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この記事について
キャリアコンサルタントの学科試験には、数多くの理論とその提唱者が出題されています。
かなりの量の理論を覚えなければいけないので、備忘記録として記事にします。
提唱者と理論、あとは、提唱者を連想するためのキーワードなどを書いていきます。
今回は、出題頻度の高い、エリクソン、クランボルツ、ホール、ブリッジスの理論をまとめます。
エリクソン
心理社会的発達理論は、人間の発達を生涯にわたる連続的なプロセスとして捉え、個人と社会の相互作用に焦点にした。
理論の特徴
エリクソンは人生を8つの段階に分け、各段階で特定の発達課題(心理社会的危機)がある。
- 乳児期(0-1歳): 基本的信頼 vs 不信
- 幼児期初期(1-3歳): 自律性 vs 恥、疑惑
- 幼児期後期(3-6歳): 積極性 vs 罪悪感
- 学童期(6-12歳): 勤勉性 vs 劣等感
- 青年期(12-20歳): アイデンティティ vs 役割の混乱
- 成人初期(20-40歳): 親密性 vs 孤立
- 成人中期(40-65歳): 生殖性 vs 停滞
- 成人後期(65歳以上): 統合 vs 絶望
キーワード
- 心理的発達理論
- 8つの段階
- 発達課題(心理社会的危機)
- 連続的なプロセス
クランボルツ
社会的学習理論(SLTCDM)
キャリア選択がどのように行われるかを説明したもの。「なぜ特定の職業を選択するのか」「なぜ職業を変えるのか」「いろいろな職業に対しての好みがあるのはなぜか」といった質問に答えるもの。
人間は学習し続ける存在であり、キャリア選択は学習の結果である。
直接経験だけでなく、他者の行動の観察や模倣によっても学習が成立する。
バンデューラの社会的学習理論を基礎におく。
キャリア形成に影響を与える4つの要因
- 遺伝的特性・特別な能力
- 環境条件や出来事
- 学習経験
- 課題へのアプローチスキル
これらの要因が相互に影響し合い、個人の信念、スキル、行動を形成する。
信念については、自分自身に関する信念と仕事に関する信念の2つが存在するとし、新しい学習経験の妨げとなっている信念を測定するために、CBIを作成した。
計画的偶発性理論(ハップンスタンス・ラーニング・セオリー)
キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。
偶然の出来事をチャンスに変える5つのスキル
- 好奇心
- 持続性
- 柔軟性
- 楽観性
- 冒険心(リスクテーキング)
これらのスキルを活用して「プランド・ハップンスタンス」(計画された偶発性)を作り出すことが、個人のキャリア発達と人生の質を向上させると主張。
「未確定」は、新しい学習をおたらすために必要な望ましいもの。
予期せぬ出来事がキャリアの機会に結びつく。
偶発的な出来事を自らの主体性や努力によってキャリアに最大限に活用していく。
キャラカウンセリング理論における4つの命題
クランボルツのキャリアカウンセリング理論における4つの命題は以下の通りです
- キャリアの選択は単なる一回限りの出来事ではなく、生涯にわたる学習プロセスである。
- キャリア・アセスメントは個人の特性と職業の特性をマッチングするためではなく、学習を促すために用いられる。
- クライエントの行動と探索的スキルが、キャリアの成功につながる。
- カウンセラーの主な役割は、クライエントの学習を促進することである。
キーワード
- 社会的学習理論
- 4つの要因(遺伝・環境・経験・課題)
- 5つのスキル(好奇心・持続性・楽観性・柔軟性・冒険心)
- 計画的偶発性理論
- 未確定
- 人間は学習し続ける存在
ホール
ホールの提唱した、プロティアン・キャリアは、個人が自律的にキャリアを管理し、変化する環境に柔軟に適応することの重要性を強調。
キャリアを営むその人の欲求に見合うようにその都度方向転換されるもの。
移り変わる環境に対して、自己志向的に変幻自在に対応。
現代の動的なキャリア環境において必要とされる適応力と自己主導性を反映。
ギリシャ神話のプロテウスから名付けられている。=「変幻自在」を意味
理論の特徴
- 個人主導: キャリアは組織ではなく個人によって自律的に形成・調整される。
- 価値観重視: 「自分が満足できるか」「自分がしたいことは何か」という個人の欲求・意思を最も重視する。
- 変幻自在: 環境の変化に柔軟に対応し、継続的に学習・適応する。
- 心理的成功: 外部からの評価ではなく、個人の内面的な満足感や達成感を重視する。
ホールによるキャリアの定義
- 生涯にわたる仕事に関する経験や活動の連続
- 昇進や昇格だけでなく、個人的に知覚された態度や行動の連続
- 主観的側面(価値観、動機)と客観的側面(観察可能な選択行動)の両方を考慮する必要がある
伝統的キャリアとの比較
- 主体者: 個人 vs 組織
- 核となる価値観: 自由、成長 vs 昇進、権力
- 重要なパフォーマンス側面: 心理的成功 vs 地位、給料
- 重要な態度的側面: 仕事満足感、専門的コミットメント vs 組織コミットメント
キーワード
- プロティアン
- 価値観の重視
- 変幻自在
ブリッジス
ブリッジスのトランジション理論は、人生の転機(トランジション)を3段階のプロセスで説明します。
ブリッジスの理論の特徴は、トランジションの始まりを「何かが終わるとき」と捉え、中立圏での自己との向き合い方を重視している点です。
第1段階:終焉
トランジションは何かが終わるときから始まります。この段階では、これまでの活動や人間関係、環境の変化により、混乱や空虚感、心理的苦痛を経験します。
第2段階:中立圏(ニュートラルゾーン)
最も重要な時期とされ、「今までの自分」と「未来の自分」の間で空虚感を感じます。この段階では以下のアクションが推奨されます。
- 一人で過ごす時間と場所を作る
- 体験を記録する
- 本当にやりたいことを考える
- 自叙伝をまとめる
- 心残りについて考える
- 自分なりの通過儀礼を体験する
第3段階:開始
新しいことが始まる時期です。
計画的または偶発的に訪れ、内的抵抗が起こりやすいため、適切な対応と焦らない気持ちが重要です。
キーワード
- トランジション理論(シュロスバーグの理論との比較)
- 3段階のプロセス
- 中立圏での自己の向き合い方を重視
- 第1段階:終焉
- 第2段階:中立圏
- 第3段階:開始
シュロスバーグとブリッジスの理論の関係
シュロスバーグの理論とブリッジスの理論は、どちらもトランジション(人生の転機)に関する理論ですが、いくつかの点で関連性と違いがあります。
共通点
- 段階的アプローチ:両理論とも、トランジションを段階的なプロセスとして捉えています。ブリッジスは3段階、シュロスバーグも3段階で説明しています。
- 心理的変化の重視:両者とも、トランジション時の個人の心理的変化に焦点を当てています。
違い
- 段階の定義:
- ブリッジス:「終焉」「中立圏」「開始」
- シュロスバーグ:「転機を見定める」「リソースを点検する」「転機を受け止め、対処する」
- 焦点:
- ブリッジス:プロセスの各段階における心理状態に重点
- シュロスバーグ:転機への対応能力を左右する要因(4つのS)に重点
- 転機の捉え方:
- ブリッジス:「何かが終わるとき」から始まると捉える
- シュロスバーグ:イベントとノンイベントの両方を転機として捉える
相互補完性
これらの理論は、トランジションの異なる側面に焦点を当てているため、相互に補完し合う関係にあります。
ブリッジスの理論がトランジションの心理的プロセスを詳細に説明する一方、シュロスバーグの理論は転機への対処に必要なリソースと戦略を提供しています。
キャリアコンサルティングや個人の成長支援において、両理論を組み合わせて活用することで、トランジションをより包括的に理解し、効果的なサポートを提供することができます。