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サイコドラマ(心理劇)

サイコドラマ(心理劇)とは

サイコドラマ(心理劇)とは、ジェイコブ・レヴィ・モレノ(J.L.モレノ)によって創始された即興劇の枠組みと技法を用いた集団心理療法の一種です。

主にクライエントの抱える問題を舞台上で即興的な演技やロールプレイを通じて表現し、自己理解と問題解決を目指すものです。

サイコドラマは単なる演劇ではなく、心理療法としての側面をもち、グループの中で主人公(クライエント)が自分の過去や内面の葛藤、未解決な問題を演じ、他のメンバーが補助自我や脇役などとなって支援し、観客も重要な参加者となります。

基本的な要素は、監督(ファシリテーター)、演者(主役や補助自我)、観客、そして舞台です。

技法として「役割交替法(ロールリバース)」や「ダブル(二重自我法)」などが用いられ、これらにより当事者は自分や相手の立場に立って考え、感情や態度の変化を実感しながら新しい役割や行動パターンを学びます。

モレノの理論にある「自発性・創造性」を重視し、自発的で即興的な演技を通して個人が自身の心理的課題に創造的に対応することを促します。

これにより感情の解放や自己理解の深化、相互共感、行動の修正などの心理的効果や社会的変化が期待されます。

また、心理的カタルシスが生じることも多く、精神的な健康の向上や日常生活の質の向上にも寄与します。

日本では1950年代に紹介され、臨床的な発展を遂げています。

サイコドラマは教育現場や不登校生徒支援、集団認知行動療法(CBT)との併用など、様々な分野で活用されています。

主な技法

ロールリバース(役割交換)

演者が他者の役割を演じることで、相手の立場を理解し、自身の問題を多角的に認識する技法。

具体例
部下役の主役が上司役を演じ、上司の言葉遣いや態度を真似て表現し、その後元の役に戻って、そのときの上司役の反応を再現する。

ダブル(二重自我法)

補助自我が主役の内面や無意識の声を代弁する形で、二人で一人の役割を演じる技法。

具体例
補助者が主役の感情や考えを声に出しているように表現し、その言葉を主役が聞き、自分の感情を確認・理解する。

ミラー(鏡技法)

主役の行動や演技を他のメンバーが真似て見せることで、自分の振る舞いを客観的に見られるようにする技法。

具体例
主役が家庭内での対話場面を演じ、他者がその様子を鏡のように再現し、主役が自分の振る舞いを理解する。

独白(モノローグ)・エンプティチェア(空の椅子)

主役が自分の感情や思いを独り言のように語る、あるいは空の椅子に対して話しかけることで感情を整理する技法。

具体例
主役が離れてしまった家族や友人を想定した椅子に向かって話しかけ、未解決の感情を言葉にする。

技法の目的

これらの技法を通して、主役は自己理解を深め、感情の解放(カタルシス)を体験し、新たな役割や行動パターンの獲得を目指します。

補助自我や観客の役割も重要で、グループ全体で支え合いながら心理的な成長を促します。

ジェイコブ・レヴィ・モレノ

ジェイコブ・レヴィ・モレノ(Jacob Levy Moreno、1889年5月18日 – 1974年5月14日)は、ルーマニア・ブカレスト出身の精神科医、理論家、教育者であり、サイコドラマ(心理劇)とソシオメトリーの創始者として知られています。

彼の家系はユダヤ系スペイン人(セファルディム)で、祖先はイスタンブールからブルガリア、そしてルーマニアへと移り住みました。

モレノはウィーン大学で医学と数学を学び、1917年に医学博士号を取得しました。

医学の学びの中でフロイトの精神分析に触れましたが、当初は拒絶的な立場をとりながらも、やがて集団を用いた新たな心理療法の可能性に注目するようになりました。

彼は即興劇の技法を用いて自己表現や対人関係の理解を促進する「サイコドラマ」を1921年にウィーンで実践し始め、その後1925年にアメリカに移住してニューヨーク市で子どもを中心に集団療法を行い続けました。

モレノはグループセラピーや集団精神療法の先駆者の一人で、即興的な役割演技やロールプレイングを心理療法に取り入れたことで、その後の心理療法や人間関係理論に大きな影響を与えました。

彼の妻ザーカ・モレノも彼の仕事を引き継いでサイコドラマの実践を続けました。

彼の理論と実践は、自発性や創造性、対人コミュニケーションの促進を重視し、サイコドラマは演劇的要素と心理療法が融合した独自のアプローチとして発展しました。

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