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【感想】スピノザの診療所

この記事について

スピノザ診療所をオーディブルで聞き終えたのでその感想を書きます。

オーディブル(1.2倍速)で聴いて、4日程度で聴き終わりました。

往復2時間程度の通勤時間に聴いているのですが、続きが聴きたくなって、通勤時間が楽しみになってしまう作品でした。

著者プロフィール
夏川草介(なつかわ・そうすけ)
一九七八年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。⻑野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第十回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。

手術の描写とかが細かくて、専門用語も多く、どうしてこんな細いことを知っているのだろうと思っていたのですが、医学部卒で、医療従事者だったんですね。

そして、小説家という、すごい肩書き。

「神様のカルテ」も読んでみたくなりますね。

スピノザの診療所のあらすじ

『スピノザの診察室』は、京都の地域病院を舞台にした物語です。

主人公の雄町哲郎は、かつて大学病院で数々の難手術を成功させた優秀な内科医でしたが、妹の死をきっかけに甥の龍之介と暮らすために地域医療に転向することになり、「生きる」ことに向き合っていく作品です。

「生きる」をテーマにした哲学的な作品

患者の意向に沿わない「生」への疑問。

何が最善だったのか。

それは、大学病院では考えもしなかった問い。

患者ではなく、病気に向き合っていた大学病院時代。

でも、今は患者と向き合い、その人にとっての最善を考えるようになる。

長く生きることそのものは、純粋に良いことなのか。

スピノザというスパイス

主人公の哲郎は、優秀な医者でありながら、哲学にも精通していて、たくさんの哲学書を読んでいるという背景があります。

その中の1人にスピノザがいます。

スピノザは、エチカの中で、「物事単体では、善いことも悪いこともない」としています。

その辺り、哲郎の問いと繋がる部分なのではないでしょうか。

そして、スピノザについて、「初めてのスピノザ」の著者、國分功一郎さんが、この著書の中で、善悪を決めるのは、組み合わせだと表現しています。

その人にとって最善の「死」

死に対して悪い印象を持ちながら、死んでいく「死」は、悪い死であるということ。

逆もまた然り。

そのようなスピノザ哲学を持っている哲郎は、死を待つだけの人に自分の死を解釈させるようと努めていたのだと感じます。

一人一人に内包する死に、自らが向き合えるよう。

「死」そのものは、それだけで悪ではないと。

哲郎のかっこよさ

この作品を読んでいて、思うのは哲郎のかっこよさ。

皆が認める凄腕があるにも関わらず、それを驕らない。むしろ、謙遜すらする。

その余裕が人々を魅了するのか。

そして、人生に対する深い洞察。

おそらく、哲郎が死ぬ間際まで、自分の持つ問いに向き合うのだろうなと思う。

その哲学的姿勢にさらに惹かれる。

自分も哲郎のように行きたいなと思った。

ロールモデルの1人にしよう。

まとめ

哲学的で、考えさせられる部分が多い作品だと思います。

自分の持っている人生観や死生観などをアップグレードするために読むのも善いかと思います。

できれば、スピノザの入門書を事前に読んでいると、さらに深みが増すと思います。

入門書は、國分功一郎さんの「はじめてのスピノザ」が、初心者にもわかりやすく簡潔にスピノザについてまとめられていると思うのでおすすめです。