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【読書感想】キラキラ共和国

この記事について

この記事は、小川糸さんによる「ツバキ文具店」の続編である「キラキラ共和国」を読んだ感想を書きます。

この作品は、「ツバキ文具店」同様、オーディオブックのオーディブルで聴きました。

ネタバレ要素もありますので、ネタバレを好まない方は読み進めないようにしてください。

キラキラ共和国のあらすじ

主人公の雨宮鳩子(ポッポちゃん)が、ミツローさんと結婚し、彼の娘キューピーちゃん(陽菜ちゃん)の母親となったことでの心境の変化を綴ったお話です。

よくある2番目の妻、継母の物語

前作は、代筆がとても印象的で、話のメインであったとも言えれると思います。

代筆を頼む人、一人一人の背景があり、どうやって鳩子が手紙を書くのかを興味深く見守っていましたが、今作は、代筆の話というより、鳩子がミツローの妻として、キューピーちゃんの母親としての振る舞い、考え、などが中心となり、代筆については、味付け程度の脇役的な位置付けでした。

これはこれで、良かったのですが、代筆という、普段馴染みのない世界の話を聞けたことで、前作を面白いと思ったので、少し物足りない感じです。

前妻を亡くした夫やその娘との間の微妙な距離感を少しずつ詰めていくというのが今作のメインストーリーなのですが、正直、その3人の関係や、距離感の縮め方に真新しさはなく、どこかで聞いたような話だと思いました。

これを聴いていた時は、「めぞん一刻」を思い出し、また読み返したいなと思ってしまいました。

そのせいか、淡々と話が進み、いつの間にか終わっているというような感じで、もう少し、3人の関係や、距離の縮め方に工夫が欲しかったなと思ってしまいました。

祖母のあり得ない振る舞い

先代との回想で、母の日に鳩子が先代にカーネーションを贈るシーンがあります。

先代は、そんなものいらない。いらないから花屋へ返してこい。と言い、鳩子が先代のために買ったカーネーションを返品させるというシーンなのですが、ここに凄い違和感がありました。

設定では、先代は鳩子のことを深く愛しているといるのに、返品させた理由が、鳩子にどう接したら良いかわからなった。嬉しかったと同時に恥ずかしくもあり、恥ずかしさを隠すために、冷たい態度を取ったと文通相手に打ち明けます。

確か、その時、鳩子は小学生頃かと思いますが、流石にその対応はないだろう。とこのシーンを聴いて、すごく冷めてしまいました。

何とも、幼稚で、浅はかな行為なんだろうと。

それまでの先代のイメージは、不器用だけど、芯がとおっている、というイメージでしたが、照れ隠しのために、愛する孫の心に深く傷をつけるなんて、あり得ないなと思ってしまいました。

しかも、あろうことに、それを文通相手に打ち明ける。その行為もチグハグで、自分の中ではあまり納得できる行為ではなかったなと感じます。

レディー・ババは?

この作品で、鳩子の母親である、レディー・ババが登場します。

前作では一才、母親の話は出てこなかったのですが、今作では、毒親の雰囲気を醸し出した母親が鳩子の前に現れます。

ここから、母親と一悶着あるだろうというフラグがビンビン立っていたのですが、鳩子の前に現れるのは、この1回だけ。

読み終わった後、レディー・ババ出てくる必要あった?

って思ってしまいました。

もしかしたら、次の作品への布石かな?

ミツローの気持ちは?

あと、ミツローが前妻の日記を捨てようとして、それが鳩子に見つかり、鳩子が激怒するシーンがあるのですが、このシーンにも違和感を感じてしまいました。

人間らしいと言えば、人間らしいのですが・・・。

ミツローの前妻への思いは、ミツローのものだと思います。

それを、鳩子が大事にするように、ミツローも大事にしろ!というように凄むのですが、そんなこと、鳩子に言われずとも、大事にしているはずです。

ミツローの気持ちを聴いて、本当は捨てたくなかったのだけれども、鳩子のためを思って無理やり捨てているという状況なら理解できるのですが、ミツローは、自分の区切りとして捨てようとしていました。

自分はそれを尊重するべきだと思います。

そこまでの決断は、ミツローなりに悩んで悩んで、悩みまくったのだと思います。

でも、そのミツローの悩みを考えもせず、鳩子が勝手に前妻が可哀想だという思いのみで、ミツローを責め立てることに、イラッと来てしまいました。

また、鳩子は、前妻を「大好き」と表現するシーンがあります。

そこも、何とも違和感がありました。

前妻を愛していたミツローを愛することで、前妻を愛する。というのならば、すっきりするのですが、事故で亡くなった前妻を好きになれるものなのだろうか?と、考えてしまいす。

この辺りは、「めぞん一刻」と対比してしまったのかなと思います。

めぞん一刻の、五代が「(惣一郎さんを)ひっくるめて響子さんをもらいます」と言ったシーンがとても印象的で、すごく好きなシーンです。

ここに引っ張られているんでしょうかね。

まとめ

「ツバキ文具店」が自分的に、文房具へのこだわりや、代書屋という、知らない世界を見せてくれたので、すごく興味深い作品だったのですが、今回は、子持ちのミツローの再婚相手の苦悩という、少しありきたりな内容であったので、個人的な感想では、消化不良だったという印象です。

世界観なども前作ほど、ゆったりとした感じはなく、独特の世界観が薄れてしまったなと感じました。

辛口な感想になってしまいましたが、それだけ前作の印象が強かったのかなと思います。

3作目もオーディブルで出たら聴いてみます。