組織社会化理論において、組織が体系的にデザインした制度的社会化戦術(集合的・公式的・規則的など)とは対照的に、組織側が明確な方針や仕組みを持たず、個人が現場での試行錯誤や経験を通じて自ら適応していく非体系的・非公式的な社会化の方法を指します。
具体的には、個別的・非公式的・不規則的・可変的・断続的な側面を持ち、新入者は自ら主体的に情報収集や人間関係形成、行動調整を行いながら組織に慣れていきます。この過程は制度的な社会化よりも自由度が高い反面、組織からのサポートや指導が少なく、適応過程に個人の工夫やプロアクティブ行動が強く求められる特徴があります。
個人的戦略は、組織の管理的介入が薄い環境での社会化を表し、特に組織制度が整っていない場合や、個人の主体性を重視する風土の中で重要となる社会化の形態といえます。
組織社会化理論におけるプロアクティブ行動とは、新しく組織に参入した個人が自ら積極的に適応を図るために主体的に起こす行動を指します。
プロアクティブ行動の定義
プロアクティブ行動は、将来起こりうる状況や課題を予見して、受け身ではなく、自ら変化を促したり、環境に働きかけたりする積極的な行動です。たとえば、情報収集、人間関係構築、フィードバックの取得、役割理解などにおいて自発的に動くことが含まれます。
主な類型
具体的なプロアクティブ行動例
- 上司や先輩に積極的に質問をする
- 社内の人間関係を主体的に構築し、部活動や社内交流会などに参加する
- 部門外とのコミュニケーションを自らはかる
- フィードバックを積極的に求める
- 業務のやり方や手順などについて自ら調べ、改善案を提案する
組織社会化への影響
プロアクティブ行動は、個人が受動的に環境から影響を受けるだけでなく、能動的に組織への適応や自己成長を促す要因となり、役割の習得、職業的アイデンティティの確立、情緒的コミットメントの向上などに寄与します。また、組織が与える社会化戦術(教育、制度、サポートなど)と個人のプロアクティブ行動が相互に作用し、組織適応を効果的に促すとも指摘されています。
このように、プロアクティブ行動は、組織社会化理論において個人が主体的に組織適応を進めるための重要な行動概念です。
役割志向
バンマーネンとシャインの理論は、新入社員の役割志向にも影響を与えます。
- 保守的役割志向(custodial orientation):既存の役割を維持する傾向
- 変革的役割志向(innovative orientation):役割を新しく解釈し変革する傾向
組織は、これらの次元を適切に組み合わせることで、望ましい役割志向を促進することができます。
組織社会化戦略は、新規学卒者に比べて中途入社者に対する効果が小さいことも報告されています。中途入社者の場合、本人の主体的行動の影響がより大きくなります。
理論の重要性
バンマーネンとシャインの組織社会化理論は、以下の点で重要です。
- 従業員の統合
新入社員を組織文化にスムーズに統合するための構造化されたアプローチを提供します。 - 組織文化の形成
組織が望ましい文化を形成・維持するのに役立ちます。 - 従業員エンゲージメント
効果的な社会化は従業員の満足度とエンゲージメントを高めます。 - 離職率の低減
組織への帰属意識と献身を育むことで、離職率を下げる効果があります。 - 文化の保持
新入社員が組織の核心的価値観を理解し、受け入れることを確実にします。
この理論は、組織行動学の分野で広く適用されており、個人と組織の相互作用を理解する上で重要な枠組みとなっています。
まとめ
ニッチな部分でありますが、過去問出題歴があるのでチェックして、頭の片隅にでも入れておくと損はしないと思います。
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