プラス1点の知識

労災保険と健康保険の手当金

労災の傷病手当金と健康保険の傷病手当金の違い

労災保険と健康保険の傷病手当金は、支給対象・支給条件・金額・期間などに明確な違いがあります。以下に主な違いをまとめます。


1. 支給対象となる原因

制度支給対象となる原因
労災保険業務上または通勤中のケガや病気
健康保険業務外のケガや病気
  • 労災保険は、仕事中や通勤途中の事故・災害が原因の場合に適用されます。
  • 健康保険の傷病手当金は、私生活中のケガや病気など、業務外の事由が対象です。

2. 支給される金額

制度支給額の計算方法
労災保険給付基礎日額の60%(休業補償給付)+20%(特別支給金)=合計80%
健康保険標準報酬日額の2/3(約67%)
  • 労災保険の方が支給割合が高く、合計で日額の80%が支給されます。
  • 健康保険の傷病手当金は、直近12か月の標準報酬月額の2/3が支給されます。

3. 支給期間

制度支給期間
労災保険治療終了日(症状固定日)まで。長期の場合は年金に切替も
健康保険支給開始日から最長1年6か月

4. 支給要件・申請先

  • 労災保険:業務災害や通勤災害で4日以上仕事を休む場合に、労働基準監督署へ申請。
  • 健康保険:業務外の傷病で4日以上連続して休業し、給与が支給されない場合に健康保険組合等へ申請。

5. 両方の併用はできる?

原則として、同じ傷病について両方から同時に給付を受けることはできません。

労災が適用される場合は労災保険が優先されます。


まとめ

  • 労災保険の休業補償給付は、仕事や通勤中のケガ・病気が対象で、給付基礎日額の80%が支給され、治療が終わるまで補償されます。
  • 健康保険の傷病手当金は、業務外のケガ・病気が対象で、標準報酬日額の2/3が最長1年6か月支給されます。
  • 両制度は支給対象や金額、期間が異なり、原則として併用はできません。

それぞれの制度の違いを理解し、状況に応じて適切に申請することが大切です。

特別支給金とは

特別支給金とは、労災保険の基本給付に上乗せして支給される給付金です。業務上や通勤途中の事故・病気・障害・死亡などで労災保険の支給要件を満たす場合、基本給付と同時に支給され、被災労働者やその遺族の生活を総合的にサポートすることを目的としています。


主な特徴

  • 労災保険給付に「上乗せ」して支給
    労災保険の基本給付(例:休業補償給付、障害補償給付など)に加えて支給されます。たとえば、休業の場合は給付基礎日額の60%(休業補償給付)に加え、20%(休業特別支給金)が支給され、合計で80%となります。
  • 福祉的性格が強い
    社会復帰促進等事業の一環として、被災者や遺族の生活を守るための福祉的な給付です。
  • 損益相殺の対象外
    他の保険(自賠責保険等)や損害賠償と調整されず、全額受け取れます。

支給の種類と金額例

特別支給金は9種類あり、代表的なものは以下の通りです。

種類支給内容・金額例(2025年時点)
休業特別支給金休業4日目以降、1日につき給付基礎日額の20%
障害特別支給金障害等級に応じて一時金(例:1級342万円)
障害特別年金障害等級1~7級の場合、年金として支給
障害特別一時金障害等級8~14級の場合、一時金として支給
遺族特別支給金一時金300万円(人数で按分の場合あり)
遺族特別年金遺族の人数等に応じて年金支給
遺族特別一時金算定基礎日額の1000日分など
傷病特別支給金傷病等級1級114万円など
傷病特別年金等級に応じて年金支給

支給要件

  • 労災保険給付の要件を満たしていれば、原則として特別支給金も同時に受給できます。
  • ただし、療養給付(無料治療のみ)だけの場合は、特別支給金は支給されません。

まとめ

特別支給金は、労災保険の基本給付に加えて支給される福祉的な給付金で、被災者や遺族の生活保障を強化する役割を持っています。

損害賠償請求や他の保険給付と調整されず、全額受け取れるのが特徴です。